こんにちは。血液内科スタッフKです。
今回は少し古い（といっても先月ですが）、Lancet Haematologyに掲載されていた高齢中枢神経系原発悪性リンパ腫（PCNSL）に対する第Ⅱ相試験の結果をお伝えしています。うっかり読み抜けていて、抄読会で読んでいただいたのを大いに参考にしました！
Schorb E et al, Lancet Haematol 2024, doi: 10.1016/S2352-3026(23)00371-X
【背景】
高齢者の中枢神経系原発悪性リンパ腫（PCNSL）に対して現在実施出来る治療では、無増悪生存期間は最大16カ月である。我々は、高齢PCNSL患者に対して高用量化学療法と自家造血幹細胞移植（HSCT）からなる強力な治療を評価することを目的とした。
【方法】
MARTA試験は、前向き単群第Ⅱ相試験で、ドイツの15ヶ所の研究病院で実施された。65歳以上の新規診断未治療PCNSL患者のうち、ECOG PSが0～2で、高用量化学療法と自家HSCTが可能なほどフィットであった場合に試験に組み入れられた。
寛解導入療法は、21日が1サイクルの高用量経静脈的メソトレキセート 3.5g/m2（day 1）、経静脈的シタラビン 2g/m2を1日2回（day 2とday 3）、経静脈的リツキシマブ 375mg/m2（day 0とday 4）を2サイクル行い、その後に経静脈的リツキシマブ 375mg/m2（day -8）、経静脈的ブスルファン 3.2mg/kg（day -7とday -6）、経静脈的チオテパ 5mg/kg（day -5とday -4）からなる高用量化学療法に併用して自家HSCTを行った。
主要評価項目は、適格基準を満たして治療を開始した全ての患者における12カ月後の無増悪生存率であった。
【結果】
2017年11月28日から2020年9月16日の間に、54人の患者が寛解導入療法を開始し、51人がFull analysis setに加えられた。年齢中央値は71歳（四分位範囲 68-75）；27（53%）が女性で24人（47%）が男性だった。フォローアップ期間中央値 23.0カ月（四分位範囲 16.8-37.4）時点で、51人中23人（45%）に原疾患進行、再発もしくは死亡が認められた。12カ月の無増悪生存率は58.8%だった（80% CI 48.9-68.2；95% CI 44.1-70.9）。
寛解導入療法中の、最も頻度の高いグレード 3-5の毒性は、血小板減少と白血球減少だった（それぞれ54人中52人［96%］）。高用量化学療法と自家HSCT中での最も頻度の高いグレード 3-5の毒性は、白血球減少だった（37人中37人［100%］）。治療関連死亡は54人中3人（6%）で認められ、全て感染合併症によるものだった。
【解釈】
主要有効性閾値にはメットしなかったが、短期間の寛解導入後および高用量化学療法併用自家HSCTは、一部の高齢PCNSL患者に有効であり、比較試験のベンチマークになりえる。
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ドイツのグループからの報告で、予後不良で標準治療がまだ定まっていないPCNSLを対象とした第Ⅱ相試験でした。試験に参加した患者さんの半数以上が70代で、強力化学療法と自家HSCTを行うという、フィットな患者群とは言ってもなかなかチャレンジングな治療戦略に感じました。
とは言え、治療を完遂出来る患者群に限定すると、既報と比較しても遜色ないかそれ以上に期待出来る有効性を示しています。一方で合併症はやはり厳しく、感染合併症で6%も死亡する自家移植と聞くと正直あまりやりたくない･･･事前の症例選択が重要ですね。現在はBTK阻害剤や（適応はともかくとして）CAR-T細胞療法などの新規治療もありますので、更なる治療戦略の改善が望まれます。
選択バイアスに注意が必要ですが、治療も短期間で終了しますし、考慮しても良い治療レジメンだと思いました！
おまけ
エリンギと玉ねぎの豆腐グラタンです。肉類の入っていないヘルシーグラタンでしたが、想像以上に食べ応えがあって美味しかったです！