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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はやや久しぶりのJCOからで、ギルテリチニブにアザシチジン・ベネトクラックスを併用した新規急性骨髄性白血病治療の第Ⅰ/Ⅱ相試験結果をご紹介いたします。

 

Azacitidine, Venetoclax, and Gilteritinib in Newly Diagnosed and Relapsed or Refractory FLT3-Mutated AML

Short NJ et al, J Clin Oncol 2024, doi: 10.1200/JCO.23.01911

 

【目的】

アザシチジンとベネトクラックスの併用療法は、強力化学療法に不適当な新規診断急性骨髄性白血病(AML)患者の標準治療である。しかし、FLT3変異はこのレジメンに対する抵抗性を獲得する上で頻度の高い機序である。経口FLT3阻害剤であるギルテリチニブをアザシチジンとベネトクラックス併用療法に上乗せすることで、FLT3変異AML患者のアウトカムを改善するかもしれない。

 

【方法】

今回の第Ⅰ/Ⅱ相試験ではアザシチジン・ベネトクラックス・ギルテリチニブを以下の2つのコホートで評価した:(1)強力化学療法が不適格な新規診断のFLT3変異AML、もしくは(2)再発難治性のFLT3変異AML。主要評価項目はギルテリチニブの最大耐量(第Ⅰ相)と完全寛解(CR)/不完全な血液学的回復を伴うCR(CRi)率である(第Ⅱ相)。

 

【結果】

52人の患者が試験に参加した(初回治療[n = 30];再発難治[n = 22])。第Ⅱ相試験でのギルテリチニブ推奨用量は、アザシチジンとベネトクラックスの併用において1日1回80mgであった。初回治療コホートでは、年齢中央値71歳で73%の患者がFLT3-ITD変異を有した。CR/CRi率は96%(CR 90%;CRi 6%)であった。評価可能患者の65%が、4サイクル以内にFLT3-ITD微小残存病変<5×10-5を達成した。フォローアップ期間中央値19.3カ月時点で、無再発生存期間(RFS)中央値と全生存期間(OS)中央値は未到達で、18カ月RFS率およびOS率はそれぞれ71%と72%であった。再発難治コホートでは、CR/CRi率は27%だった。さらに9人(41%)が形態学的芽球消失を達成した。最も頻度の高いグレード3以上の非血液有害事象は感染(62%)と発熱性好中球減少症(38%)で、再発難治コホートでより頻度が高かった。

 

【結論】

新規診断FLT3変異AMLにおいて、アザシチジン・ベネトクラックス・ギルテリチニブ併用療法は高いCR/CRi率、深いFLT3分子学的奏効および期待出来る生存をもたらした。骨髄抑制は用量減量戦略により管理可能だった。


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つい一昔前まで強力化学療法が出来ない高齢者の急性骨髄性白血病は治療がない(なかったわけではないのだけれど、化学療法をしないのと比較してメリットが大きくない)などと言っていましたが、昨今の治療の進歩は目覚ましいものがあります。

 

今回の報告はFLT3変異陽性の急性骨髄性白血病に対して、既存のアザシチジン・ベネトクラックス併用療法に、これまた既存のギルテリチニブを組み合わせるという、アイデア自体は誰でも考えつくものですが、真打ち登場という感じで大変期待値の高い臨床試験となります。予想通り、新規診断コホートでは高い有効性を示しました。一方再発難治コホートは、厳しい患者背景を考えると仕方ないのかなという結果ですが、上乗せ効果は明らかにあるでしょうから、早く使えるようになってほしいです!

 

おまけ

 

 

何回食べても飽きない山芋グラタンのバリエーションで、具材はエノキダケ、玉ねぎ、鶏ささみになります!