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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はBritish Journal of Haematologyからで、KarMMa-1試験の適格基準を満たさなかった多発性骨髄腫症例に対し、リアルワールドでidecabtagene vicleucelを投与された患者さんの治療成績を臨床試験に組み入れられた患者さんの成績と比較した後方視的解析になります。

 

Efficacy and safety of idecabtagene vicleucel in patients with relapsed–refractory multiple myeloma not meeting the KarMMa-1 trial eligibility criteria: A real-world multicentre study

Dima D et al, Br J Haematol 2024, doi: 10.1111/bjh.19302

 

【要旨】

KarMMa-1試験の結果に基づき、再発難治性多発性骨髄腫に対してIde-celは承認を取得した。しかし、著しい合併症、急速に進行する多発性骨髄腫、BCMAを標的とした前治療(BCMA-DT)のある患者は除外された。今回の後方視的試験はKarMMa-1試験の組み入れ基準を満たさず、標準治療(SOC)としてide-celで治療された患者のリアルワールドでの成績を評価した。

 

米国の3ヶ所の治療センターにおいて、KarMMa-1の基準を満たしていない合計69人の患者がide-celの注入を受けた。移植非適応と判断された主な理由はベースラインでのグレード 3~4の血球減少(39%)、BCMA-DT前治療(26%)、腎機能障害(19%)、ECOG PS 2以上(14.5%)であった。サイトカイン放出症候群はSOC患者 vs. KarMMa-1患者で81% vs. 84%、免疫細胞関連神経毒性症候群は22% vs. 18%であった。早期の感染(注入後8週間以内)と重篤な感染症の発生率は、それぞれ42% vs. 30%、30% vs. 22%であった。グレード 3~4の血球減少は以下のとおり:好中球減少症(87% vs. 89%)、貧血(51% vs. 60%)、血小板減少症(65% vs. 52%)。全奏効率はSOCコホートの方が高く(93% vs. 73%)、完全寛解以上を達成した割合についても同様であった(48% vs. 33%)。しかし、無増悪生存率と全生存率は2群間で同等であった。

 

今回の結果から、ide-celを評価する将来的な臨床試験において組み入れ基準を拡大することが支持される。

 

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ide-celは既に日本でも承認されているCAR-T細胞療法ですが、今回はide-celの有効性と安全性を検証したKarMMa-1試験であると適格基準を満たさなかったであろう患者さんのデータを集めてきて、臨床試験のデータと比較したという論文になります。臨床試験に適格でないということで、リアルワールドの併存症を抱えた患者さんも含まれたコホートでした。もちろん臨床試験に参加できる条件の良い群と比較すると合併症は全体にやや増えてはいるのですが、それほど大差があるという程でもなく、有効性については同等といえる結果となりました。このため、筆者らは臨床試験を含めてide-celの適応を広げていくべきであると結論しています。リアルワールドで治療を受ける患者さんにとっては勇気づけられるデータではないかと思いました!

 

おまけ

 

 

冬が旬の大根とブロッコリーを大量に消費するので、大根とブロッコリーの皮のきんぴらがこの時期頻繁に食卓に上ります。捨ててしまうかもしれないところですが、個人的に大好きな冬の裏メニューです!