初めての方プロローグからどうぞ


「なんだよ空いてねーじゃん」
一人の男が言った。
「見ろよ」
別の男がそいつに言うと俺達に近づいてきた。
俺達はそいつらに囲まれて何やら居心地の悪い空気になっていた。

ヒデキが口を開いた。
「何?」
すると一番背の高い男が
「どけよ」
と言った。


周りの奴らはニヤニヤしている。
「ゆうすけ、あんまイジメるなよ」
誰かが言った。


どうやらこいつはゆうすけという名前らしい。


ヒデキは俺に帰ろうぜと目配せをしてきたが、俺はどうにも納得が出来ずにじっと座っていた。

不思議と怖さは無かった。


「どけよ。やっちまうぞ」
ヒデキが立ち上がった。
「お?やんのか?」
「ちげーよ、帰るよ」
ヒデキは俺の腕を掴んで立たせようとしたが俺は座り続けた。


ゆうすけが俺に
「なんだよ、ビビって立てねーか?」
と言った。
「うるせーよ」
初めて俺が口を開いた。


するとゆうすけが
「なんだてめー、やんのかよ?」
俺は妙に落ち着きながら切り返した。


「そっちは何年だよ」
「6年だよガキ」
「6年がよってたかってかっこわりーな」
「なんだてめえ!」
俺は胸ぐらをつかまれた。


「表出ろ」
ゆうすけは俺を突き放しながら言った。


俺達は囲まれるようにしながらゲーセンの後ろに連れ出された。
面倒な事になった事を謝ろうと思ってヒデキの顔を見た。

ヒデキの顔は引きつっていた。


すんごく、すんごく帰りたそうな顔だった。


「ドン」
鈍い音がした。
裏に着くなり、誰かがヒデキの背中を蹴飛ばした。
ヒデキは前のめりにつんのめった。
そして振り向きざまにゆうすけに殴られて倒れた。
「金出せよ。出したら帰してやってもいいぜ」
「キャハハハ」
周りを囲む誰かが言った。


嫌な笑い方だった。

ジャングルジムを思い出した。


第5話ワン公(3) へつづく