アマティ派のデルジェズコピーを作ろう【第7回】アーチングについて | ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

クラシックの本場ヨーロッパで職人として働いている技術者の視点で弦楽器をこっそり解明していきます。

今回はアーチの加工です。
ヴァイオリンの音の性格を決めるうえで重要でありながら謎が多いものです。
デルジェズのアーチの特徴について見ていきましょう。





こんにちは、ガリッポです。

常に新しい読者の方々に見つけていただいていることですので、基礎的なお話は過去にもしていますがまたあらためてお話ししましょう。

ヴァイオリンについて最も大きな勘違いは、「ヴァイオリンには、優れているものと劣ったものがあり、優れたものを作った人は名人として有名になって高い値段で取引されている」ということです。
また「名人は並外れた技を持ち秘密の技法を編み出して、細部にも並外れたこだわりを持っていて、一般的な職人には到底まねができないはるかな高みに到達している」というのも勘違いです。

実際は有名な人が作ったものも無名な人が作ったものも大差がなく、大差がないがゆえに実力で楽器の良し悪しが分からないので「作者の名前」を頼って購入しようとする人がたくさんいる。それゆえに値段が上昇するということです。

大差がないというのは同じ音がするというわけではないですが、同じくらいの時代に同じように作られていれば一長一短であっち良ければこっちがダメこっちが良ければあっちがダメという程度で名前の知名度に関係なく同じくらいのレベルのものはざらにあるのです。


もし、音に全面的な差があるのなら名前なんて気にする必要はなくブラインドで作者の名前を伏せて選ぶべきですよね。音だけで作者を特定できる人なんていません。


もう一つの大きな問題は、「音が良い」というのをどのように定義付けるかです。これは人によって感じ方が大きく違います。人によって聴覚は大きく違いますし、今使っている楽器との比較になるので、皆が使っている楽器が様々なので相対的にいろいろな結果が出ます。

もちろん好みも全然違います。試演奏に使う曲も人によって全然バラバラです。「音量はあるけど私の好みじゃない」なんてこともざらです。



弾く人によって音も変わってしまいます。修理に預けていただいたものがどうしようもない耳障りの楽器で私たちが弾いてもどうにもならないと思っていたところ、持ち主の人が弾くととても柔らかい美しい音がするのです。その楽器特有の弾き方というのがあるのです。おそらくその人は「普通」の音の楽器を弾いてもうまく鳴らないでしょう。



いろいろな楽器を弾いたり聞いたりした経験のある人も少ないです。この世に存在する楽器の中のどの辺のものなのかというのが分かりませんよね。例えば私がストラディバリやグァルネリ・デルジェズにそっくりな音の楽器を作れたとして、もしそれらを弾いたことがあれば似ているということが分かりますが、弾いたことが無ければわかりません。

それらの名器は普段からそのような楽器を使っている上級者でないといきなり弾いてもうまく音を出せないでしょう。安物のだと偽って出されたら名器に気付かないでしょう。



なぜこのようなことになるかというと、ヴァイオリンなどというものは零細企業が手作りで作っているようなもので、年間に莫大な開発費を使って研究される現代の製品とは違うのです。それだけの開発費を費やしたところで利益が期待できない小さな産業なので参入する大手メーカーがないのです。
その場合、もはやヴァイオリンの伝統的な形にこだわる必要はないでしょう。ハイテク素材を使ってデザインも全く新しいものにすることで「高性能」なものができるでしょう。
いずれにしても個人程度が研究しても画期的な改良はないのです。


名工と言われ高価な値段がついているような人の楽器が職人の技という点では必ずしも大したことが無いのも事実です。私のような職人にとっては登山のようにはるかに高いところを目指して頑張っていきたいところですが、そのような名器は小山のようなことも少なくありません。なぜかというと昔の人たちはそのような技能面での高みを目指していなかったからです。
昔の人が高みを目指さなかったので過去にさかのぼって考えを改めるように説教することもできません。目指していなかったので仕方がないです。

望遠鏡のレンズを加工するように何かを理想通りに加工すれば性能が良くなるということはありません。楽器が音を出すのは物理現象なので仕方がりません。無いものはないのです。



