アライグマ対策セミナー(2019年5月23日)1-4(完) 古谷益郎先生 アライグマ専用罠 | IDSアライグマ・ハクビシン・スズメバチ駆除日記

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前回 https://ameblo.jp/ids-gaichu-h/entry-12520476710.html

 

 さて久しぶりに5月のセミナーに戻りますけれども、前回は罠への警戒心が強い、そもそも近づきもしないトラップシャイ個体の問題について扱いました。そこまではいかない普通のアライグマでも罠の外から手を突っ込んで餌だけとろうとしたり狡猾なのがいる上、仲間が捕まっているところを見られて罠を学習される恐れもあります。そして面倒なのが、猫の錯誤捕獲です。

 こうして猫が捕獲されたところにアライグマがやってくることでここは危険だと学ばれてしまいます。猫の場合は完全に野生下で自活しているとされる「ノネコ」ならば狩猟鳥獣扱いで狩ってもいい決まりになっていますが、そんな猫が今のご時世いるかは謎ですし、そもそもアライグマの駆除を目的としている罠に入るネコはほぼ間違いなく野良猫ですので、猫の対処をしている自治体、業務でもない限りは逃がすしかありません。そしてまた逃がした猫が餌が楽に手に入ることに味を占めてやってくることもあったり、こうして標的であるアライグマを間接的に助けることにもなるのでアライグマ駆除者にとっては迷惑極まりない存在です。

 もちろん、箱わなではタヌキ、アナグマ、極まれにイタチやテン、キツネなど通常の場合は駆除せず逃がすしかない在来種が捕まることも多々あるので(ハクビシンは自治体によって駆除か放獣かに分かれる)アライグマだけを狙って捕獲する上で邪魔は多いです。

 

 そこで古谷先生と新潟県の栄工業という罠を作っているメーカー等が協力して開発したのが、アライグマ専用罠というものです。

https://www.pref.saitama.lg.jp/b0909/araiguma-hokakuki.html

 県が発表してるように、去年の4月から販売が開始されています。

 

 

 アライグマの特徴で顕著なのが、とりあえず何にでも手を突っ込んで確かめる習性です。

 この写真をどうやって撮ったのかは知りませんが、こんな感じで壁によくついてる排水口にも手を突っ込んでます。以前扱ったようにアライグマの手はヒトとほとんど同じ5本指で器用に動き、その反面なのか大して嗅覚も視力もよくないと言われています。ですからとりあえず触って確かめる。それがアライグマの生き様。

 この専用罠はこの習性を利用したもので、

 箱の中にあるパイプのようなところにある餌をとろうとアライグマが手を突っ込むと・・・

 扉が閉まってケツを叩き、驚いたアライグマは反射的に逃げようとして(動物の習性)罠に自ら体を入れます。

 

 この罠の開発にはかなりの努力が必要だったそうでして、他の動物の手は入らず、アライグマだけが入れられるパイプの深さが最重要課題だったようです。各地の動物でテストが行われた結果・・・

 

タヌキ・・・ 手を使わず口で確かめる

アナグマ・・・ 手を突っ込むがまっすぐ入れるため浅い。

ネコ・・・ 手を突っ込むが、アナグマと同じくまっすぐなため浅い。

 そしてアライグマ。

 明らかに手の突っ込み方が違いますね。アライグマだけは手を穴に沿って深く、手を見ずに突っ込むことが先生たちの実験の結果判明しました。で、他の動物では届かずアライグマだけが届く長さのパイプがこの専用罠に組み込まれ、罠が完成した次第だそうです。

 

 ただし・・・こうしてアライグマの習性を研究して作られた専用罠ですが、問題点があるのも事実です。

 ・販売価格が通常の箱わなより高額。だいたい2~3倍はする。

 ・価格が高く認知も少ない為未だに出回っている台数は少ない。

 価格の問題があるのはありふれたことですが・・・

 ・これでアライグマが捕まった例が未だに少数。

 ・通常の箱わなの方が捕獲率が高い

 ・そもそもトラップシャイな連中には効果なし

 

 確率については比較実験をしなければはっきりとは言えませんが、やはりこの手の罠の原則として、向こうから興味を示して近づいてくれない事には捕獲の可能性はありませんのでトラップシャイへの対策としては問題が残ります。近頃埼玉県庁の方とお話しした際には、県の方から罠を購入して希望自治体に貸し出すようにするそうですが、まだまだ実地での効果や検証には時間が必要な段階なのも確かです。

 しかしアライグマ捕獲の手段は多い方がいいですし、古谷先生も仰っていたように、野良猫の多い住宅地などの地域でのアライグマだけを狙った捕獲など、今後都市部でアライグマが増加する事態に際しては有効かと思えます。こうして野生動物に対応する方法を開発するのも難しいですが、それの効果を実証するのも難しい。しかし今後の状況を考えると実施と実験を並行していかなければヒトはどんどん彼らにおいて行かれるだけでしょう。