*長い夜1話はこちら から


「さぁ帰るか!!」

俺達の不安は消えていた。
アカシは大丈夫だ。
やり遂げた
爽快感がそうさせたのか。

何故だか分からないが、
そんな思いになった。


俺達は
原付に3人乗りをして
病院に向かった。

途中でこてっちゃんが
家に送るというので断った。

アカシの近くに居たかった。

「達也ぁ、俺もそうさせてやりてーけどよ、
お前の親父と約束したんだよ」

「なんて?」

「無事に連れ戻すってよ」

「かんけーねー」

「関係あんだろー。明日学校だろうが」

「いかねー」

「バカヤロウ。
アカシはそんな事望んでねーぞきっと」

「…」

「わかったな?」

そう言われては
俺は抵抗のしようがなかった。

「俺がアカシについてるからよぉ、大丈夫だよ」

「…わかった。でも帰る前に病院に寄って」

「ああ」


暫くして遠くで
バイクの排気音が
鳴り響くのが聞こえた。

そして時間差で
また別の方向から
排気音が聞こえた。

次から次へと
排気音の数が
増えていった。

「きたな…」

信男が言った。

その音は
徐々に徐々に大きくなり、
一つにまとまっていった。

そして
どんどんこっちに近づいてくる。

「達也ぁ!
お前小3で暴走族デビューだな!」

「え?何?」

排気音が近づいてきて
声が聞こえなくなっていた。

耳をつんざくような轟音がどんどん近づいてきた。
「うるせーー!」

そう叫んで後ろを振り向いた。

「!!!!!」


目がくらむほど
無数のライトが
俺達の後ろで照らされて
俺は目を細めた。

そして一瞬のうちに
俺達の原付は
その光の中に飲み込まれた。


一呼吸置く間もなく俺達は
唸りをあげて突き進む
バイクの群集の中に居た。


くらんだ目が
段々慣れてきた。

見渡すと、
白い特攻服を着た軍団だった。

前を走ってる
バイクの背中を見た。

「狛江愚連隊総長」

真っ赤な刺繍がしてあった。
そして
真っ赤なリーゼントをしていた。

アカシが入ってる族だ!

愚連隊は
俺達を飲み込んで
蛇行運転を始めた。

耳が痛くなる程の爆音だった。
俺達は
光の中を導かれるように進んだ。

俺はあっ気に取られて声が出なかった。

もう少しで
病院だという時に
総長が左手を高く上げた。

次回
長い夜(4)
へ続く