うまく弾きこなしたり、長期間弾き込んだり、また楽器が古くなることが音にとっては重要です。楽器の作り方を多少変えようが丁寧に作ろうが雑に作ろうがそれらに比べると微々たる違いにすぎません。ただ単に「鳴る」「鳴らない」というだけで楽器を判断するのなら数万円のヴァイオリンにも十分「鳴る楽器」と判断されるチャンスがあります。むしろ安い楽器に音が強く感じられるものがたくさんあります。値段や名前にとらわれず自分の耳で選んでみてください。私の個人的な見解ですが、それらの楽器を相当な腕前の人が弾くと器が小さすぎて演奏者の表現を妨げているように聞こえます。

また作られてから100年程度経ったものは有名な作者のものでも無名な作者のものでも大量生産品でも音が強く感じられるものがたくさんあります。お店で高価なモダンヴァイオリンを勧められて「さすがに良く鳴るな」と感じられることがあるかもしれませんがマイナーな作者でも量産品でも年代が同じなら同じように鳴るものがあるかもしれません。



楽器の作りの違いは本当に微妙なものであり、それによって音がどう違うのかははっきりしないことがほとんどです。我々職人も音を計算したりイメージして作り出すことはほとんどできません。ヴァイオリンの音がフルートやアコーディオンの音と違うのは分かってもヴァイオリン同士の微妙な音の違いを構造から明らかにするのはできないことのほうがはるかに多いと考えてください。ヴァイオリン製作学校では標準化された寸法に加工するだけでも木工初心者には大変に困難で「音を作る方法」などは教えていません。木工の職人は一人前になるまでがとんでもなく難しくて多くの学生が挫折します。しかし訓練を一通り真面目に乗り越えさえすれば一人前になることができ、それでプロとしては十分なのです。もちろん私を含めてそれ以上に細工や加工技術の研究をしている人がいます。しかし、それは細工が気に入った人が買えば良いというだけで、そうでない職人の楽器を「悪い楽器」だとは言えません。



私が取り組んでいるのはパッケージとして古い楽器を研究することです。原理はわからないブラックボックスですが、既にある楽器をまねてそっくりの構造に作ると音も似てきます。これは何度も経験しています。どこの部分がどのように作用しているかはよくわかりません。ただし作りたてホヤホヤのものと長年弾き込まれたものとが同じ音であるはずはありません。それでも他の現代の楽器に比べると似ているのは間違いありません。

言い換えると現代の常識に従った構造で作れば、ストラディバリの型でもデルジェズの型でもアマティの型でもすべて現代的な音になります。別の作者が作ったストラディバリ型とデルジェズ型を比較しても型による音の違いというのは分かりません。

現代的な構造の楽器でもオールド的な構造の楽器でも作られた年代が同じならそれほど性能差はないと考えていいでしょう。音色や音の質、鳴らすための演奏スタイルは違うと思います。


そうなると、現代的な音、オールド的な音となるわけですが、これも厄介でそれらにもいろいろな音があり「典型的な・・・」ということは言えても聞き手の取り方によってはどちらにでも取れるような音のものもあります。


話を戻しますが、すべての要素をそっくりにした時に各部の要素が複雑に影響しあうことでオリジナルに似た音になるということが言えます。なぜその音になっているのかという原理は分かりません。

私がヴァイオリン製作をやってきて飛躍的に進歩した一つは、「過去に作られた楽器の中から音の良いものを探してそれをまねて作る」という方法です。過去に作られた楽器の数というのは一人の人が試行錯誤をして作り出せる量よりも圧倒的に多いです。何百台と作ったところで発想が限られているので似たようなものしかできません。マネするなんて卑怯だと思うかもしれませんが、私は何と言われようと「勉強する」と考えています。味わい深い魅力的な楽器を作るには手段を選ない卑怯な人間です。勝ち負けを争う競技をしているのはありません快楽主義者です。

もちろん古い楽器だと偽って売れば詐欺ですが、専門家が見れば見分けがつくはずです。もし見分けがつかないのならその人は目は節穴であるばかりか、私の腕前が古(いにしえ)の名工を遥に超えていることになります。数百年間に楽器に起きたことを数か月の楽器製作ですべて再現するのは不可能です。私がやっているのは雰囲気を出しているだけです。わかる人が見ればすぐに複製だとわかるようにしてあります。

