突然ですが「収集癖」っておありですか?
食べても食べても食べたりない人がいるように
コレクターも集めても集めても、また次が欲しくなる……
今日はこんな本を紹介します。
『或る美術コレクターの生活』(浦上敏朗、平凡社)
著者の浦上敏朗氏は、1926年(大正15年)山口県萩市生まれ。
県立萩中学校を経て、山口経済専門学校〈現、山口大学経済学部)卒。
この間、陸軍船舶兵暁部隊(特攻隊)に入隊するも生き残り、実業家に。
実業家として成功した浦上氏は、浮世絵や東洋陶磁などを精力的に収集します。
そんな中で、岸信介元総理、キャバレー王・福富太郎、画家・ジャスパー・ジョーンズなど華麗なる人々と交流する中で、世界的な美術コレクターになっていきます。
そして、最後には時価100億円以上の全コレクションを故郷・山口県に寄贈します。
本書ではそれぞれのコレクションの来歴や美術を通じての交遊について、コレクター人生を辿るように魅力的に語れらます。
私が興味を持ったのは「なぜ大切なコレクションを寄贈する気持ちになったのか」なのですが、これについても浦上氏は詳しく書かれています。
氏が病気で入院していた時に聞いたラジオ。その番組で、華岳大寿氏の「知恩」という話しをされていて、その意味するところは、「与えた恩はすぐに忘れ、受けた御恩は石に刻め」というものであったと……。
この出典は、後漢の崔子玉座右銘のうち「施人慎勿念 受施慎勿忘 曖々内含光 柔弱生之徒」。すなわち「人に施しては慎んで念う勿かれ。施を受けては慎んで忘れる勿かれ……」というものであったと。
それにしても、ご本人が寄付する気持ちを固めても、奥様やご子息(古美術店『浦上蒼穹堂』経営)の同意がないとなかなか出来ることではありません。それについても詳しく書かれていますが、本当に感銘します。
私ごとですが、少し前、奈良国立博物館の『空海展』で空海(弘法大師)の「崔子玉座右銘」の書を見たところだったので、ある種の共時性を感じずにおれませんでした。
万人に合うとは思いませんが、興味のある方はぜひ!
私的にはとても印象深い一冊となりました。
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