おいしい=甘い? 危うい日本人の味覚バランス | 侘寂伝文(わさびやブログ)

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「薄い味では物足りない」 「甘い物は大好きだが酸味や苦味のある食べ物は苦手」 そんな若い人達が増えています 味覚の変化に対応し食品メーカーの商品作りも変わりつつあるようです 日本人の味覚バランスは崩れてきたのか一抹の不安が過ります 
   
舌から繊細さが失われつつある  
  
糖度0.3%の水溶液を甘いと感知出来るか-? 東京ガスは昨年 首都圏に住む計510人の若者に甘味の水溶液で甘味.苦味.酸味.塩味 の何れを感じるかというブラインドテストを行った 果物が糖度10~20%だから0.3%は甘味を検知できるかどうかというレベル 

正解率は高校生(15~16歳)が33%.大学生(18~24歳)が48%だった 因みに年輩の方(60~79歳)に同様のテストを行った所 正解率は77%だったという  
  
帝国ホテル総料理長の田中健一郎氏は市販の濃い味に慣らされた若者の舌から繊細さが失われつつあると危惧している 駆出しの料理人でさえ だしをしっかり取ったみそ汁とインスタント品の食べ比べをさせると70%がだしを取った方を「物足りない」と答えるそうだ 

異変はそればかりではない 例えば味覚の偏りだ 「コンビニエンスストアでスイーツを買うのが日課」という大学4年生のH氏は食事をスイーツで済ます事も カフェで飲むのは専らチョコレート風味の甘いコーヒーで苦いものは飲めない 
  
「若い女性に刺激的な味が苦手という声が目立ったから…」 回転ずしの全皿をさび抜きにしたのは大手チェーンくらコーポレーション 今ではわさびが必要な人は卓上の備えから取るのが普通の風景だ そして一時はブームにもなった“酢” ミツカンによれば実際は昔から使われてきた生酢の市場は縮小しているという 

穴埋めしているのは果汁や甘味料を加えた調味酢 「若い世代には料理で酢をどう使えばいいか分かっていない人が増えている」という 
  
ストレスも原因か…  
  
味覚には甘味.塩味.酸味.苦味.うま味の5つの要素がある 「これらを楽しむ能力に長けているのが日本人」だった筈なのに 少しずつ変化が起きているようだ 原因は色々指摘されている エネルギー源となる糖分の甘味は動物が本能的に求めるもの 加えて痛みや不安.ストレスを抑える効果がある ストレスの多い現代社会では誰もが癒やしを求めスイーツに手を伸ばしがちになるとの見方だ 
  
一方 酸っぱさや苦さを避ける人が増えた点については手厳しい声がある 酸味は食物の腐敗を 苦味は有毒性を判断する指標 本能的に避けがちな味覚なので味わえるようになるには学習が必要だ 

「子供の好きな物だけ与えていてはこれらの味覚は育たない 甘味にシフトしているのは食育の問題」と国立国際医療研究センター耳鼻咽喉科/頭頸部外科の田山二朗科長は断じている 
  
勿論 勉強と同じで無理強いは逆効果 「大人が食べるのを見ている内に子どもが興味を持って口にする そんな機会を作ればいい」と田山氏 家族一緒に食事をし大人が美味しそうに食べる それが一番だ 
  
「おいしい」=「甘い」?  
  
「若い世代は苦味や酸味を避けている訳ではない」との見方もある 味香り戦略研究所の菅慎太郎/味ブランド戦略部長が注目するのは市販の苦い無糖コーヒーや茶 酸味の強い果実系カクテルが売行きを伸ばしている事だ 「これらの味を食事時ではなく仕事の合間に取っている」 好むわけではないが気分転換などで体が欲すれば受け入れているとはいえそうだ 
  
寧ろ菅さんが問題にするのは味わいの表現力 「彼らが使うのは“うまい.チョーうまい.甘いといった言葉ばかり 味を表現する語彙を知らない」 帝国ホテルの田中総料理長も昨年 小学生対象の味覚教室でラーメンを「甘い」と表現する男子にたまげたという 「おいしい」イコール「甘い」という図式になってしまっているのだ 
  
「味覚表現力の低下には孤食の影響もあるのでは」と菅氏 一人で食べたら味を表現する必要がない 誰かと一緒に食べるから感想を伝え合いたくなる 田中さんも「どんな味か話しながら食べれば食に興味が湧き 食べる事が好きになり自分で作ってみようという気になる このプロセスを家庭で大事にして欲しい」と力説する 
  
自分で作れば味加減をあれこれ工夫するようになり味覚の経験の幅も広がる バランスの良い食生活は健康の源であり豊かな味覚は文化の証しでもある 皆でわいわい言いながら様々な味を楽しむ“味気ある”生活を改めて大切にしていきたいと思う