先日店頭にて 私達日本料理の世界で必要不可欠な“鰹出し”の話をさせて頂きました
近年 予め削られている“削り節”が主流で 本来の鰹節の持つ意味が希薄化されつつある現状ですが 春夏秋冬 様々な素材に応対するために工夫された“本枯節” 奥は限りなく深いものです
鰹本枯節(かつおほんがれぶし)
鰹(かつお)の身を伝統製法で加熱-カビ付け-天日干し-熟成させたもの 通常2年間以上熟成させたものが“本枯節”として河岸に出回ります 鹿児島県/枕崎産や高知県/土佐清水産のものが有名です
写真の様にカビをまぶしてあるものは“枯節” カビ付けされていないものは“荒節”で それぞれ料理の用途により使い分けますが 削る前に表面のカビは乾いた布巾でしっかり拭取ります
写真上)雄節-背中側の枯節 写真下)雌節-腹側の枯節
枯節には背中側の枯節“雄節”と腹側の枯節“雌節”の二つがあり 雄節は含まれる脂肪分が少ない事ですっきりと上品な鰹出しが抽出でき 雌節は雄節に比べ脂肪分が多い事でコクがある力強い鰹出しが抽出できます
箱鉋(鰹削り器)
本枯節を削る時に用いる道具で 私達料理人の間では七つ道具の一つに数えられる木箱製の鉋
削り鰹は鉋下部の木箱に収まり そのまま引き出して鍋に入れる要領です 鉋刃は直接刃には触れず箱を微力で叩きながら位置を調整します 水気厳禁なので休日前の就業後水洗いし乾燥保存します
削り方は包丁を研ぐ時の動きと逆で 鉋刃を向こう側に 本枯節の頭部を刃に当てて手前に引くように削るのが基本です 削り節の厚さで抽出される出し具合が変わってくるので上述した通り 鉋刃を箱叩きで調整しながら削る厚さを決めていきます
もうひとつ 鰹出しを取る時に欠かせない“昆布水” 勘違いされてている方が多いですが
・昆布出しは鰹出しをとる数時間前に水に差し昆布の旨味を抽出しておく
・火にかける前に昆布はとりだしておく(昆布をいれたまま加熱しない)←特に注意
昆布を入れた状態で加熱すると 余分なえぐみがでてしまい 鰹の風味と昆布の旨味を損ねてしまいます
鰹出しに必要な分だけ昆布水を予めとっておき 昆布水を火にかけてから本枯節を削るのがベスト
日本料理店の通常業務でいうと 鰹出しを摂るのは朝イチ仕事です なので
・営業終了後 次の日の朝に摂る鰹出しに必要な昆布水を量りとっておく(夏の暑い時は冷蔵庫に)
・次の日の朝 旨味の出具合を確認し昆布を抜取り-火にかけ必要分の鰹を削る-昆布水が沸いたらコトコトの火加減に調整し 削り節を入れコトコト数分-布地で漉し 鰹出しをとる
...という手順です 上記はわさびやの一例なのでご参考までに
本枯節は通常 密封性の高い袋に入れ冷蔵庫か冷凍庫で保管します
箱鉋は毎回拭き掃除した後 水気のない場所で わさびやでは袋で収納し冷凍庫で保管しています