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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回は米国血液学会の発表からで、NEJMに掲載された慢性リンパ性白血病の新規治療戦略をご紹介いたします。

 

Chronic Lymphocytic Leukemia Therapy Guided by Measurable Residual Disease

Munir T et al, N Engl J Med 2023, doi: 10.1056/NEJMoa2310063

 

【背景】

イブルチニブとベネトクラックスの併用療法は、免疫化学療法と比較して慢性リンパ性白血病(CLL)患者のアウトカムを改善させることが示されてきた。イブルチニブ・ベネトクラックス併用療法および微小残存病変(MRD)に基づいた治療期間の個別化がフルダラビン・シクロフォスファミド・リツキシマブ併用療法(FCR)より有効かどうかは不明である。

 

【方法】

今回の未治療CLL患者を対象とした第Ⅲ相多施設共同ランダム化対照非盲検試験において、我々はイブルチニブ・ベネトクラックス併用療法とイブルチニブ単剤治療をFCRと比較した。イブルチニブ・ベネトクラックス群では、2カ月のイブルチニブ投与の後にベネトクラックスが追加され最大6年間治療された。イブルチニブ・ベネトクラックス併用療法の期間は、末梢血と骨髄で評価されたMRDで定義され、MRD陰性達成に要した時間の2倍とした。主要評価項目はFCR群と比較したイブルチニブ・ベネトクラックス併用療法群の無増悪生存期間で、今回の論文で報告する。主要副次評価項目は全生存、奏効、MRD、安全性である。

 

【結果】

合計523人の患者がイブルチニブ・ベネトクラックス併用療法群もしくはFCR群にランダム化割り付けされた。フォローアップ期間中央値43.7カ月時点で、原疾患進行もしくは死亡はイブルチニブ・ベネトクラックス併用療法群で12人、FCR群で75人に認められた(ハザード比 0.13;95% CI 0.07-0.24;P<0.001)。3年時点でイブルチニブ・ベネトクラックス併用療法群は58.0%でMRD陰性を理由として治療を終了していた。同治療で5年経過後、イブルチニブ・ベネトクラックス併用療法では65.9%の患者が骨髄でMRD陰性、92.7%が末梢血でMRD陰性だった。感染症のリスクは両群間で同等だった。重篤な心臓関連有害事象はFCR群よりイブルチニブ・ベネトクラックス併用療法群で多かった(10.7% vs. 0.4%)。

 

【結論】

MRDに基づいたイブルチニブ・ベネトクラックス併用療法はFCRと比較して優れた無増悪生存を示し、全生存の結果もイブルチニブ・ベネトクラックス併用療法が良好だった。


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慢性リンパ性白血病に対するイブルチニブ・ベネトクラックス併用療法とFCRを比較した第Ⅲ相試験になります。治療薬自体は新規性は特にないのですが、今回の試験のポイントは微小残存病変が陰性になった患者で治療を終了していく戦略です。この報告によりますと、半分を超える患者さんが治療を(一時的にせよ)中断することができ、FCRと比較して無増悪生存、全生存に良好な成績を示し、特にハイリスクとされる患者群でその効果は顕著でした。一方イブルチニブに起因すると思われる心合併症には注意が必要です。

 

慢性リンパ性白血病は治癒困難なため、このような時期を区切った治療戦略は患者さんの負担にとっても社会全体の医療費にとっても重要な視点で、いわゆるコストパフォーマンスが評価されていると、治療する側としても安心できると思いました!素晴らしい結果だと思います。

 

おまけ

 

 

大阪で食したたこ焼きです!大阪では当たり前なのかもですが、手元でソースや青のりをかけて通常バージョンで食したり、付属の出汁をつけて明石焼き風にしたりと味変出来るシステムが良かったです。