こんにちは。血液内科スタッフKです。
今回は前回に引き続きLeukemiaからで、初発多発性骨髄腫における標準治療の位置を虎視眈々と狙っている?イサツキシマブ併用VRd療法の第Ⅰb相試験の結果をお伝えいたします。
EM Ocio et al, Leukemia 2023, doi: 10.1038/s41375-023-01936-7
【要旨】
自家造血幹細胞移植(ASCT)の適応とならない新規診断多発性骨髄腫(NDMM)患者は生存率が低く、新規薬剤を含んだ初期治療レジメンを受けることで利益があるかもしれない。今回の第Ⅰb相試験では、ASCT非適応もしくは直ちにASCTを受ける意思のないNDMM患者において、抗CD38モノクローナル抗体であるイサツキシマブにボルテゾミブ・レナリドミド・デキサメサゾンを組み合わせたレジメン(Isa-VRd)の予備的な有効性、安全性と薬物動態(PK)を評価した。
全体で73人の患者が1サイクル6週間の寛解導入Isa-VRd療法を4サイクル受け、引き続いて1サイクル4週のIsa-Rd維持療法を受けた。有効性評価群において(n=71)、全奏効率は98.6%であり、56.3%で完全寛解以上(sCR/CR)、71人中36人(50.7%)の患者が微小残存病変陰性に達した(感度 10-5)。グレード 3以上の治療関連有害事象(TEAEs)は79.5%(73人中58人)で起こったが、永続的な臨床試験薬中止に至るようなTEAEは14人(19.2%)であった。イサツキシマブのPKパラメーターは既報の範囲内であり、VRd療法はイサツキシマブのPKを変動させないと示唆された。
これらの結果から、第Ⅲ相試験であるIMROZ試験(Isa-VRd vs VRd)のような、NDMMに対する更なるイサツキシマブの臨床試験が支持される。
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イサツキシマブの先輩である、同じCD38を標的としたダラツムマブではASCT適応患者を対象としてDara-RVd療法を検証したGRIFFIN試験が発表されています。ブログ記事載せます。
今回の論文は治療コンセプトはよく似ているのですが、ASCT非適応患者を対象とした併用療法の第Ⅰb相試験となります(ダラツムマブとの住み分けを意識されているのでしょうか)。当然ながら高い有効性が示され、こちらも第Ⅲ相試験まで進めば標準治療を塗り替える可能性があります。続報を待ちたいと思います!
おまけ
以前、とある患者さんに「K先生はクリームシチューが好きそう」と言われたことがあるのですが(どういう意味?)、実は無類のクリームシチュー好きで、平均したら週2~3日くらい食べてる気がします。これは最近作って美味しかった、変わり種の山芋の豆乳シチューになります。鋭い指摘でドキっとしたという話です!