ヴィンターリングのチェロの音,楽器の選択など | ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

クラシックの本場ヨーロッパで職人として働いている技術者の視点で弦楽器をこっそり解明していきます。
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キーボードが復活したので練習かねて雑談です。
ウィンターリングのチェロの話、弦楽器の選択の話もあります。



こんにちは、ガリッポです。

キーボードが届いたのでこれで存分に記事を書いていけます。
富士通の日本語のキーボードと言っても英語のキー配列にかな入力の文字がプリントとされているだけのものでした。記号の配置が違うところがあります。ローマ字入力を使っているのでこれなら英語のキーボードと変わりません。それでもノートPCのキーボードより押しやすいので配置を覚えていれば大丈夫です。ノートPCのキーボードを見れば位置は分かります。シールでも貼りましょうか?
使いやすいことのほうが不便を上回っています。

今回はキーボードの練習を兼ねていきます。
慣れが必要です。


駒の続報

駒の点検の仕方をこの前書きましたが
https://ameblo.jp/idealtone/entry-12302171954.html
記事を追加します。


その時に紹介したヴァイオリンですが、駒の交換が完了しました。

これが新品の駒です。駒は弦に引っ張られて曲がってきます。日頃から矯正していれば長持ちします。自分でもチェックできるようになる必要があります。

商売からすれば駒をダメにして交換を頻繁にしてもらった方が良いのでしょうが。

ウィットナーのアジャスターは「W GERMANY」の文字が・・・。西ドイツ時代に作られたものです。今でも全く問題なく機能しています。潤滑剤を塗れば完璧です。今ではこのような品質のものは無くなりました。統一後もしばらくはWest Germanyの表記は使われたようです。品質も2000年くらいから怪しくなってきます。

このヴァイオリンが作られたときに取り付けられたものです。このヴァイオリンはメンテナンスを欠かさずきれいに使われています。品質が良いためトラブルひとつありません。消耗部品の駒と魂柱を交換して指板を削り直し、ニスの補修を少しすればきれいな状態です。今時、一生モノの工業製品がどれだけあるでしょうか?量産品では修理代が楽器の値段を超えた時点で寿命となります。

ヴィンターリングのチェロの続報

前回はケアシェンシュタイナーのチェロの話でしたが、ヴィンターリングの修理も終わりました。

ニスはかなり赤い色をしています。
軟質系のもので汚れが付着しやすいことを考えると作られた当初はもっとオレンジ色だったと思われます。当時お手本としたフランスの楽器もまだ新しかったのでそのような色だったのでしょう。

音ですが、とても柔らかい音です。プロのオーケストラ奏者が使っていることもあるでしょうが柔らかいからといって音が弱いということはありません。豊かな音で空間にも広がることでしょう。
高音と低音のバランスはよく豊かな低音でも高音も細くなることはありません。

個人的にはかなり良いチェロだと思います。
すごく味のある個性的な音というわけではありませんが嫌なところは無いです。
モダン楽器のいいところが出ていると思います。モダンかオールドかというのは永遠に結論が出ない問題ではありますが、頭で考えるのではなくて試してみる価値はあると思います。チェロの場合は選択肢も少ないのでこのようなチェロはかなり貴重だと思います。オールドヴァイオリンの愛好家なら「こんなのは違う」とバカにするかもしれません、ぜいたくな話です。



板の厚みは前回紹介しましたが表板は全部同じ厚さです。
グラデーション理論というのがいかに机上の空論かということです。
現代の楽器製作や弦楽器の知識というのは怪しいものがたくさんあります。
間違った知識を絶対視するなら勉強しないほうがましということが言えます。



特別板が薄いということはないのですが、グラデーションが無いので厚すぎるところもありません。
鳴り方としては薄めの板の楽器の感じだと思います。それを気にするのも私くらいかもしれませんが厚い板の楽器とは違うように思います。


厚い板の楽器が良いのか薄い板の楽器が良いのかは自分の好みを見つけるしかありません。選択肢は薄いものが少ないので薄い物の方が希少です。理由は厚い板のほうが厚みを削る作業が少ない事と現代では厚板が良いと信じられているということです。

このチェロも特に変形などはありません。強度をいかにうまく作るかが重要です。

400万円くらいの相場になっていますから、裕福な家の出ではないプロの演奏者には理想的なものです。(それでも400万円ですよ!)だからと言っていつでも売られているものではありません。買える人は幸運です。これに近いものは私にも作れると思うんですけどね。どうでしょう?

