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こんにちは。スタッフTです。今回ご紹介するのはこちらの論文です。
 

CAR T cells and time-limited ibrutinib as treatment for relapsed/refractory mantle cell lymphoma: the phase 2 TARMAC study
Minson A et al, Blood 2024, doi: 10.1182/blood.2023021306

CAR-T細胞は再発難治マントル細胞リンパ腫(MCL)に対して高い奏功率が示されていましたが、毒性や再発の多さが問題になっていました。


一方、研究/臨床結果でBTK阻害薬であるイブルチニブはCAR-T療法と良い相乗効果をもたらすのではと示唆されていました(T cellのexpansionを促進するかも・毒性を減らすかも)。今回筆者らはCar-Tと期間限定のイブルチニブ使用の組み合わせを20人の患者で施行しました(第Ⅱ相TARMAC試験)。

【方法】
イブルチニブはアフェレーシスの最低7日前からCAR-T細胞作成の間を通し、CAR-T療法後最低6ヶ月まで使用した。プライマリエンドポイントはCAR-T細胞投与後4ヶ月後のCR率、セカンドエンドポイントは安全性と、TP53変異の有無に基づいたサブグループ解析とした。

【患者背景】
患者の前治療の中央値は2レジメンだった。50%の患者でBTK阻害薬の暴露があった。

【結果】

プライマリエンドポイントである4ヶ月後のCRは、80%の患者で得られた。70%で末梢血・骨髄のFCMによるMRD陰性、40%で分子学的なMRD陰性を達成した。フォローアップ中央値は13ヶ月で、推定12ヶ月PFSは75%、推定12ヶ月後OSは100%だった。


セカンドエンドポイントである安全性については、75%でサイトカイン放出症候群が起きた。20%(3人)がgrade 3だった。効能は、BTK阻害薬の過去の暴露もTP53変異も関係がなかった。深い奏功に関係したのはCar-T細胞がしっかりとexpansionしていることと、もともとのT-cellが疲弊していないことだった。

 

【結論】
CAR-T細胞療法とBTK阻害薬の併用は今後に期待が持てるため、さらなる臨床試験を行うメリットがあるだろう。

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マントル細胞リンパ腫は、すっきり治癒することが難しい病気です。BTK阻害薬の登場でコントロールできる症例も出てきましたが、それでも治癒とは言い難いのが現状です。今回のCAR-T細胞療法+BTK阻害薬は治療後1年の成績は少なくとも良いようなので、効果が長期に表れてくれるようなものだとありがたいなと思います。第Ⅲ相試験の結果を待ちたいところです。

おまけ

 

 

博多ポートタワーです。登ったことはありませんが、見かけるといつもなんとなく写真を撮ってしまいます。