On nOthing  -254ページ目

短編小説 Wonderful One Wonder 4

事務所に戻って、マスクと軍手作業着に着替えた。

袋とか金槌も必要かな?と考えたが、何も死体を回収するんでもないし、ゾンビが出てくる訳でもないしな、と思い止めた。取りあえず作業着とマスクと軍手は用意した。取りあえず。

いつも何か準備をしておかないと不安でどうしようもないから。

「お前そんな格好でどこ行くんだよ?」と先輩は訝る様に見てくる。

「現場ですよ」と誤魔化そうとするが、嘘をつくのが苦手な自分が焦燥し、その怯懦が情けなくなった。

「今からか?何かあったのか?」

「いや、良く分からないんですが、至急来てくれって言われて・・。」

「なんだそれ?明日までに図面出来るのか?」穿つ様な目が怖い。

「はいなんとか大丈夫です。」じれったいと思う。

「そうかなら良いんだ。お前は信用できるからな」と言い、ディスプレイの方を見る。その言葉に胸が痛んだ。

外に出ると夕方になっていた。

深呼吸をし、歩く。

いつものこの道が何故か新鮮に見えた。

目が冴えているのか、いろんな物が鮮明に飛び込んでくる。

いつもならどうでも良いと思えるその風景は、何もかもが想像力を触発する。

あの冴えない床屋の看板も良く見ればシンメトリーを取り入れ、トリコロールカラーまであり、なんともどこかデュオニョソスな感もあり、アートと言った感じだし、あの廃頽しきったビルに巻きつく蔦も古城を思わせる。

そんな気分だ。

ただ何故か人の目線が気になった。作業着が珍しいのか?マスクはしてないし・・?








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