飯塚病院 漢方診療科のブログ -13ページ目

飯塚病院 漢方診療科のブログ

漢方診療科へようこそ♪

明けましておめでとうございます

2013年もよろしくお願いいたします


新年第一回目ですが、嘔吐下痢症の続きです。



前回までは陽証の下痢についてでした、今回は陰証の下痢についてです。



陰証の下痢を見分けるポイントは、


①臭いがあまりない

②冷えがある

③水様性の下痢、あるいは、食べた物が消化されずにそのまま排出されるような下痢(清穀下痢)

④高熱は出ない

です。


陰証の下痢は、「冷え」があることが特徴です

なので、

「冷えると悪化する、温めると良くなる」

という下痢は、陰証の下痢の可能性が高いです。



このような陰証の下痢に使われる方剤には、

大建中湯(だいけんちゅうとう)

人参湯(にんじんとう)

真武湯(しんぶとう)

などがあります。

それぞれの特徴は次回ご説明します

今回は、陽証の下痢に対する代表的な3つの方剤について、

症状からの具体的な使い分けをご紹介します




①黄芩湯(おうごんとう)

構成生薬:黄芩、甘草、大棗、芍薬


黄芩湯は3つの陽証の方剤の中で、一番熱候が強いものに使います。

発熱があったり、排便時の肛門灼熱感が顕著です。

また、嘔吐、下痢に加えて、腹痛があることが多いです。




②五苓散(ごれいさん)

構成生薬:猪苓、茯苓、朮、沢瀉、桂皮


喉の渇きが強く、水分を取らせるとすぐに嘔吐する人に用います。

特に小児の嘔吐下痢に頻用されます。(0.3g/kg/day)




③半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)

構成生薬:半夏、黄芩、黄連、人参、乾姜、大棗、生姜


悪心嘔吐、下痢、腹鳴に用います。

腹鳴があるということで「お腹ゴロゴロ半夏瀉心湯」なんて覚えたりします。

温める作用のある乾姜も含まれており、

陽証の下痢に用いる方剤の中ではあまり陽証らしくない下痢で、

便臭は普通程度のことが多いです。




いかがでしょうか?

陽証の下痢と思われる症状に出会ったら、

まずはこの3剤から考えてみると良いと思います



次回は、陰証の下痢についてです

ノロウイルス感染などの、嘔吐下痢症が流行する季節になってきました



漢方は、もともと急性の感染症を得意としており、

風邪の初期に使うと抜群に早く治るのは有名ですが、

嘔吐下痢症を呈する急性胃腸炎なんかにも、効果てきめんなのです



嘔吐下痢症に対する漢方のコツは、

方剤を大きく二つの群に分けることです。


その二つの群とは、陽証の下痢に使う方剤と、陰証の下痢に使う方剤です。


では、陽証の下痢陰証の下痢とはそれぞれどういう特徴があるのでしょうか



陽証の下痢の特徴は、

①便臭が強い

②排便時の肛門灼熱感

③テネスムス(しぶり腹、裏急後重)

です。

また、下痢の際に腹痛があったり、高熱が出たりもします。


このような陽証の下痢に使われる方剤には、

黄芩湯(おうごんとう)

五苓散(ごれいさん)

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)


などがあります。



それぞれの方剤の特徴については、その②でご説明します




漢方診療科に9週間の研修に来ていたK先生、本日が最終日でした


プチ送別会のために、漢方薬を煎じて・・・
 
  
 ではなくて、これは紅茶です 



 oldひろみ先生とのツーショット 

 


  





今後も、ひと月に一度来てくださるそう

嬉しいですね 



 
漢方をやっている医者って,
やっぱりヒゲ生やした仙人みたいな人が多いの?
自分で薬草をゴリゴリすってるの?