もっと確実に科学的には表板の木目を調べることで木材の時代や産地がオリジナルと同じかどうか特定できます。
ちなみに作者を偽って売るのはそっくりな楽器でなくてもやろうと思えば何でもできます。商取引の公正さの問題です。実際偽物で被害が多いのは古い大量生産品に有名な作者のラベルを貼ったものやラベルを貼り換えたものです。中国製の大量生産品と思われるようなものにニスだけ手塗してイタリア人の作者のラベルを貼ってあるのも見ます。

「イタリアの名工の作品の名前を偽っても偽物は音が悪いから気付くはず」と思うかもしれません。始めに説明しました、有名な作者でも平凡な作者でも同じようなものを作ることは可能で音について実力には差はないということを思い出してください。根本的な思い込みによる勘違いです。音で偽物を見分けることはできません。


楽器商が古いドイツの楽器にイタリアの作者のラベルを貼る、イタリアの楽器にさらに高価なイタリアの作者のラベルを貼るというようなことは、弦楽器業界では「商慣行」として当たり前のようにやってきました。問題は取引が公正かどうかです。

私がやらないのは、近代現代のイタリアの楽器の複製です。これだと見分けがつかないものを作ることが可能です。もし私の手を離れた後、心無い業者がイタリアの楽器として売ってしまえば誰も気づくことができません。




飛躍的に進歩したもう一つはニスです。ニスの材質を変えたときに以前のものより良い結果が得られました。ニスは材質によって固有の音があります。それらは魔法ではなく楽器本体との相性が重要です。私が作り出したニスは私の楽器には合いますが他の作者のものに合うとは限りません。



これらのことで現代の常識として教わった作り方に比べ2段階くらい進歩したと思います。そうはいっても音の評価は人によって異なるので現代の常識で作られた楽器のほうを音が良いと感じる人もいるでしょう。これはしょうがないです。

ただ細かい部分をいろいろ変えてみても進歩することはありませんでした。そういう意味で改良していくというのは難しいと思います。パッケージとしていろいろなタイプの楽器を作ってみていいものを選んでいくということですね。どちらかというと突然変異と自然淘汰に近いようです。その意味でも膨大な数の古い楽器の中から作り方を取り入れたほうがチャンスがあると思います。



今回はデルジェズのアーチを研究します。
デルジェズも作風にバラつきがあって今回紹介するのがすべてに当てはまるわけではありません。少なくとも一つの、もしくは一つの傾向として理解できると思います。このアーチによってどんな音になるかは完成してみなければわかりません。やってみましょう。

デルジェズのアーチング、まずは理論から

デルジェズのアーチについてはよくわからない説明がなされてきました。その最たるものは「フラットなアーチ」だというのです。実際に調べてみると必ずしもフラットなものばかりではなくいろいろな高さのものがあり高いアーチのものもあります。若い時や晩年に関係なくいろいろなアーチの高さがあります。表と裏で全然違う場合もあります。

アーチにバラつきがあるのはストラディバリでもアマティでもそうでした。これといってこうでなくてはいけないという作風は決まっていないことになります。グァルネリ家で二人のピエトロはぷっくりとした高いアーチばかり作っていますから作風は定まっています(今後の調査が必要です)。

アマティもストラディバリもデルジェズもフラットなアーチなものもあれば高いアーチのものもあるという点で全く同じです。

なぜデルジェズはフラットだというデマが流れたのか経緯はわかりません。フランスの19世紀初めの職人はフラットなものを好んで作りました。それらの作風を正当化するためにでっち上げたのでしょうか?


