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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBloodからです。日本の環境省主導で行われている「子どもの健康と環境に関する全国調査」のデータを解析した、職業的曝露と小児白血病・脳腫瘍との関連を解析した報告です。

 

Pediatric leukemia and maternal occupational exposure to anticancer drugs: the Japan Environment and Children’s Study

Yamamoto S et al, Blood 2024, doi: 10.1182/blood.2023021008

 

【要旨】

医薬品と電離放射線への職業的曝露は小児がんの危険因子である可能性が示唆されていた。しかし、このような曝露と小児悪性新生物との関連は総合的に研究されていなかった。今回のコホート研究は、両親の危険医薬品もしくは電離放射線への職業的曝露と子供に発生する小児がんとの関連性を検証することを目的とした。

 

104,062人の胎児が組み入れられた日本の大規模な出生コホートからのデータが解析された。主要評価項目は、地域の医師が出生後3年間に診断した白血病と脳腫瘍の発症である。曝露因子は妊娠中に母親によって、もしくは妊娠3カ月前に父親によって取り扱われた抗がん剤を含む医薬品、電離放射線、麻酔とされた。

 

抗がん剤に曝露された母親において白血病の発症が多く、脳腫瘍ではこの違いは見られなかった。多変量回帰分析によると、母親の抗がん剤曝露が幼児(1歳以上)の白血病発症リスク上昇に関連していた(修正相対危険度 7.99[95% CI 1.98-32.3])。白血病と診断された子供の両親が持つ診断書から得られた詳細な情報により、曝露群では1歳未満の小児白血病はおらず、急性リンパ芽球性白血病と診断されていたことが分かった。

 

今回の結果から、母親の抗がん剤に対する職業的曝露が、1歳以上の幼児における急性リンパ芽球性白血病の潜在的リスクの可能性があることが示唆される。母親の抗がん剤曝露を防ぐため、そして小児悪性新生物のリスクを低下させるために効果的な予防法法が必要かもしれない。

 

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職業的に抗がん剤の曝露を受けている女性(アンケート調査で自己申告なのですが、妊娠期間に半日以上が月1日以上と定義)から生まれた子供の白血病リスクは、曝露のない集団と比較すると約8倍高いという、同じく職業として抗がん剤治療にあたっている者の一人としては、ショッキングな結果となりました。ちなみにこの差は白血病だけで認められ、小児悪性腫瘍で頻度の高い脳腫瘍、また抗がん剤以外の曝露(電離放射線・麻酔)や男性の職業的曝露では認められませんでした。今回以外のコホートでも再現性があるのか、追試が待たれます。

 

日本では2015年に「がん薬物療法における曝露対策合同ガイドライン」が策定され、(それ以前もされていたとは思いますが)その後さらに広い領域で厳密に曝露対策がなされています。ですので、本研究の観察期間(2011~2014年)よりも現在はこの傾向が改善していることを願うばかりです。普段も意識してはいるのですが、正しい知識をつけて、より曝露に対する安全意識を高めていきたいと思います。

 

おまけ

 

 

今が旬の柚子と昆布と鰹節を2週間熟成させて、自家製のポン酢を作りました!こぼさないかヒヤヒヤしながら消毒した空き瓶に移したのですが、ちょっと既製品みたいじゃありませんか?蒸し野菜や豆腐にちょいがけしていますが、フレッシュな柚子の香りが素晴らしくて、当分楽しめそうです!