こんな質問を受けることが時々ありますが,

いや,さすがに,それはないです


そんなわけで,漢方診療科をもっと身近に感じていただくために,
漢方診療科スタッフに不定期でインタビューをして行こうと思います

初回は,田原部長です

 
画:大田先生
 


―まず,漢方を志そうとしたきっかけを教えて下さい。

 まずは,これから高齢化社会だから,お年寄りを診ようと思ったんです。
 で,学生時代に部活の先輩から,バイトをしないかって言われて,行った先が和漢診療部で。
 当時コンピューターが普及していなかったから,腎不全のお年寄りの,採血のデータをプロットしていくわけ。すると,悪くなっていっているデータが,漢方薬を入れた瞬間から,グーッと良くなってたりする。もうあと数ヶ月で透析だって人が,7年間くらい透析しないで済む。
 よくわからないけど,何か漢方薬って効くんだなっていうふうにインプットされたんです。
 それからしばらくして、その時の先生から、4人目の子供が生まれて大変だから夏休みにベビーシッターのバイトに来てくれ、と。家事やったり子供と遊んだり、先生から漢方の話を聞いたりして過ごして。
 卒業する時に、進路の相談をその先生にして、お年寄りを診たいんならやっぱり漢方がいいんじゃないかって話になった。ちなみにその先生が、(前部長の)三潴先生。


―実際に漢方医になってみて、良かったと思う瞬間を教えて下さい。

 この患者さんにはこの処方が良いかなって、悩んで考えた処方で、患者さんが劇的に良くなることがある。それが嬉しい。


―では逆にツライと感じるときは?

 うーん、やっぱりアトピーとかでなかなか治らないのはツライよね。でも治らないアトピーは無いので。和洋折衷の治療をするときもあるし。漢方だけで良くなる人もいるし。ケースバイケースですね。


―先生の、好きな漢方薬を教えてください。

 五苓散(ごれいさん)、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)です。


―座右の銘はありますか?

 考えて解決することは一生懸命考えるけど、考えても変わらないことは考えない。


―趣味はありますか?

 読書、特に歴史ものが昔から好きでした。


―では、尊敬する漢方の偉人は?

 吉益東洞のような、新しい考えを引き込んだような人は尊敬に値すると思います。それまでの考えをぶっ壊した人なので、それが良いかどうかは別にして。ぶっ壊した人っていうのは、それなりに土台があるわけで。土台が何にもない人がむやみやたらにやったら混沌ですよ。自分の中にその処方の基本形がしっかりあって、そのうえで壊した時に新しいものが生まれるんじゃないかな。

 そういう意味で言うと、正当な漢方を、いつまでも突き詰めていく。困ったときに、他の物に走っているとダメなんだろうなと思います。他のものは得意な人にお任せするっていう立場はあっていいと思います。
 自分自身は漢方を推し進めていくっていうのが一つの使命。もう一つは、教わったものを、さらに自分の経験を上乗せして、後世に伝えて行くことかな。


―なるほど、どうも貴重なお時間をどうもありがとうございました。

 急に言われて真面目に考えてしまいました(笑)




以上、田原部長へのインタビューでした。
突然だったにも関わらず、快く、そして真剣に答えてくださいました

普段はギャクで人を笑わせることが大好きな部長ですが、内に秘めている情熱が伝わってくるお話でした
本格的に寒くなってきましたね

こんな日には体がポカポカと温まる、

「ショウガ」のお話です 

  
 

ショウガは漢方ではとってもなじみの深いものです。

日本漢方で使われるショウガは、

スーパーで普通に売っている「ヒネショウガ」と同じものです


漢方でのショウガは、

生姜(しょうきょう)乾姜(かんきょう)の2つの種類がありますが、

加工法が違うだけでどちらも同じヒネショウガです。


生姜は生のショウガを乾燥させただけのもの、

乾姜はショウガを蒸してから乾燥させたものです。

(ちなみに中国では、生姜は生のヒネショウガのことを指します)


