On nOthing  -256ページ目

短編小説 Wonderful One Wonder 3

「俺仕事ありますから」今日中にやらねばならない図面があった。

「おい、人の命に関わるんだぞ?」

「いやでも・・」こんな事やっていたら確実に間に合わない。

それほど優秀ではない自分がここまでやってこれたのは、勤勉だからだと思っている節がある。

真面目に行動し、無遅刻無欠席、お世辞を言い、常に笑顔を心がけコミュニケーションをとる。勧められた本を読み、CDを聞く。

花見の場所取りや、店の予約、何から何まで率先してやってきたのに、ここで犬の頼みでそれを崩壊しても良いのか?

そんな葛藤が頭の中で起きる。

「俺さぁ、昔拾われてきたんだよ」と犬は唐突に独白を始めた。

「でさぁ、餌をくれる良い人や可愛がってくれる人もいれば、俺をゴキブリでもみるみたいな目でみてくる人や、見向きもしない人間もいて、俺そんな時人間全部が嫌いになってたんだよな。

疎外感って言うか、孤立感っていうかさ。」分かるって思ってしまった。

「で、そんな時ここのご主人とまぁ邂逅したんだ」

「そうなんですか」多少時間が気になった。

「あぁ、俺は大体川の近くにいて、そこで水を飲んだり、そこは通学路でもあったから偶に学生さんから食べ物もらったりしてたんだ。

まぁ人は選んだけどな。やばそうな奴からは隠れてた。

そうしてたら芳花(よしか)って学生さんが俺を不憫に思ったのか、ここに連れてきてくれた。」

「じゃ芳花って人が中に?」

「いや、芳花はご主人の娘。

で俺が来てから一年は芳花いたんだけど、或る日に中で凄いもの音がして、すごい言い争ってる声が聞こえて、なんなんだ?と思ってたら、いきなりドアが開いて芳花どっか行っちゃたんだ」

喧嘩別れ?なにがあったんだ?と犬の話に聞き入っていた。

「まぁそれで何があったのかって思ってたらご主人俺のところにきて

“芳花出てっちゃったな。俺悪い事したかなぁ”って吐露してきてさぁ。

芳花に赤ちゃん出来たから、ついカッとなっておいだしちまったんだって。

でそれ以来毎日毎日俺のとこ来ては話してくんだよな。

俺はそのうち帰ってくるんじゃないかって思ってたんだけど、もう5年帰って来ない。

まぁそれは俺にとって良い事だったのかもしれないな。捨てられずにいるから」主人は男か。

「わかりました。やります。ちょっと待っててください」俺に良心があるなら、それが疼いた。


  


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