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こんにちは。スタッフTです。今回ご紹介する論文はこちらです。
 

Chronic active Epstein-Barr virus disease originates from infected hematopoietic stem cells
JWang J et al, Blood 2024, doi: 10.1182/blood.2023021074

慢性活動性EBウィルス感染症(CAEBV)はEBウィルス(EBV)の持続感染による致死的な疾患です。EBVが造血におけるさまざまな系統の細胞に感染していることが観察されていますが、実はCAEBVがどのように起こるのかはよくわかっていません。この論文は5人のCAEBV患者さんと1人のEBV関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV-HLH)の患者さん、2人のコントロールの骨髄および末梢血細胞を使用し、EBV感染細胞を同定してその特徴を捉えたという論文です。
 

方法としては、定量PCR、PrimeFlow(フローサイトメトリーでRNAとタンパクを同時に検出する手法)、シングルセルRNA解析が行われました。定量PCRでは、EBVがT細胞、B細胞、NK細胞のどれにも感染し、骨髄にも末梢血にも感染していることが示されました。PrimeFlowでは、EBVがリンパ系だけでなく骨髄系の細胞にも感染し、また末梢血よりも骨髄の方がEBV陽性細胞の割合が多いことが示されました。
 

リンパ系のみならず、骨髄系細胞にもEBVが感染している→つまり共通の前駆細胞にもEBVが感染しているのでは?という考えから、前駆細胞のEBV感染を調べると、造血幹細胞へのEBV感染が確認されました。
 

シングルセルRNA解析においては、CAEBV群において特定の細胞における遺伝子発現がコントロール群と比べ異なること、また感染細胞とそうでない細胞の間でも異なることが検出されました。

同種造血幹細胞移植を受けた一人の患者さんは、移植後6ヶ月後の検体も解析されました。この患者さんの解析でも、EBVはすべての系統の造血細胞に感染しており、造血幹細胞にも感染していました。EBV感染造血幹細胞は末梢血への高い分化率を持ち、EBV感染は自然免疫にも獲得免疫にも影響を及ぼすことで炎症症状を引き起こしていました。それらのEBV感染細胞は造血幹細胞移植後すべて一掃されました。


この結果から、CAEBVは造血幹細胞がEBVに感染することで起こることが示唆され、このことは今後の治療戦略の開発に役立つだろうと筆者らは結論づけています。

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CAEBVではT細胞やNK細胞に感染していることが特徴的だったので、個人的に「CAEBVはT細胞やNK細胞がうっかりEBVに感染することで起こる疾患」と認識していました。しかしそうではなくて「EBVが造血幹細胞そのものに感染することでCAEBVを起こしているのだ」という示唆に、大変感銘を受けた論文でした。

CAEBVは本当に難しい疾患なので、今後も研究が進み、もっと治りやすくなることを期待します。

おまけ

 

 

天神で食べたお肉です。卵が乗ると妙にテンションが上がるのは私だけでしょうか。いやそんなはずはない。