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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はJCOのClinical Trial Updatesから取り上げます。非常に古い試験なのですが、低腫瘍量濾胞性リンパ腫を対象としたリツキシマブ投与戦略を比較する第Ⅲ相試験のRESORT Studyの長期フォローアップデータをご紹介します。

 

Long-Term Follow-Up of the RESORT Study (E4402): A Randomized Phase III Comparison of Two Different Rituximab Dosing Strategies for Low–Tumor Burden Follicular Lymphoma

Kahl BS et al, J Clin Oncol 2024, doi: 10.1200/JCO.23.01912

 

【要旨】

2003年に、Eastern Cooperative Oncology Groupは未治療低腫瘍量濾胞性リンパ腫患者に対する2つの異なるリツキシマブ投与戦略を比較する第Ⅲ相ランダム化臨床試験(E4402)を開始した。リツキシマブに反応性を有する患者(n = 299)がリツキシマブ再治療(RR)戦略もしくはリツキシマブ維持(MR)戦略のいずれかにランダム化割り付けされた。それぞれの投与戦略は治療失敗まで継続された。主要評価項目は治療失敗までの期間(TTF)だった。既報では、2つの治療戦略でTTFに有意差はなかった。

 

本論文では副次評価項目である初回殺細胞療法までの期間、奏効期間、全生存(OS)の長期データを報告する。7年時点で、MR患者の83%は初回の化学療法を受けておらず、対するRR患者は63%であった(ハザード比 2.37[95% CI 1.5-3.76])。7年時点でMR患者の71%は第一寛解期を維持しており、対するRR患者では37%だった。MR患者で第一寛解期間の改善がみられたにもかかわらず、10年間のOSには有意差がなかった(83% vs 84%)。長期間のデータにより、低腫瘍量濾胞性リンパ腫患者においてリツキシマブ維持療法の延長はOS改善に寄与しないことが確認された。

 

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低腫瘍量の濾胞性リンパ腫は現在のガイドラインではリツキシマブ単剤投与もしくは無治療経過観察が選択されます。このあたりは患者さんの状態や主治医・施設によっても変化しうるところで、リツキシマブを選択したとしてもどのような治療戦略をとるか?というのも状況によって異なってきます。リツキシマブ治療スケジュールに関しても様々な臨床試験が行われていますが、このRESORT studyはそのうちのメジャーなものの一つになります。

 

要点を述べると、408人の未治療濾胞性リンパ腫に対して4回のリツキシマブ投与を行い、その中で完全寛解もしくは部分寛解が得られた299人をリツキシマブ再治療(リンパ腫が再発した時に同様の治療を繰り返す)もしくはリツキシマブ維持療法(3カ月ごとにリツキシマブ維持投与を繰り返す)のいずれかにランダム化して比較するというデザインです。

 

既に2014~2015年に結果が報告されており、主要評価項目であるTTFに有意差はありませんでした。今回はさらに長期間のフォローアップデータにおいて、維持療法は確かに殺細胞薬開始を遅らせ、第一寛解期間を延長させるのですが、結局のところ全生存期間には差をもたらさず、やはり結論としては個々の症例に応じて・・・という従来の結果に影響を与えるものではありませんでした。

 

投与によりコストもかかりますし、通院負担や長期リツキシマブ投与による副作用の懸念なども考慮して、患者さんとの対話と総合的な判断が重要であると再認識しました。

 

おまけ

 

 

大根を塩で焼いただけのものなのですが、私にとっては何よりの冬のご馳走です!