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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

秋らしい過ごしやすい季節になってきましたね。勉学の秋ということで、どんどん論文を読んでいきたいところですが・・・どうでしょうか?今回は発表されたばかりのCASSIOPEIA試験の中間解析をお伝えします。自家移植後のダラツムマブ維持と経過観察を比較した第Ⅲ相試験になります。

 

Maintenance with daratumumab or observation following treatment with bortezomib, thalidomide, and dexamethasone with or without daratumumab and autologous stem-cell transplant in patients with newly diagnosed multiple myeloma (CASSIOPEIA): an open-label, randomised, phase 3 trial

Moreau P et al, Lancet Oncol 2021, doi: 10.1016/S1470-2045(21)00428-9

 

【背景】

CASSIOPEIA試験のパート1では、新規診断の自家造血幹細胞移植(ASCT)適応患者において、寛解導入および地固め療法としてのダラツムマブ、ボルテゾミブ、サリドマイド、デキサメタゾン併用療法(D-VTd)が、ボルテゾミブ、サリドマイド、デキサメタゾン併用療法(VTd)と比較して、より深い治療奏効と無増悪生存期間の改善を示した。パート2では、ダラツムマブ維持療法と経過観察のみの比較を行った。

 

【方法】

CASSIOPEIA試験は、2パートからなる非盲検ランダム化第Ⅲ相試験であり、欧州の大学病院と地域治療センター111施設において、ECOG PS 0-2で、18歳から65歳の新規診断多発性骨髄腫を対象に行われた。パート1では患者はD-VTdもしくはVTdの寛解導入および地固め療法に1:1にランダム化割り付けされた。部分寛解以上の奏効を示した試験参加患者は、8週間ごとのダラツムマブ 16mg/kg静脈投与(標準的なダラツムマブ長期投与用量と比較し頻度を少なくした)もしくは経過観察のみに1:1にランダム化割り付けされ、2年間までフォローされた。パート1での寛解導入療法と治療奏効が層別化因子であった。パート2の主要評価項目は、2回目のランダム化からの無増悪生存期間である。事前に計画された今回の無増悪生存期間の中間解析は、281のイベント後に実施され、無増悪生存期間の主要な解析と見なされる。解析に関係したスポンサー職員と被指名人は、独立したデータ・モニタリング委員会が、事前に計画された中間解析がパート2の無増悪生存期間の主要な解析と見なすことを推奨するまで、治療群についての情報が隠された。その他においては治療群割り当ての情報は隠されなかった。寛解導入療法・地固め療法と維持療法間の相互作用は、相互作用項を含めた層別モデルコックス回帰により両側検定され、0.05を有意水準とした。有効性解析は、2回目のランダム化を受けた全患者よりなる、維持療法特異的な治療企図集団で実施された。安全性は、ダラツムマブ群で少なくとも1回の投与を受けた患者と、経過観察にランダム化割り付けされた全患者で解析された。

 

【結果】

2016年5月30日から2018年6月18日の間に886人の患者(D-VTd群543人中458人[84%]、VTd群542人中428人[79%])が、ダラツムマブ維持療法群(n=442)と経過観察群(n=444)にランダム化割り付けされた。2回目のランダム化からのフォローアップ期間の中央値35.4ヶ月(四分位範囲 30.2-39.9)の時点において、無増悪生存期間はダラツムマブ群で未到達(95% CI 評価不能[NE]-NE)、経過観察群で46.7ヶ月(40.0-NE)であった(ハザード比 0.53、95% CI 0.42-0.68、p<0.0001)。事前に計画された無増悪生存期間の解析結果によると、維持療法と寛解導入療法・地固め療法間の有意な相互作用が示された(p<0.0001)。最も頻度の高いグレード3もしくは4の有害事象はリンパ球減少(ダラツムマブ群440人中16人[4%] vs 経過観察群444人中8人[2%])、高血圧(13[3%] vs 7[2%])、好中球減少症(9[2%] vs 10[2%])であった。重篤な有害事象は、ダラツムマブ群で100人(23%)、経過観察群で84人(19%)に起こった。ダラツムマブ群で、死亡につながった有害事象が2件見られ(敗血症性ショックとNK細胞リンパ芽球性リンパ腫)、両者ともに治療と関連していた。

 

【解釈】

8週ごと2年間のダラツムマブ維持療法は、経過観察と比較して原疾患の進行や死亡を有意に低下させた。長期間のフォローアップや現在進行中の他の臨床試験により、ダラツムマブを含んだASCT後の適切な維持療法戦略がより解明されるであろう。

 

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自家移植後の維持療法には現在も色々な選択肢がありますが、ダラツムマブによる維持療法の第Ⅲ相試験が出てきました。高リスク染色体の有無などで、どの維持療法を選択するかは症例ごとに考慮すると思うのですが、本試験のサブグループ解析ではダラツムマブ維持療法は高リスク・標準リスクいずれの症例でも無増悪生存期間に有利に働くようでした。多発性骨髄腫の治療は長期間に渡りますから、1人の患者さん全体の治療イメージを明確にすることが重要に思います。切り札の1つであるダラツムマブをどのタイミングで切るかは悩ましい問題ですが、維持療法という選択肢が広がったということで、今後の参考になる重要な試験結果と思います。

 

おまけ

 

 

深刻な写真なさすぎ問題のため、ストックより探し出した、下から見上げたGolden gate bridgeです。