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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はNew England Journal of Medicineからで、塩基編集技術を用いた新規CAR-T細胞療法の論文をご紹介いたします。

 

Base-Edited CAR7 T Cells for Relapsed T-Cell Acute Lymphoblastic Leukemia

Chiesa R et al, N Engl J Med 2023, doi: 10.1056/NEJMoa2300709

 

【背景】

Clustered regularly interspaced short palindromic repeats(CRISPR)ガイド下でのシチジンの脱アミノ化により、DNAの切断を発生させずに一つの塩基を別のものへ(特にシトシンをチミンへ)高い精度で変換するのを仲介する。このため、転座やその他の染色体異常を誘導することなく、遺伝子の塩基配列を編集したり不活性化させることができる。小児T細胞性白血病患者に対してこの技術を使用することが研究されている。

 

【方法】

普遍的で容易に入手可能なキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を生成するために、我々は塩基編集技術を用いた。健康なボランティアドナーのT細胞を、レンチウィルスを用いてT細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)に発現している蛋白であるCD7に特異的なCARを発現するように形質導入した(CAR7)。さらにその後、リンパ球除去免疫血清療法の影響、CAR7 T細胞の相互破壊、GVHDをそれぞれ避けるために、塩基編集技術によりCD52、CD7受容体、αβT細胞受容体のβ鎖の3つをエンコードする遺伝子を不活化した。3人の小児再発性白血病におけるこれらの編集された細胞の安全性を検討した。

 

【結果】

最初の患者は13歳の女性で、同種造血幹細胞移植後に再発したT細胞性ALLで、塩基編集したCAR7(BE-CAR7)の単回投与後28日以内に分子学的寛解となった。その後に以前のドナーから強度減弱(骨髄非破壊的)前処置による同種造血幹細胞移植を受け、免疫再構築に成功し、白血病も寛解を維持している。同じバンクからのBE-CAR7細胞は、その他2人の患者でも潜在的な活性を示し、1人の患者で致死的な真菌感染合併症を認めたが、もう1人の患者では寛解期に同種造血幹細胞移植が行われた。重篤な有害事象としてサイトカイン放出症候群、多系統の血球減少、日和見感染が認められた。

 

【結論】

今回の第Ⅰ相試験の中間解析結果により、再発白血病患者に対する塩基編集T細胞の更なる研究が支持される。また、予測されていた免疫関連合併症の危険性が指摘された。


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CAR T細胞療法の登場のときも驚かされましたが、今回も「医学もついにここまで来たか」という感じがします。論文に付いている図が非常に分かりやすかったですが、塩基編集技術を用いて健康なボランティアドナーからCD7をターゲットとするCAR7 T細胞を作り出し、それを再発性のT細胞性白血病に投与したという臨床試験になります。前治療のアレムツズマブの影響を避けるためCD52、お互いを破壊しないようにCD7、GVHDがないようT細胞受容体を削除するという、もはやSFの世界のような細胞改編技術が用いられておりました。患者数はまだ少ないながら、驚異的な有効性が示されており、今後の発展が期待されます。

 

おまけ

 

 

梅漬けの続報で、赤紫蘇を買ってきました!今まで目に入っていなかったのですが、この時期スーパーに並んでいるものなのですね。この後に塩でもんでアク抜きをして、梅漬けに加えていきます。その後の写真も順次お伝えしていきます。