500万円を超えるのならそれこそフランスのものが重要な候補になるでしょう。有名すぎると1000万円を超えてしまいますが普通は一流の職人でも1000万円に収まるはずです。フランスのオーションでは出ていますので全く売られていないということはないでしょう。時代は少し古くなると修理や維持はデリケートになります。

日本の業者はここでもイタリアのもののほうが売れるチャンスが大きいということでそちらを仕入れてしまうのはもったいないことです。イタリアのモダンチェロは粗い仕事のものが多いからです。よくある作風の新作に500万円以上出すのも高すぎます。まあそれくらいでないと職人はやっていけないのでチェロ奏者は皆それくらいのものを買うようになって欲しいものです。

ミルクールの量産品を数百万円で売るならおいしいと考える業者もあるようですが、量産品は量産品です。









ケアシェンシュタイナーのほうは今でもよくあるような作りのチェロで耳障りな音の少ないものです。100年経っている分だけよくある新品よりは良いと思います。薄い板のものはどうもしっくりこないという人には良いと思います。こちらは硬質のニスで厚みのあるとても硬い物でした。どちらも柔らかい音がします。謎です。


ラッカーのような硬いニスは良くないと考えられていますが、戦前のドイツの量産品の多くはニスの硬さによって耳障りな音になっているというよりはもともとそういう音の楽器だと思います。ニスによって耳障りな音になっているのではなく、ラッカーが塗られているようなドイツの量産品は耳障りな音のものが多いということだと思います。

これは新しい発見です。
今後も追っていきます。
「ひどくなければ何でも良い説」がますます強くなっていきます。



このほかヘッケルというドレスデンのモダンチェロも私が修理したものがありました。これはザクセンの流派の職人なのですが、チェロ自体はとても美しいもので板は薄く音は低音が強い暗い音で枯れた味があり柔らかい物でした。楽器が勝手に鳴るという感じはありませんので未熟な人がぱっとひ弾いて「音量がある」と感じないかもしれませんがキャパシティは大きいと思います。

ニスはラッカーのようなもので見た目は安っぽい感じもしました。しかし音は良い物でした。今年売れてしまいました。ザクセンの流派なので少し安めの値段でした。250万円位だと思います。


他にもうちょっと古い時代のザクセンの作者不明のチェロもありました。作風はオールドの雰囲気が残っています。1850年くらいの過渡期のものかもしれません。これは耳障りな音のするもので私は悪い意味で背筋がぞくぞくしました。いつもチェロを弾いている人なら気にならないかもしれません。


やはり楽器は弾いてみないと分からないということです。
カテゴリーで分類することは損することだと思います。



私は品質と値段をリンクさせるべきであると考えます。
しかし音は弾いてみないとわかりません。
音が良いからと言って品質が悪いものを買うとトラブルが連発することになります。
異音が発生すると分解して組み立て直さなければいけなくなることもあります。

音が良いからと言って粗悪なものを高い値段で買うこともばかげていると思います。

品質を一次審査として職人が行い値段を設定し、その中から音の良いものを演奏者が選べばブランドや産地にこだわる必要はないと思います。




オールドからモダンに作風が変化する時期は、年長の職人と若い職人では習ったものが違います。時代の流れは強力で年長者は肩身の狭い思いをしたかもしれません。今となってはオールドの作風のほうが魅力的と感じる人もいます。惰性で形骸化していたので本当のオールドの時代とも違います。

今の時代に成功したからと言ってそれが唯一の正解だとは思いません。
少数派であっても主流とは違うものを作ることも貴重な選択肢を残すことになるでしょう。

ヴァイオリン製作を学校や師匠に習ってもそれで終わりではなくて、実務で基本的な能力をプロレベルまで高め、いろいろな楽器を調べて自分で作ってみて、その中から自分の作風を見つけていく。自分が選ぶということもあるし、演奏者に試してもらって反応を見ることも重要です。

実務をこなしているだけで社会人としては真っ当な人生です。それ以上のことをするのはハードなことです。


そうやって自分の作風を確立するとともに認知されることによって一人前の職人となっていくプロセスを目指しています。


有名な職人の弟子だとかコンクールで賞を取ったとかそういう方法でも生計を立てられるという意味で一人前になっている人はいますが、有名な職人や賞で評価されるということは主流ということです。たまたま有名になっているかどうかというだけで同じような楽器を作る人はたくさんいるのです。

