こんにちは。血液内科スタッフKです。
10月最後の論文紹介はBloodからで、高齢フレイルDLBCL患者に対するレナリドミド・リツキシマブ併用療法の第Ⅱ相試験結果になります。
Gini G et al, Blood 2023, doi: 10.1182/blood.2022019173
【要旨】
高齢者のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)治療、特にアントラサイクリン含有レジメンの対象とならない患者群に対する治療は困難だがやりがいのある分野である。Fondazione Italiana Linfomi(FIL)は、70歳以上の未治療フレイルDLBCL患者を対象に、化学療法フリーの併用療法であるリツキシマブとレナリドミド(R2療法)の有効性と安全性を検証する2つのステージからなる単群試験であるFIL_Reli試験を開始した。
フレイル度は単純化された高齢者評価ツールを用いて事前に定義された。患者は経口投与レナリドミド 20mgをday 2からday 22および経静脈的投与リツキシマブ 375mg/m2をday 1からなる1サイクル28日の化学療法を最大6サイクル投与され、4サイクルと6サイクルの後に奏効が評価された。
サイクル6時点で部分寛解もしくは完全寛解(CR)の患者は、レナリドミド 10mg/日をday 1からday 21に28日ごとに、疾患進行もしくは許容できない毒性発現まで合計12サイクル投与された。主要評価項目はサイクル6後の全奏効率(ORR)であった。共主要評価項目はグレード 3もしくは4の非血液毒性であった。
ORRは50.8%で、CRは27.7%だった。フォローアップ期間中央値24カ月時点で、無増悪生存期間中央値は14カ月で2年間の奏効持続率は64%であった。CTCAEでグレード 3以上の非血液毒性が34人で認められた。
R2療法の有効性が多数例で観察され、高齢でフレイルなDLBCL患者に対する化学療法フリーアプローチの更なる検証の根拠となる結果である。
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高齢DLBCLの治療だと、最近Bloodに載ったこれなんかが参考になるかと思います。
日本だとR-miniCHOPが一番広くされているかと思います。その他にもいくつか臨床試験があるのですが、いずれにしても80歳代以上では色々な工夫をして治療強度を高めたとしても合併症で相殺されてしまい、長期生存率はどの試験を見ても大体50〜60%前後で大差はない、というのが現状です。それなら慣れ親しんだR-miniCHOPでいいじゃないかというところなのですが、R-miniCHOPすら出来ない高齢フレイル患者群でのエビデンスは皆無に近く(それぞれの施設に「秘伝のタレ」のようなレジメンがあるのではないか?と推察します)、今回はそのような患者群に対する貴重なエビデンスとなります。
濾胞性リンパ腫などで既に実績のあるR2療法による初回DLBCL治療の第Ⅱ相試験なのですが、残念ながら主要評価項目はメットせず、中身を見てみるとやはり疾患進行や毒性での早期脱落が多く、治療完遂率が低いところが問題点です。それでも、最後までたどり着く事が出来れば長期に疾患コントロール出来る患者群もあるようで、この結果が今後の臨床試験の一つのベンチマークになることでしょう。
おまけ
先日、専攻医S先生の院外研修からお帰りなさい会を開催したのですが、その時に食したおでんです。そろそろ家でも作りたいなぁと思いました!