*長い夜1話はこちら から


病院の前を
通過という時に、
その光の集団は
一瞬速度を落とし、
激しくアクセル音を
鳴らし始めた。

「ブンブブンブンブブンブンブン!」

「オンオオン!」

何台ものバイクが
織り成す爆音の
アクセルミュージック。

俺と信男は遠くから
その光景を見ていた。

「信男、すげー…」

「すげーだろ」

「愚連隊が、すげー」

「…てめぇ(笑)」

「アカシもうるさくて目が覚めちゃうな」

「絶対起きるよ」

「でもあれじゃ入院してる人まで起きちゃうよ(笑)」

「だな(笑)」

俺達のそんな心配をよそに、
愚連隊はすぐに
前に向かってまた走り出した。

「達也ぁ、美咲さんはその辺の事わきまえてんよ」

「カッケーな」

「ああ。狛江愚連隊はカッケーんだよ」

バイクのテールランプが
アカシの魂を誘導しながら
夜の街に消えて行った。


「よし、達也、そろそろ行こっかぁ」

「わかった」

運転が信男に代わった。

こてっちゃんは
病院で夜を明かすとの事だった。

家に送ってもらう間、
信男に色んな話を聞いた。
狛江愚連隊の初代総長は
今、少年院に入っている事。
そして
その彼女の仙道美咲が
今総長代行をしている事。
今日見たアカシの喧嘩、
狛江愚連隊、
そして今知った事、
全てを頭の中で整理するのは
興奮状態の俺には無理だった。

俺は信男に聞いた。

「アカシは助かる?」

「バカヤロウ。
明日になれば元気になって
看護婦さんの尻でも
追いかけてるよ」

「だよな」

「信男、今日は疲れたよ」

「だな。俺も病院戻ったら待合室で寝るよ」

「何かあったら電話してな?」

「わーったよ」

俺の団地に着いた。
帰り際、信男が言った。

「アカシはよぉ、絶対大丈夫だからな」

「わかった」

俺は
また親父に殴られるんだろうなと思いながら玄関を開けた。

そこには親父が立っていた。

殴られる!
そう思ったが、
親父は俺の頭を
グシャグシャと撫で回しただけだった。

そして一言

「今日はもう風呂入って寝ろ」

意外だった。
俺は言われるがままに
風呂に入った。

傷口にお湯が染みて痛んだ。
その痛みが
今日の事を思い出させた。

倒れるように
布団に入ってはみたものの、
今日の事が
次から次へと頭に浮かんできた。

アカシの事、
喧嘩の事、
愚連隊の事。

浮かんできても
何か結論が出る訳でもなく、
同じ事が何度も頭の中で繰り返された。
色んな事がありすぎた。
時計を見たらもう日付が変わる時間だった。
最後に時計を見たのは
2時位だったと思う。

身体の疲れが勝ったのだろう。
俺は知らぬ間に眠っていた。
次回
へ続く