楽器を選ぶプロセス

キーボードが復活したので雑談をしていきます。

私が作風をどうやって選んでいくかという話も少し出ましたが、楽器を買う場合も選んでいかなくてはいけません。楽器に限らず物の購入ひいては人生全般の話です。


楽器というのは単に優れている劣っているという一つの物差しがあるのではなく、感性で選ぶということが重要です。「センス」とも言われるもので「あの人はセンスがあるな」と思われることもあるしそれを全然理解できない人もいるというものです。

客観的に優劣を決めるならスポーツのようにルールを決めて点数を競い合えばいいのです。自動車レースでは勝者が決まるとともに性能が著しく向上しました。ただし直線だけとか急なカーブがあるとか路面などによっても勝者は変わってきます。結局はコースが勝者を決めるとも言えます。

マイクで音を測って音量を数値化すれば競技にすることはできるでしょう。演奏者によって音が違うので大きな音を出す専門の演奏者を雇うことになります。弓も改造されてベトベトの松脂も開発されることでしょう。


どうでしょうか?
センスがあると言えるでしょうか?
コースは無響室ではなく「音楽」ではないでしょうか?
じゃあ、カラオケの点数みたいなものかというと・・・私が言うまでもありません、皆さんのほうが考えを持っていると思います。

もちろん基本性能は向上していくでしょう。
ただしオールド楽器とは違う音のものになっていくと思います。現代の楽器製作ではすでにそうなっています。

私が取り組んでいるのはオールド楽器のような音のものを作ることです。


もう一つ競争の問題点はお金を持っている人の勝ちということになってしまうことです。
ハイテク素材で楽器を作るようになり開発予算が必要になります。競技に勝つ楽器は値段も高くなります。

人生を幸せにするには、それとは違う満足感を得る必要があると思います。
音楽に人生をささげたかではなくお金をいかに稼いだかが重要なのです。
それならTシャツに資産額をプリントすれば良いと思います。そのほうが分かりやすいです。

私は物事を合理的に考えるところもあってお金の量を競うなら純粋に競えば良いと思うのです。高価な品を自慢するのは遠回りしているように思います。



文化というのは人間が長い間なんとなく「いいなあ」と思うようなことを選んできて蓄積されたものだと思います。それも積極的に求めることなく商業のプロモーションに任せきりにしては忘れ去られていきます。かつてのソビエトのようにものが不足していれば西側の生活は輝いて見えたと思うのです。私のところは観光地ということもあって外国人をよく見ますが最新のファッションに熱心なのは東ヨーロッパからアラブ系の人種の人たちです。西ヨーロッパやアメリカの人たちのほうが定番となった「普通」の格好をしています。

中東の映像はメディアでも見ることがありますが、悲惨な地域もある一方ヨーロッパの最新のファッションの若者も見ます。家はぼろくてもスマホと流行の服を身にまとっています。日本とちょっと流行が違うのでわからないかもしれませんけども、ヨーロッパとは共通しています。



日本でも段階を追って新しい技術が取り入れられてきましたが、それらの国では一度にすべてが来ています。急ぎすぎているように思います。


一見地味なものの良さが分かるのが次の段階でしょう。
日本の弦楽器奏者にもそのような気持ちは生まれてきていると思います。
お店はそれに対応できていないかもしれませんが製作者の方も「量産」できていないのです。
いいものを見つけるには苦労もつきものだと思います。

そのことを楽しみとできるようにブログで支援します。

選択という過程

優劣ではなくセンスの問題となると難しいです。

弦楽器の知識を10段階のレベルに分けると


レベル1・・・総合楽器店で大手メーカーの量産品を購入
レベル2・・・イタリアの新作楽器を購入
レベル3・・・日本人作者やマイナーな名品を購入
レベル4・・・のみの市やオークションで買う

レベルが上がるにしたがって難易度は高くなります。
レベル5以降は凡人の理解を超える世界でしょう。90%は1か2のレベルですから商業を考えるとそこに重点を置くべきです。

マイナーな名品を試奏して選ぶには自分のセンスが必要です。上手くいけばイタリアの新作より安く良いものが買えます。オークションなどは人気のないものは安く買えます。しかし修理もされていなければ音も分かりません。何個か買ってみて良さそうなものを選んで修理に出すという感じになるのではないかと思います。したがって安くて良いものが買えるかガラクタがたまっていくかわからないものです。


理想の楽器を入手するという一つのゴールに向かっていくなら信頼できる店で万全な状態になっている楽器を試奏して買うことです。値段はすごく安くは無いですがマイナーな流派ならそんなに高くはありません。

