私は、先日、東武伊勢崎線の五反野駅に用事がありました。そしたら、ふと思い出しました。
そこには、大変、気になる食堂があったのです。残念ながら過去形です。そこは、「・・・屋」という食堂でした。80才を過ぎた老夫婦が営んでいました。
私は、チェーン店の日本全国どこでも同じ味が好きでないので、できるだけ、小さな食堂を探して食べます。五反野駅でも探しました。3年前、昼ご飯を食べようと、玄関のトビラが、木枠の曇りガラスの横引きである食堂にたまたま入りました。
昼の12時30分だというのに、客は私一人でした。店の中は、4人がけのパイプのテーブルと丸イスが6組あり、壁には、すすで薄茶色に変色した、短冊状の手書きのメニューが何枚も張られておりました。 いろいろ食べたくて、悩んだ末、焼き肉定食650円を頼みました。待つうちに、なじみ客らしい年配の男性が入ってきて、「ビール」と注文しました。すると、大瓶の瓶ビールと柿の種が出てきました。その方は、一息で飲み干しました。本当にうまそうでした。しばらくすると、焼き肉定食が運ばれてきました。キャベツの横に相当黒く焼かれた肉が乗っていました。予想通り大変味の濃い肉でした。食べ終え、勘定を払うとき、奥さんに聴きました。いつから店を開いているのですか?と 奥さん曰く「40年前から、一度、息子がガンでなくなった時、やめようかと思ったけれど、家族みんなで頑張ってきたお城が亡くなってしまっては、息子も寂しがるだろうから、続けてきた」と。
その後、五反野駅に用事がある度に、お昼ご飯はその食堂で食べました。2月末、ご飯を食べに行きました。玄関の曇りガラスに1枚の張り紙がありました。「長年お世話になりましたが、本日で40年間の店を閉めることになりました」と。事情を聞きますと、ご主人に「病気が見つかった」とのことでした。長年二人で培って、切り盛りしてきた店を閉める決断は、大変な辛い思いだったことでしょう。私は、二人の歴史に、心からうらやましく、頭がさがる思いでした。
これで、また味のある店が無くなってしまった。寂しい限りです。
駅前の、個人で頑張っている大衆食堂が栄えるような時代になって欲しいと願っています。