*長い夜1話はこちら から


赤髪のリーゼント…

後姿はまるで
アカシを見ているようだった。

アカシも特攻服を着たら
こんな感じなのかなと
想像できた。

けして体は大きくなかった。

というより、
アカシよりも
二回り程小さいように見えた。

総長の合図とともに、
突き刺さるような
排気音が静かになり、
集団も徐々に減速し始めた。

あと100メートルも進めば
病院というところで、
総長のバイクを
先頭にして完全に停止した。

そして停止とともに
全員がすぐに
エンジンを止めた。

こてっちゃんも
原付のエンジンを止めた。

運転していた
こてっちゃんは、
横顔が見える程度に
振り向いて俺に言った。

「大丈夫だから」

すると原付を降りて、
俺達に背を向けたままの
赤髪の総長の前に回り込んだ。

「押忍!」

すると総長が口を開いた。

「鉄矢ぁ…アカシはどんな状態なんだ?」

声はか細く、
小さくて聞き取るのがやっとだった。

本当にこの人が
この狛江愚連隊の
総長なのかと
疑問に思える程、
力強さを感じなかった。

「まだ意識が戻らないッス」

「…分かった」

そういうと総長は
バイクを降り、
振り向いた。

俺は自分の目を疑った。

「おめーら!よく聞け!
アカシはよー…
今暗闇の中でさまよってる…
俺達に出来る事はなんだ!?
アカシがよぉ、
迷わずに
こっちの世界に帰ってこれるようによぉ…
照らしてやんぞ!」

そこに立っていたのは
紛れもなく女だった。

「押忍!」

「んな声でアカシが起きっかぁ!?」

「押忍!!!」

20人程の男たちの
気迫のこもった声が
夜の街に響いた。

次回
長い夜(5)
へ続く