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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

8月に入って急に暑くなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。マスクを付けるのがうっとうしい季節ですが、体調管理にはお気をつけ下さいね。

 

さて、今回はJCOから、再発難治性ホジキンリンパ腫に対する新しいCAR-T細胞療法の話題を取り上げます。

 

Anti-CD30 CAR-T Cell Therapy in Relapsed and Refractory Hodgkin Lymphoma

Ramos CA et al, J Clin Oncol 2020, doi: 10.1200/JCO.20.01342

 

【目的】

B細胞性悪性腫瘍に対するCAR-T細胞療法は、有効性が証明されている。同様のアプローチで、CD30に特異的なCAR-T細胞(CD30 CAR-T)がホジキンリンパ腫(HL)の治療にどのように用いることが出来るかを示す。

 

【方法】

再発難治性のHL患者に対する、2つの並行第Ⅰ/Ⅱ相試験を、それぞれ独立した2つの治療センターで行った。CD30 CAR-Tは、ベンダムスチン単剤、ベンダムスチンとフルダラビン、もしくはシクロフォスファミドとフルダラビンからなるリンパ球除去化学療法を行った後に投与された。主要評価項目は安全性である。

 

【結果】

41人の患者がCD30 CAR-Tの投与を受けた。治療を受けた患者は、ブレンツキシマブ・ベドチン、免疫チェックポイント阻害剤、自家もしくは同種造血幹細胞移植を含む、中央値7ライン(範囲 2-23)の前治療歴があった。最も頻度の高い毒性は、グレード 3以上の血液学的有害事象であった。サイトカイン放出症候群は10人で認められ、全てグレード 1であった。神経学的毒性は認められなかった。フルダラビンベースのリンパ球除去化学療法を受けた、活動性のあるリンパ腫を有した32症例における全奏効率は72%であり、19症例(59%)の完全寛解が含まれた。観察期間の中央値533日の時点で、評価可能症例における1年間の無増悪生存率と全生存率は、それぞれ36%(95% CI, 21%-51%)と94%(95% CI, 79%-99%)であった。体内でのCAR-T細胞の増幅は、投与した細胞の量に依存していた。

 

【結論】

フルダラビンベースのリンパ球除去化学療法の後にCD30 CAR-Tを投与された、濃厚な前治療歴のある再発難治性ホジキンリンパ腫において、高い持続的寛解率と優れた安全性が認められ、標準的なB細胞性悪性腫瘍を超えて、CAR-T細胞療法の適用拡大の可能性が強調される。

 

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CAR-T細胞療法は、現在のところ主にCD19を治療ターゲットとして、B細胞性悪性腫瘍において目覚ましい効果をあげていますが、今回はCD30を治療ターゲットとした、再発難治性ホジキンリンパ腫患者に対する臨床試験になります。CD30 CAR-Tだけの投与ではあまり治療効果がないのですが、フルダラビンベースのリンパ球除去化学療法を併用することにより高い有効性が認められるという、興味深い結果となりました(ベンダムスチン単剤での前処置では有効性が乏しかったようです)。毒性もB細胞をターゲットとしたCAR-T細胞療法よりは軽度で、今後多数例での臨床試験の結果が待たれます。

 

おまけ

 

 

深刻な写真ネタ切れのため、昨年度に撮影して画像フォルダに入れてあった、ベーコンエッグ?みたいな料理を載せておきます。