ショウガには辛み成分のジンゲロールショウガオールが含まれ、

解熱・鎮痛・鎮咳・鎮吐作用などが認められていますが、

ショウガを蒸して乾姜にすると、ジンゲロールが減少してショウガオールが増加する、

という報告があります。

(生姜→乾姜になるとショウガオールが増えるなんて、名前的には逆な感じがしますね


生姜には、体を温め、発汗させる作用があり、

風邪の初期に用いる葛根湯(かっこんとう)や桂枝湯(けいしとう)にも含まれています。

これらの漢方薬をさらに効かせたいときに、

生のヒネショウガのしぼり汁を加えるという裏ワザがあります


また健胃作用があり、嘔吐や食欲不振に用います。

つわりの処方として有名な小半夏加茯苓湯(しょうはんげんかぶくりょうとう)にも

含まれています。



乾姜は、生姜よりもさらに体を温める作用が強く、

体がひどく冷えて衰弱している時に用いる

四逆湯(しぎゃくとう)という薬の中にも含まれています。


ちなみに、体を温める作用のある生薬は他に

附子(ぶし)というものが有名ですが、

部長曰く

「附子は野菜をレンジで急にチンと温めるようなもの、乾姜は鍋でぐつぐつ煮るようなもの。
レンジでいきなり温めたものより鍋でじっくり煮たもののほうがおいしいだろ?」

とのことです。
今はシリコンスチーマーとかあるのでレンジでも美味しいですが。。



ショウガほど、日常的に使われていて漢方でも頻用されているものはないんじゃないでしょうか。

これからの季節、体調管理にうまくショウガを使っていきたいですね
漢方診療科恒例の柱の装飾

ハロウィーンバージョンから・・・

クリスマスバージョンに変わりました

 

 

 

 
まだまだクリスマスまでには一か月以上ありますが、

今週から一気に「冬」らしい気温になってきました


急に気温が下がったせいか、風邪をひく人が増えている気がします


特に最近よく見るのが、

「喉の痛みから始まることが多く、あまり熱は出ず、倦怠感が強い」タイプの風邪。

これは漢方では少陰病という位置に属する風邪で、

体に外敵と戦う元気があまりない時にひきやすい風邪です。

どちらかというとお年寄りがひきやすい風邪です。


(抵抗力がある時は、風邪の初期はゾクゾク→高熱という、太陽病という状態になることが多いです。感染症は一般には太陽病→少陽病→陽明病→太陰病→少陰病→厥陰病と進んでいきます。いきなり少陰病に陥ることを直中の少陰といいます。)


少陰病の風邪は、脈を診ると沈んでいる(深く抑えた時に一番強く触れる)ことが多く、

「座るところがあったら座りたい、横になれるところがあったら横になりたい」ですかと聞くと
「はい」と答えます。

寒気がするというよりは冷えているという感じで、鼻水が出ることもあります。



このような風邪には、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)という薬が使われます。




私も、昔はゾクゾクしてカーッと熱が出て汗をかいてすっきり治る、

葛根湯が効くようなタイプの風邪(太陽病)ばっかりひいていたのですが、

最近ではしょっちゅう麻黄附子細辛湯のお世話になっています。。

弱っているのでしょうか。。

漢方科の皆さんからは、飯塚じゃネオンが足りないんでしょうなんて言われたりしますが


しかし飯塚病院の職員は、少陰病の風邪をひく人がとても多く、

どうやら疲れきっている人が多いようであります



風邪に対応する漢方薬はこの他にも、症状や体質によって、

様々な種類の様々な組み合わせがあります。


風邪予防には、うがい手洗い良い睡眠、

それでもひいてしまったら、ぜひ漢方診療科へ
先日、飯塚病院漢方診療科20周年記念が盛大に開催されました

その模様を簡単にですが写真でご紹介します


ホテルの会場には立派なお花がたくさん届きました
本当にありがとうございました。

  

 


 
  
  
 受付の女性陣
  


プログラムはこんな感じです。
 
  
  

講演会が始まります。
  
 

座長の田原部長



富山大学 和漢医薬学総合研究所 病態生化学分野 
所長 教授 済木育夫先生
 
  
  


福島県立医大 会津医療センター 準備室(東洋医学)
教授 三潴忠道先生
 
 
  
千葉中央メディカルセンター 和漢診療科 部長
東亜医学協会理事長
寺澤捷年先生
 
 
 

講演会場は満員で後ろに椅子を足しました。 
 
  



全員で記念撮影の後、祝賀会の始まりです。

麻生巌社長
  
 
 

日本東洋医学会 会長 石川友章先生
 
  
  


樽酒の登場です!
 