現代の職人や営業マンが真面目に弦楽器について勉強すると「デルジェズのアーチはフラット」というわけのわからない知識を身に付けてしまいます。そしてデルジェズモデルの楽器はフラットでなくてはいけないと勘違いしてしまいます。


アマティやストラディバリと共通する点は高いアーチもフラットなアーチも両方作ったということです。現代の職人の多くは高いアーチの物を作りませんから高いアーチの作り方は知りません。アマティやストラディバリ、デルジェズがこれと違うのはフラットなアーチを作るときでも高いアーチの作り方を応用して作っているということです。作業の手順や使う工具なども共通のものを使っていたでしょう。それに対して現代の職人は初めから高いアーチは作りませんからそのための作り方しか知りませんし、工具もフラットなものを作るのに適したものを持っています。仕上げの基準が全く違うものになっています。
フラットなアーチの楽器でもオールドヴァイオリンには独特の雰囲気が感じられることが多いです。そのため私たちはオールドヴァイオリンと近代・現代のヴァイオリンは一瞬で見分けることができます。いくらニスをアンティーク調に塗ってあっても100年使いこまれて汚れても私たちには古い楽器には見えません。

特徴を図で説明していきます。かなりオーバーに描いてあると思ってください。


まず図1です。アーチを横から見た図です。
黒い線で示したのがデルジェズです。一般的には…と言っても何が一般的なのかよくわかりませんが赤線に対してAとBの地点では低くなっています。しかし中央は高くなっています。きれいな弧を描いているというよりは全体的に三角形に近いです。これが特徴です。

これを横方向で見ると図2のようにAとBの地点ではアーチは平らになります。

図3のように中央はしっかりとした高さがあるわけですがここでもきれいな弧を描く赤線に対してやや三角形になっています。

図4は上下のコーナー付近を示したものです。ここは極端にえぐれています。現代の職人でここまでえぐる人はまずいません。見たことないです。これも中央と上下の部分で旧下にアーチが変化しているのでこのようになるのです。AとBの地点が高ければこんなに掘り込んだらそこだけくぼんでしまうのですが、低いのでうまくつながるのです。

図5で示しているように三角と言ってもふちまで直線になっているのではなくなだらかにカーブしています。三角というよりもベルのような形です。
アマティの時にお話しした周りをぐるっと溝が彫ってあるということについては同様だと思います。溝から高い方に向かってのカーブにこのような特徴があると言えます。

これが二人のピエトロ・グァルネリであれば溝から急にカーブが立ち上がることで三角にならずぷっくらと丸みを帯びた膨らみになっています。

アーチの高さはいろいろありますのがおよそこんな感じです。
駒や魂柱の来る楽器の中央がとがっているような感じです。いわゆる高いアーチの楽器というのはAとBの地点が赤線よりもずっと高くなっていることで「いかにも高いアーチ」という印象を醸し出します。その点で言うとデルジェズは頂点の高さの数字に比べるとそんなに高く見えないということもあると思います。

アーチの性格としてはアッパーバウツとロワーバウツはフラットで中央が高いアーチという極端な形になっているの傾向があると言えます。このあたりは作るときの手の癖のようなものでしょう。

実際に作っていきましょう



パフリングが入った後荒削りを仕上げていきます。先ほど図で示した通りコーナー付近は大きくえぐれています。このえぐれを出すにはノミでザックリと彫っていくのが最もやりやすいです。

先ほど説明した独特のカーブもノミでえぐり取る作業で出来上がります。周囲に溝があってそこからノミでえぐっていくことですね。周囲が彫っていないとノミでえぐっても全然違う印象になります。私の知り合いの職人がそういう楽器を作りました。二人の全然別の流派の人がそうなっていました。やはり溝を周囲に彫るというアマティの作風を知らなかったのでしょうね。

こんな感じなってきます。ノミで彫るのは失敗すると穴が開いてしまって神経を使うので嫌がってすぐにカンナを使う人が多いです。ただ作業はカンナに比べるとずっと深くザクザク削れますからいくら慎重に行っても速くできます。初心者は速すぎるので削りすぎてしまうのですが…

カンナは3回通りくらい通しでかけて終わりです。私はこれで形を作ることはしません。いつも言っているのでなぜかはもういいでしょう。アマティ型のビオラの記事を見てください。

