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侘寂伝文(わさびやブログ)

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飽和塩水に1週間ほど漬け 完全に中の毒素を抜いた梅を針打ちし 水に1日晒した後 酢水(水8:酢2)でボイルしました 酢水でボイルする事である程度の塩分を抜く事ができます 

 

再度酢水で梅をボイル 沸いたら20分程コトコト煮立たせて銅を用い呼び色します 

 

写真では判り辛いですが鍋をゆらしながら少量の胴を加え少しずつゆすっていくと 黄色だった梅が次第に少しずつですが青っぽく色変わりします 呼び色の度合いはその人の好みです 

 

10年前までは 写真の様にしっかりと呼び色をしていましたが 今回はここまで色を出さずに 出来るだけ自然の梅を目指していこうと控えめに呼び色しました 

 

こんな感じ 10年前の写真と比べると地味ですがこれを密煮する事で鮮やかさがでます

 

どんなに大切に扱っても 丁寧に針打ちしても 幾回と酢水で湯する事で元々川の弱い個体は破損してしまいます その分を計算に入れて用意する事をおすすめします 破損した梅は通常より早く色が出やすいですが それは度外視しましょう 

 

呼び色後 2日ほど水に晒し 銅成分と塩気をしっかりと抜きます 

 

生酢を結構な量で使用します 最初に飽和塩水で1週間塩漬けする事で 梅の持つ毒気を完全に抜きますが 同時に梅が持つ本来の酸味である"クエン酸"も殆ど抜け落ちてしまいます そのクエン酸を補充する意味での酢水ボイルですが 当然ながら元の酸っぱさは復元できません 

 

しっかりと水に晒した梅を最後密煮に仕上げていきますが この時点で梅自体の味は殆ど無味 前回説明した毒抜きをしっかりする事が一番のポイントです

1年ぶりに某所からW君が来阪 以前わさびやで数回蔵元会を開催した時からのご縁 出会って15年位でしょうか 職場を替え より自分が造りたい酒を醸せる様(立場)に?なったのかな 

 

関東/関西で清酒のトレンドは刻々と変わっていきますが 料理を提供する立場と清酒を醸す立場の意見を忌憚なく交わせる事ができる貴重な機会でした 

 

彼がわざわざ持ち込んでくれた非売品の搾りたて 口に含み瞬時に「アンチカプロン酸やな(笑)」と互いに笑顔 料理人同士でこの会話が出来れば…と何時も渇望するも まだ先の話なのでしょうか

 

巷でよく使われる「この酒に合う料理」はもっともぽい表現ですが それは欺瞞でしかありません 

「この料理に合う清酒」を的確に把握できる術がこれからの料理人に必要だと再認識しました

一晩置き 完全に冷めた飽和塩水に青梅を漬け 偶に混ぜながら1週間ほど"あく抜き"していきます

 

一般の方に分かり易く伝えるために"あく抜き"と表現していますが 正確には"毒抜き"です 梅の実だけでなく未熟な果実は種を守るために青酸配糖体である"アミグダリン"が多く含まれ 果実以外にも葉や樹皮に微量含まれています 

 

アミグダリン自体は無毒ですが 経口摂取する事で同じく梅の実に含まれる酵素エムルシンやヒトの腸内細菌が持つ酵素β-グルコシダーゼによって体内で分解され シアン化水素(青酸)が発生します シアン化水素を摂取する事で嘔吐.顔面紅潮.下痢.頭痛等の中毒症状が生じ 多量に摂取すれば意識混濁.昏睡などを生じ 最悪死に至る事もあります 

 

これが青梅の実を生食してはいけない最大の理由で 飽和塩水に漬ける事で 梅の実が持つアミグダリンを完全に除去します かの有名な戦国武将 故石田光成氏も処刑前に四条河原で喉潤しに出された青梅を潔く断ってましたよね

 

正しい表現はは"あく抜き"でなく"毒抜き"ですが そこは食の事情ゆえご了承下さい 

 

飽和塩水に漬けて数時間で梅の蒼色は飛んでしまいます 偶に混ぜながら 

 

1週間ほど塩水漬ける事で 梅の実は完全に色が褪せ皴が寄ってきます 冷蔵の必要はありません

それ位塩の持つ殺傷能力は高く虫ですら全く寄ってきません この為の飽和塩水です 

 

写真の様に割り箸の先に針を巻き 梅の実を優しく垂直に針打ちします 梅の実の天地(先っぽと尻)は特に優しく針打ちしないと これから数回酢水で塩抜きする衝撃に耐えれず 皮が破れてしまいます この針打ち器も梅から出る塩分で錆びてしまうので年越しで再利用する事はできません 

 

写真では判り辛いですが針打ちした梅の実 流水で暫く晒した後 酢水で数回湯がきます 

飽和塩水に1週間漬けた事で梅の実が小さくなった様に錯覚しますが 酢水で数回湯がく事で大きさはある程度戻ります

 

以前は南高梅の2Lを用いてましたが 近年は病毒への耐性や蜜煮時に煮崩れしにくい特性を持つ"古城梅(こじろうめ)"2Lを使用しています 一般の方が時間を掛けずに青梅を仕込む時は南高梅で充分だと思います

入梅(にゅうばい/つゆいり) 6月11日 

太陽の黄経が80度を通過する時 暦では梅雨入りと表現します 入梅は梅雨入りの漢語表現で 昔は芒種後/最初の壬の日を“梅雨入り” 小暑後/最初の壬の日を“梅雨明け”としていた時期もありました

 

実際の梅雨入り/梅雨明けはその年や地方により異なるものですが 昔から農家にとって梅雨入りの時期を知る事は 田植えの日取りを決めるのに重要だったため 目安としてこの雑節が設けられたそうです 当然私達和の料理人にとっても大切な日です 

 

梅雨といえばアジサイですが 料理とは相容れない皮肉な花でもあります 

 

そして梅の実が一番青々しく実る時期 今年も立派な青梅がやってきました

飽和塩水(ほうわえんすい)

水に塩が限界まで融解している(溶けている)状態の塩水を飽和塩水と呼んでいます 大昔 理科の授業で 常温の水100㎖に36㌘の塩が溶けた状態を"飽和状態"と学習した記憶は皆様も周知かと 

 

日本料理の世界でも1年を通じ様々な場所で飽和塩水が仕込み時に登場します 今回紹介する飽和塩水は"青梅密煮"の下処理 梅の毒素抜きに用います 

 

日本料理の青梅密煮に用いる梅は 全体が蒼い事が必須で 入荷時に僅かでも色褪せていると仕上げに鮮やかな蒼色を呼び戻す事はできません 1年の中でそれらの条件を満たす大きさの揃った梅を入荷できるのは雑節/入梅あたりの1週間 それ以外は梅干し/梅紫蘇漬けか梅酒用でしか使用できません

 

お蔭様で40年近く青梅密煮の仕込みに携わっていますが 今回も仕入れに助力して頂いた河岸の大将が「青梅密煮を知らない」と言う事で再学の意味も含めて手順を掲載していこうと思います