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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

少し間があいたと思ったら、3月になってしまいました。ずいぶん過ごしやすくなってきましたね。

 

今回はJCOから、骨髄線維症に対して、既存のルキソリチニブ治療に新規薬剤であるnavitoclaxを上乗せした第Ⅱ相試験の結果をお届け致します。

 

Addition of Navitoclax to Ongoing Ruxolitinib Therapy for Patients With Myelofibrosis With Progression or Suboptimal Response: Phase II Safety and Efficacy

Harrison CN et al, J Clin Oncol 2022, doi: 10.1200/JCO.21.02188

 

【目的】

BCL-XL経路を標的とする治療は、基礎研究モデルにおいてJAK阻害剤の耐性を克服する作用を示した。ルキソリチニブ単剤療法で疾患進行もしくは充分な反応が得られなかった骨髄線維症患者において、BCL-XL/BCL-2阻害剤であるnavitoclaxをルキソリチニブに追加する治療法の有効性および安全性を評価する第Ⅱ相試験を行った。

 

【方法】

安定したルキソリチニブ投与量(10mg 1日2回以上)にて原疾患進行もしくは充分な反応が得られなかった中間/高リスクの骨髄線維症患者34人が、navitoclax 50mg 1日1回を回使用量として、(血小板数 7.5万/μL以上であれば)1週間ごと増量し、最大量 300mg 1日1回の投与を受けた。主要評価項目は24週における、ベースラインと比較して35%以上の脾臓容積減少(SVR35)である。副次評価項目には、ベースラインと比較して50%以上のtotal symptom scoreの減少(TSS50)、ヘモグロビンの改善、骨髄線維化(BMF)グレードの変化、安全性が含まれた。

 

【方法】

高リスク分子変異は58%の患者で認められ、52%では3つ以上の変異を有した。24週において、SVR35は26.5%の患者で達成され、試験期間全体では41%で達成された。SVR35持続期間の推定中央値は13.8ヶ月であった。24週でのTSS50は30%(20人中6人)で達成され、1~2グレードのBMF改善は評価可能な患者のうち33%(33人中11人)で達成された。貧血の改善は64%(11人中7人)で達成され、ベースラインで輸血依存であった1人も含まれた。フォローアップ期間の中央値21.6ヶ月時点で全生存期間の中央値は未達であった。最も頻度の高い有害事象は可逆性のある血小板減少症で、臨床的に著明な出血は伴わなかった(88%)。

 

【結論】

治療抵抗性もしくは進行性の骨髄線維症患者において、ルキソリチニブにnavitoclaxの上乗せすることにより持続するSVR35、TSS改善、貧血とBMFへの反応が得られた。疾患改善についての潜在力の定量化の評価が進行中である。

 

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骨髄線維症は難治性の疾患で、血球減少に伴う感染症や輸血依存など合併症の管理も大変ですし、なかなか良い治療がないというのも問題です。JAK阻害剤ルキソリチニブの登場によりずいぶん治療もやりやすくなりましたが、navitoclaxという新薬が登場してきました。もともと治療選択肢が少ない疾患なので新薬登場だけでも充分ありがたいですが、ルキソリチニブでも難治性の患者さんにおいても一定割合で効果を認めたとのことで、日本でも早く使えるようになってほしいですね。

 

おまけ

 

 

まさかの3連続梅。ネタ切れとも言う。そろそろ桜の季節ですね!