表面をカンナでならしました。


このようなスクレーパーという鋼の板で削って仕上げます。厚さは0.4mmです。薄いと繊細の削れ方で厚いとゴリゴリと削っていく感じになります。

一発で仕上がれば一番いいのですがこの段階に入ってもまだ攻めきれていないところがあったのでまた部分的にノミやカンナで修正を加えました。修正をあまり加えすぎると勢いがなくなって整いすぎてしまいます。整えすぎると現代の楽器のように特徴のないものになっていってしまいます。かといって勢いよくやりすぎると削りすぎてしまうので今でも難しいです。

アーチが高かったり低かったりする理由の一つはその辺のコントロールの難しさだと思います。


表板の同様の作業です。表のほうが若干高めで中央は最終的に17mmになりましたから今の常識からすると結構高いです。




このようにスクレーパーで仕上がりました。
きれいにできたと思うかもしれませんがここからがデルジェズのポイントです。

昔の作り方ではパフリングを入れるタイミングが違います。アーチが出来上がり板の厚さをだし横板に張り付けて胴体ができてから入れるのです。そのあとの加工に特徴があります。それをダミーで再現してみましょう。

パフリングを入れた後でその上をノミで彫るのです。そうすると滑らかなアーチの表面にのみで彫った後がつきます。アマティやストラディバリであればこれをきれいに仕上げるのですがデルジェズはこの刃の跡をきれいに仕上げません。ここにニスを塗った後使用を続けているとそこだけくぼんでいるので汚れなどがたまってもこすっても取れなくなります。くぼみの周辺は角になるので逆にこすれてニスが剥げやすくなります。そのような風合いが独特です。その汚れもパフリングが汚く見える原因でデルジェズらしい雰囲気にの源になります。

このような工程の違いももオールド楽器の周辺が深く溝が彫られていて見た目の雰囲気が変わってくる原因です。表板のf字孔の周辺の加工の仕方にも大きな影響があります。f字孔の時の説明しましょう。


後で多少凸凹を甘くしますが名残は残します。この画像でも「デルジェズっぽいな」という雰囲気がプンプンしてきます。凸凹にアンティーク塗装を施すと良い感じに汚れがたまったようにできるのですのです。想像しただけでも楽しくなります。

完成した姿です




きれいすぎないように仕上げるのが難しいですね。アマティやストラディバリであればアーチに限らずあらゆるところでそうなのですが、きれいなカーブが出たところで「よし!完成!」となるのですがデルジェズの場合にはその前に終わりにしないといけません。出来たという実感がわかないうちに終わらなければいけないのでいつ終わりなのかよくわかりません。できたのかできていないのかわからないのです。

別の光で立体感を見ていきましょう。

やはりオールドヴァイオリン、アマティ派の特徴として周囲をぐるっと溝が彫られています。理論で説明したようにロワーバウツはフラットに近いのに中央はしっかりと高くなっています。それもぷっくらと丸くなっているのではなくて三角形のようになっています。


やはり起伏に富んだアーチをしています。ただ単にペタッとしたフラットなものとは違います。

表板です。




表板はオリジナルは弦の力で大きく変形しています。今回は変形していない状態にします。超理想的な有り得ない保存状態です。いずれ変形してくるでしょうから時間に任せます。音はどうなるでしょうかね?


全体像としてはこんな感じです。画素数が少なくて見にくいですがブログなんていうものは私のような使い方を考えていないのでしょうね。
現物はもう少しいびつに見えると思います。私が初めて作ったヴァイオリンでももう少しきれいだっと思いますよ。

その辺が独特の風合いを出しているのがデルジェズですから、製作学校の学生がいきなり作るようなものではありません。アマティの基礎を身に付けて初めて雰囲気のあるものが作れるのだと思います。現代風の作風でアンティーク塗装したデルジェズコピーはよく見ます。私は見ているとイライラしてきますが、それはそれで立派な作品ですから決して悪いものではありません。また大げさなものも趣味が悪いですね。まあ、難しいです。

そりゃあデルジェズ本人は難しいことを考えて作ったわけではないでしょう。ただ作っただけですよ。まさか300年後に尊敬の対象になるとは思いもよらないでしょうね。


次回はビオラの板の厚さについて見ていきましょう。
特にビオラにとっては重要なテーマです。ヴァイオリンはわりと何でも良いのですが…