ガラクタの中から名品を探すのは本来店がやるべきことですから成功率は低いと思います。
面白さという点では私も分かります。ガラクタが素晴らしい楽器に代わることがあるわけですから。知識も経験も必要でそれを学ぶことも楽しいのです。私なら自分で修理すればいいわけですが、修理を頼むとお金はかかります。出来上がってみないと音は分からないのです。ヨーロッパの家にはたくさん使われないままの楽器が眠っています。多くの場合修理代のほうが楽器の価値より高いのですがまれに良いものがあります。見つければうれしいわけです。当然失敗も経験することでしょう。私自身は胃が痛くなる思いがするのでオークションみたいなものは好きではありません。自分で作るほうがまだ思うようにいきます。

趣味としてはおもしろいかもしれませんが泥沼にはまる必要があります。理想の楽器を手に入れるという一点に向かっていくというよりは探す過程自体を楽しむ人に向いていると思います。生涯ゴールに向かっていくのではなくてさまよい続けていくのでしょう。道楽の人です。

もちろんガラクタでなくて名器でもいいです。日本の業者が見向きもしない楽器なら自分で入手するしかないのです。しかし音は分かりませんし、気に入らなかったからと言って日本での売却は難しいです。


私も一つのゴールに向かっていくのではなくいろいろなものを知りたいという欲求があります。この辺の考え方は職人によっても全く違います。学校の先生や師匠に教わった方法を最善と信じて生涯を終える人がほとんどです。流行の手法を取り入れる人もいます。商人の元で働けば商人の価値観に洗脳されていきます。

楽器を買う人もレベル2のような「有名で値段が高い物を良い」とする段階で一生を終える人がほとんどですが、それすらも手が出ずにレベル1で終わる人が8割でしょう。


日本でレベル3に到達できる人が数パーセントということになってしまいます。うちのお客さんなら多くは初めからそのレベルですけども。それは基本的なものの考え方の違いです。



ただ試奏して買うというのが難しいのは自信がないというのもありますが、知らない物の良さを分かるのが難しいでしょう。オールドの名器を知っていて予算の中で最もそれに近い雰囲気のものを選ぶならオールド楽器を知らなくてはいけません。音大で優秀なモダン楽器を弾いていてプロとなり、機会があってオールドの名器に触れると「違うな」と思うかもしれません。そこで実際に何かを買ってみて使っていく中で分かってくることがあるでしょう。そうなるとだいぶ好みや不満点が分かってきて良し悪しが分かるようになってきます。


実際には経験や腕前に先行して優れた楽器を買おうとするものです。
初めて買う楽器が最後の楽器であってほしいわけです。

そんな虫のいい話に答えてくれるのは「有名な作者の高価な楽器」です。


手ごろな値段で良い楽器を手に入れるには「運」にかかっているとも言えます。
家にたまたまあった楽器の音がすごく良いということがこっちにいるとあります。その人のおじいさんの功績です。この前も初心者の子供が家にあった楽器を持ってきたのですが、南ドイツのオールドヴァイオリンでマイスターの作品でした。同じ年代の子供が通うヴァイオリン教室でオールドの名品を使っている子なんてそういないです。レベル4で成功しているのです。

熱心すぎる親は失敗することがよくあります。
レベル2くらいまでしか行けませんから店の利益に貢献することでしょう。


今年もうちに来た2組のお客さんに対して私の師匠が「楽器の評価というのは…」と一から説明してレベル3の楽器選びをしました。ドイツとデンマークのモダン楽器を購入しました。レベル2で選ぶよりはいい買い物です。

そのような店に出会えるという運ですよ。
「この作者は巨匠として世界的に評価が高いです…」なんて説明から入る業者に当たり「そうなのか」と思って勉強するとレベル2止まりです。




家の壁をペンキで塗るとしましょう。
プロに頼めば100万円以上かかるでしょう。

その時に色を変えようかと考えます。いろいろ考えて塗ってみると「なんかイメージと違う」のです。じゃあということで違う色にもう一度塗り直します。このような人はおかしな人です。業者は「あの人あんなにあの色が良いと言っていたのにまた塗り替え?」と困ったお客さん扱いするか、自分の失敗と考える真面目な人もいるでしょう。
でもこれをやらない限り良い色にすることはできないです。運が良ければ一発で成功しますがまず無理です。

何事でもやってみないと分からなくてやっていくうちに分かっていくことがあります。何かを極めようと思ったらこのようなことを繰り返していくうちにセンスが磨かれていくのです。もしくはもともと持っていた感性に合ったものが目の前にあるということかもしれません。

