アライグマ対策セミナー(2019年5月23日)2-1 加藤卓也先生 アライグマの社会的な生態 | IDSアライグマ・ハクビシン・スズメバチ駆除日記

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 台風やら豚コレラやらで自然界が忙しく、次回のセミナーについても告知を開始した所ですが、前回のセミナーの内容紹介に戻るとしましょう。

 古谷先生に続いて講演して頂いたのは日本獣医生命科学大学の加藤卓也先生です。この方は学生時代から古谷先生に学んでいたのですが、大学に属して以降はほとんど会うことはなく、メディアからの取材でも別々に取材されるばかりだったようです。それを今回はほぼ初めて野生動物関係の専門家として別視点から講演ができたというお話でした。

 古谷先生が主に対策の面からお話しいただいたのに対して、加藤先生には主にアライグマの生態の面と、ヨーロッパのアライグマの状況についてお話をして頂きました。

 これがおおまかな生態ですが、彼らは完全な夜行性というわけではなく「一般的に」夜に行動することが多いだけです。彼らが安全だと判断すれば昼間でも普通に行動します。これはイノシシなどでも同様で、彼らも人間などの気配を警戒して夜に行動することを選んでいるだけです。

 これは加藤先生がヨーロッパで撮影した餌付けされてるアライグマの様子ですが、こうして警戒心が薄れれば観光地のニホンザルみたいに日本でも平然とアライグマが昼間歩き回る可能性もあるでしょうね。

 

 性別によって行動範囲が大きく分かれるのがアライグマの特徴でして、ヘクタール単位ではおそらくあまり実感がわかないと思いますが(僕もです)、メスとオスとで2ケタは移動範囲が違うのはずいぶんと違いますよね?身近な例でいえば、ディズニーランドの(たぶんディズニーシーとかは含めないと思います)面積が51ヘクタールらしいので、メスでも結構な範囲を動いているようです。もちろんこの移動範囲もどのくらいの期間なのか、繁殖期や子育て期などで違うとは思いますが、だいたいこのくらいということなのでしょう。

 となれば、アライグマのオスがどれだけの範囲を日頃から移動している事かと、なんとなくわかるのではないでしょうかね。オスの約2200ヘクタールは22㎢―埼玉県の自治体で近いのは鳩山町、白岡市が25㎢ほどなので、普段から小さな町くらいの範囲は動き回っていると思えば分かりやすいかもしれません。もちろん実際は川を下る、丘陵地帯などを伝うなどしてより複雑で広い範囲を動いたり、たまたま行ったことのないところに迷い込んだりすることもあるでしょう。

 

 食性はここにあるように、植物だろうと動物だろうと何でも食べる雑食ですが、住む場所によって多く食べる物が分かれることはあるでしょう。農作物や放棄作物が狙えるところならそれが多く、自然環境内部では原産地のように虫や両生類、爬虫類などそのへんにいる生物を捕食しています。

 特にここで強調しておきたいのが、アライグマが物を洗っているように見えるおなじみの動きですが・・・

 

 この動きは彼らが本来生息している平地の湿地や川などで泥の中に潜んでいる両生類を探して食べるための動きだという説が強いようで、加藤先生もそう仰られていました。別に洗っているわけではなく、視力も嗅覚も大して発達していないのを触覚で補い、その手で食べ物を探しているだけみたいです。色々な物を素早い手の動きで扱おうとするのもそれだけ手先が発達しているのと、手先であらゆるものを確かめようとしているためなのでしょう。洗うのではなく、確かめる動き。これがアライグマの動きの正体だと思われます。

 

 で、もう一つ重要なのが、彼らの社会性についてです。彼らは前述の通り性別によって移動範囲が異なりますが、主にメスはメス同士、オスはオス同士で緩やかな社会性を持っているようです。それは狼やサルみたいな強いリーダーから力がある者順で構成される序列があるような厳格なものではなく、それぞれが日頃各自生活範囲をうろつきつつ、特にこれといった縄張りも持たずに餌場も通路も共有して暮らす、というものらしいです。ですから彼らはあまり争うことはなく、平和的に共存していると言われています(餌になる、違う生物には容赦しませんが)。

 

 それでも一応年齢が上、体格が大きい方が「上」と見なされる傾向はあるようで、年齢の高い個体の方が餌や、交尾をする相手は優先されるらしいです。ですから年齢が高いメスほど交尾と妊娠率が高いみたいです。かといって彼らがどうやって年齢を判断してるかも分かりませんし、主に体格で判断されそうな気がしますから若くても体格がいい個体は優遇されるのかもしれません。

 

 こうして結構な移動範囲を持ち、争いを避けて色々と共有したり譲り合う社会性を持つわけですから、彼らがこれだけ原産地から遠く離れた場所でも定着に成功したわけでもあるのでしょう。

 

次回

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