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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はNew England Journal of Medicineからで、真性赤血球増加症に対する新規治療薬のご紹介になります。

 

Rusfertide, a Hepcidin Mimetic, for Control of Erythrocytosis in Polycythemia Vera

Kremyanskaya M et al, N Engl J Med 2024, doi: 10.1056/NEJMoa2308809

 

【背景】

真性赤血球増加症は慢性的な骨髄増殖性腫瘍で、赤血球増加症が特徴である。腫瘍な鉄制御ホルモンであるヘプシジンのペプチド模倣薬であるrusfertideは、赤血球造血における鉄利用を制限する。瀉血依存の真性赤血球増加症患者におけるrusfertideの安全性と有効性は不明である。

 

【方法】

国際第Ⅱ相REVIVE試験のpart 1において、28週間でのrusfertideの用量決定評価を目的として患者を登録した。Part 2は二重盲検ランダム化試験での休薬期間となり、患者を1:1の割合で12週間のrusfertideもしくはプラセボ投与に割り付けた。主要有効性エンドポイントは、ヘマトクリットコントロール、瀉血不要、part 2での試験レジメン完遂により定義される奏効であった。患者報告によるアウトカムは、修正Myeloproliferative Neoplasm Symptom Assessment Form(MPN-SAF)患者日記(0から10のスコアにより、高スコアが症状がより重いことを示す)によって評価された。

 

【結果】

70人の患者が試験のpart 1に登録され、part 2において59人がrusfertide群(30人)もしくはプラセボ群(29人)に割り付けられた。1年あたりの推定平均(±SD)瀉血回数は、rusfertide初回投与前28週間で8.7±2.9、part 1の間が0.6±1.0であった(推定差異 1年あたり8.1回)。最大ヘマトクリットの平均値は、part 1の間が44.5±2.2%であったのに対し、rusfertide初回投与前28週間では50.0±5.8%であった。Part 2の期間で、rusfertide群で60%の患者で奏効がみられたのに対し、プラセボ群では17%であった(P = 0.002)。ベースラインからpart 1終了の期間で、rusfertideによる治療は、ベースラインにおいて中等度から高度の症状を有した患者において、個々のMPN-SAF症状スコアの減少と相関していた。Part 1およびpart 2の間で、患者の13%にグレード 3の有害事象が認められ、グレード 4もしくは5のイベントは認められなかった。グレード 1もしくは2の注射部位反応が一般的だった。

 

【結論】

真性赤血球増加症患者において、rusfertide治療は28週間の用量決定期間においてヘマトクリット45%未満に相関した。12週間のランダム化休薬期間における奏効患者割合は、プラセボ群に比してrusfertide群で大きかった。

 

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私がヘプシジンと出会ったのは忘れもしない血液専門医試験の試験会場で、ここだけの話、当時無知だった私は問題の選択肢にあったヘプシジンを「何これ?捨て問?」と思いながらスルーしたのでした(汗)。

 

ヘプシジンは肝臓で合成される物質で、小腸からの鉄吸収やマクロファージからの鉄再利用を抑制することにより、体内の鉄利用率を低下させます。Rusfertideはヘプシジンと類似したペプチドで、基礎研究の結果からヘプシジンと同様の作用機序により真性赤血球増加症患者さんの赤血球造血を抑制することが期待されました。今回のREVIVE試験では、rusfertideにより瀉血回数の減少、良好なヘマトクリットのコントロールなどが達成され、選択肢の少ないこの疾患においては非常に有望な治療になりうることが実証されました。従来の治療でなかなか奏効が得られない患者さんには朗報だと思います!

 

おまけ

 

 

特に意味はありませんが、最近食べたサラダです!