趣味とするならずっとこのことを続けていけるので楽しみが尽きないということにもなります。失敗した時は真剣に落ち込みますよ。偽物を買ってしまったりすることがあるわけですから。
後で考えれば失敗も笑い話にできるくらいの器が必要です。


普通は塗装屋さんのほうが経験で知っていて、それは止めておいた方が良いと説得します。
出来上がってみるとやはりプロの言う事を聞いておいてよかったということになれば両者にとって成功です。



私も作ってみて「あれイメージと違ったな?」ということを多く経験しました。今からなら危険なチャレンジはしないかもしれませんが、20代の頃は無茶しました。厚い板の楽器を作って挑戦したこともあります。いい結果は得られませんでした。

職人の仕事というのはそういうものばかりでやってみるとまず上手くいかないのです。そこからいろいろやってみるのです。理屈を言っている人の言う事は聞く気はしません。どうなったかを聞きたいのです。知ったかぶりが話しているのを聞くと騒音にしか聞こえません。聞く価値のない意見ばかりが世の中にあふれています。古い世代を挑発する人とそれに反発する人が戦いを繰り広げるのですが、どちらの意見にも興味がありません。「やった結果を見せろ」と思います。


そうやって私もセンスを磨いていくことで私の楽器を買う人はリスクは避けられるのです。私は何か「画期的に音が良い楽器の作り方を発見した!」と豪語しませんがセンスを磨くということを常にやっていきたいと思います。

自分で楽器を作るにはあまりいろいろな方向性のものは作れませんので、一つのゴールだけに向かっていくことになります。しかし同じ作り方だけを繰り返していくのではなく違うタイプの楽器を作って広い範囲の中から自分の目指すものを選んでいけばより高いピラミッドの頂点になるということです。

選択の幅を広く取ってその中から選べばより際立った作風ができるでしょう。同じような過程を経験しても選ぶものが違えば職人によって進む道は違うはずです。私も以前は腕さえよければどんな楽器でも作れると考えていました。しかしそんなに甘いものではなさそうです。もちろん表面的にはできますが、特定の趣味趣向に専念しているとやはり違うのです。それも文化です。


職人という職業は師匠から正しい方法を学ぶことによって自分のやっていることに満足感を得られるものです。しかし「思ったものと違う」と感じたらすぐにやり方を変える必要があります。

「ああやったらいいんじゃないか?」と熱く語っても、やってみて違えばどんどん「失敗した」とボツを出していくことです。


日常的な買い物で理想の洗濯機を求めて何十個も買うことはできません。弦楽器もコレクター以外はそうです。作る方がやらなくてはいけないのです。逆に言えばそれをやるほど知識を持っているというわけです。

酷い楽器

私は医学には疎いのですがおそらく病気を解明するには異常がある場合を研究しなくてはいけません。楽器でもひどい音がする場合やうまく鳴らない楽器を研究する必要があると思うのです。

しかし、弦楽器オタクが喜ぶ話題というのはストラディバリの重箱の隅をつつくような些細なことに集中します。「昔はサンドペーパーが無かったはずだ」それが音の良さの秘密ではないかと考えるのです。木の表面をどうやって処理したかミクロの研究が報告されると食いついてくるのです。

しかし、フランスでもチェコでもハンガリーでもどこの産地の楽器でもよく鳴るものがあります。音のキャラクターや質は好き嫌いのセンスの問題になってしまいますから、鳴る以上それらのものを優れていると考える人は出てきます。どこの産地の楽器でもその意味では優れたものがあるので特別な方法がイタリアだけにあったとは考えられないのです。

音のキャラクターや質を問題にするなら新作でも古いイタリアの楽器のようなものは作れます。板の作りに原因があります。


私が言いたいのは名器だけに注目するのではなくて、音がひどい楽器も調べるのに価値があるんじゃないかということです。ちょうど病気を研究するようにうまく機能しない原因を突き止めることの方が作るべきではない、買うべきではない楽器が分かるので有用な知識となるのです。

研究の対象はストラディバリではなく、名もない酷い音のする楽器ということになります。
弦楽器オタクのような人達は知識にとらわれて永遠に良い楽器を選ぶことはできないでしょう。


知識というのは興味をどこに向けていくかということがとても重要だと思います。
酷い楽器について紹介するのは当ブログくらいでしょう。
レベル4を超えてくるとそういう楽器と向き合うことになってくるのではないでしょうか?
酷い楽器ばかりを集め始めたらいよいよです。「お前は天才か?」という感じです。


誤字があったらすいません、このキーボードも記事を書くことには十分使えそうです。