  
 
乾杯!
 
  
 
  

麻生泰会長
 
  
 
 

 



 元飯塚病院院長 富永先生
 

 
 
 
田原部長の緊張が伝わって来ます!
 
 
 


飯塚病院漢方診療科の益々の発展を祈念!

 
  
 

たくさんの方々にご来場頂き、
また、お祝いのお言葉やお花や電報など、
本当にありがとうございました。

20周年という記念すべき時に
飯塚病院漢方診療科にいることができて、
大変光栄に思います

10年に一度の大イベントが無事終了しましたが、
30周年、40周年と、
漢方診療科が発展を絶やさず続いていきますように


ひとまず、お疲れ様でした!  
 
 

 
 
 
 

11月になり,

新しい先生が,実習医としていらっしゃいました


 


立って優しくほほえんでいるT先生です

実習医とは言っても,医師歴●十年のベテラン先生。

最近は,だんな様と一緒にのんびり生活していたそうのですが,

漢方への情熱に火が付き,飯塚病院で実習されることになりました


T先生の横に座っているのは,10月から実習されているK先生。

元々は,血液内科をなさっていた先生です




このように,学生さんや研修医だけではなく,

医師としての経験を積まれてから,

実際の診療現場での,漢方薬の有用性に魅せられて,

勉強しに来る先生方もたくさんいらっしゃいます。



特に飯塚病院は,

生薬による漢方保険診療を,入院も外来もおこなっている珍しい病院であり,

漢方修行の虎の穴(?)なのだと実感

つくづく恵まれた環境にいるなあと感じます。



明日は飯塚病院漢方診療科20周年記念会が開催され,

漢方界の重鎮の先生方が全国から飯塚にいらっしゃいます


漢方診療科盛り上がって来てます。頑張らねば

10月23日(火)   和漢食料理教室が開催されました

和漢食については
2012/10/10  「マクロビ?食養生?いえ和漢食です!」
に書いています。



 


栄養科から、講師として3名来て下さいました

赤いエプロンが素敵です



 
これは、和漢食での味付けのベースとなる、
割り醤油を作っています。

昆布出汁:酒:醤油=1:1:1 です




 
なすのあんかけ作成中。


 
 人参とコーンの彩りがステキ



 完成品がこちら
 
<10月の和漢食メニュー>
写真左下から時計回りに,
・玄米ご飯
・アスパラのピーナツ和え
・もずくの三杯酢 (酢ではなくレモン汁使用)
・五色豆
・ナスのあんかけ



これで一食500kcalなんですが、
野菜をたくさん使っていて、食べごたえがあるので、
結構おなかがいっぱいになります


でも、満腹でも罪悪感がゼロっていうところが、ステキです

とってもおいしくいただきました


次回の和漢食料理教室は、2013年1月22日(火)10:00~を予定しています。
和漢食HP

大変申し訳ございませんが、人数の都合上、
受講は、飯塚病院漢方診療科に通院中の患者様とそのご家族に
限らせていただいております

申し込みは、漢方診療科外来までお願い致します


和漢食に挑戦するにあたって、
何が一番大変かというと、
定められたルールの中で献立を考えることだと思います

なので、春夏秋冬に分かれた献立の作り方が動画でわかる
和漢食DVDも、とてもおすすめですよ

飯塚病院の売店で売っていますが、
HPから買うこともできます





「得意料理は何ですか?」
「和漢食です
って答えられたら,
素敵なんじゃないかと,思っています