“食用油”の考察 | 侘寂伝文(わさびやブログ)

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本日 長いお付合いの○商事 Tさんがご来店

私の店で使用している油は○商事さんより購入させて貰っている

独立する前からの間柄だから もうかれこれ10年以上?(^▽^;)

今日は同業の営業されている方を接待した様で 和やかな中にも

その業界内の少しばかり 専門的な会話が多かった

全てのオーダーが落着き 手が空いた私も会話に混ぜて貰った


「油の卸問屋」と「料理人」の視点から相関させた“食用油”の話…


一言で“食用油”と言っても素材別に油の種類は数多とある

(“サラダ油”だけは商品名で実質その“油類”は存在しない)

私も自らの料理に見合った種類の食用油とその配合を

している訳だが ここ数年の業界全体の値上げは痛い範例だった

油は簡単にコストダウン出来ない 味に直結する所以だ


Tさんとご一緒されていたYさん(仮名)が私に聞いてきた

「料理屋さんで“油”自体を売りにしている趣向ってありますか?」

調理過程で食用油を使用する事は多々あるが“油自体”をですか…


今年 諸兄方も周知の“食べるラー油”などはその端的な例だ

油を直接売りにした商品が大ヒットした例は古今東西記憶に無い

美味い不味いは据え置いても その発想自体は確かに斬新だった

何でも 業界が女性を対象にアンケートした中で「気になる料理」の

1位が“カロリー,糖分の低い料理”そして2位が“食べるラー油

だったそうだ(笑) まあ 一般認識とはそういうものだろう


中華料理は他分野より 調理時幾ばか油分を多く使用する

それでも当の中華料理人ですら“食用油”自体を売りにしたメニューの

実現化はそう無いという。調理過程では私と同様の考えなのだが…

油を専門に取り扱う問屋業の方々の料理に対する認識,知識の更なる

向上が必要だ と両名共強く訴えていた ただ料理屋に油を提供する

だけでなくプラスα付加価値を加味する事の必要性だろう


一品料理 という範疇で“食用油”をメインにした料理は流石に難しいが

昔 とある缶詰を食べながら得たヒントで創作したある油料理の話をした

本業の和食の定義から少しばかり離れているが 食べて相手が

美味しい と思えば売り手の勝ちだ 拘ってばかりでは新たな発想は

生まれない “賄い”等はそれに好都合な考察の機会だ 


料理人も年数を重ね 技術や知識が熟練されていくと同時に その

拘束や固定観念が新しい風を阻害する不安要素を同時に抱えている

何時も新たな発想を生む“遊び心”を枯渇させてはならない

私も衣や素材の吟味のみならず油の劣化費用対数や酸度計算等は注視し

全体カロリー計算とコストに反映させお客様に提供して今日に至る


昔から和食=天婦羅 と云うイメージが和食の世界には色濃く有る

天婦羅も見た目シンプルだがバックグラウンドは実に奥が深い技法だ

ただ時代は多様化し 現時点で私の店も油を用い提供するメニューは

天婦羅のみでなく各替揚げやコロッケ,フライ物等数多とある

専門店レベルなら 素材の使用用途に併せ 何種類かの食用油を

使い分けるのが常套だが 流石に私自身の現状が難しい

以前 串かつもメニュー提供していたが油ロスが原因で頓挫した経緯がある


そして出数分析でもそれは反映されている 簡単に言うと 今お客様が

一番食べたいメニューは(年齢別だが)“油物分野”が多い事が判る

家庭の自炊で油物を作る機会が少ない事 手間が掛る事等の要因も

あるが先ず「美味しい お腹に溜まる」というのが専ら直結要因だろうか

油の主成分がモンゴロイド人種と相性が好いのはラーメンでも研究されている


だが栄養分野や身体健康面から見ると 夜半の油分摂食は薦められない

しかし現代社会は睡眠時間の短小変化 行動時間帯の深夜化など

人間本来の健康維持体質とは乖離した方向に生活習慣が進んでいる

料理人の本音で言えば「体に優しい 栄養のある 旬のもの」だろうが

商売観点で見れば勿論 客のニーズには応えていかなければならない

恥ずかしい話 今の自分は割り切って商売している状態だ


だが 今日の話で自分の固定観念がその“食用油”に対する視野を

狭めている事に気付く機会が有った 肯定的に取れば 油との付合い方

如何で新しいヒット商品に巡り会う事があるかもしれない

TさんとYさんに感謝しながら「次回のご来店の時まで 何か知恵を出して

おきますね」と答えておいた 果たして結実するだろうか


様々な分野の専門家と 絶えず情報交換し続けなくては進捗しないな…

“利き酒”は常時しているが“利き油,薫りの判別”は盲点だった などなど

と痛感した1日だった 両名様 ありがとうです