不況になると口紅が売れる -36ページ目

不況になると口紅が売れる

~遊びゴコロで、世界を救おう!~

 私は授業で教科書を使わない(教科書というものに対して、潜在的不信感がある)ため、毎度パワーポイント24ページのレジュメを印刷し、学生に配布するという、親切な教員で通っている。


 ただ、受講者数=出席者数ではないので、悲しいことに、印刷した資料の何十部かはシュレッダー行きとなる命運を持つ。


 昨日、今季の講義も終了し、まとめてシュレッダーをかけた。

 裁断されたペーパーはむろん、リサイクルに回されるのだけれど、やはりちょっと空しい感じがする。


 そこで…

 ①カットした紙をピンク色に染められる

 ②花びら状にカットされる

 …といったシュレッダーを製造して欲しいなあ。


 用途は「卒業式」や「入学式」など。

 歓迎会や誕生会なんかにも使えそうだ。


 シュレッダーのヘビーユーザーからの提案でした。 

⑦「らうたし」その3


「らうたし」の今日的な意味とは…「かわいい」ということでしょう。


川口盛之助氏の「オタクで女の子な国のモノづくり」では、
美女という存在を以下の4つの類型で分類します。
・大人っぽさ×男性的=ゲルマン風マッチョ(グレタ・ガルボ)
・大人っぽさ×女性的=ラテン系エレガント(ソフィア・ローレン)
・子供っぽさ×男性的=アメリカ風グラマラス(マリリン・モンロー)
・子供っぽさ×女性的=日本風カワイイ(浜崎あゆみ)


これから世界を席捲するのは、おそらくは「日本風カワイイ」なんでしょう。
よって、レディ・ガガよりも、きゃりーぱみゅぱみゅの方が「強い」ということになります。


いま、この「カワイイ」という感性のあり方が、海外にも浸透しつつあるようです。
「Cool JAPAN」とはいうものの…海外でウケているのは「Cute Japan」だったりもします。


ポケモンやハローキティなどのキャラクターが売れ、
「たまごっち」や「バウリンガル」はイグノーベル賞を受賞し、
秋葉原や原宿には外国人観光客で賑わい、
ファッションやアクセサリも「東京カワイイ」スタイルが注目されています。
J-popや日本の菓子、日本の文具など、これまであまりグローバルでなかった日本文化も、
おそらくこれから注目の「カワイイ」対象となってくるかも知れません。


らうたげなるプロダクトデザインにも注目です。
昨年、脳波で動く「ネコミミ」という商品がヒットしましたが、
この商品には、大島弓子「綿の国星」とか、最近の腐女子系キャラとか、
そういう「らうたし」の感性が原点があるようです。
ホンダに「ピアンタ」という耕運機があります。
中でも緑色のバージョンは、SDガンダムのザクみたいで、カワイイです。


SDガンダムといえば最近、従来のキャラクターを2~3頭身にしたデフォルメキャラが台頭しています。
「ワンピース」や「戦国無双」など、オリジナルとは異なるキュートな世界観が魅力的です。


「ブランド」にも、これからは「らうたげ」なるものが求められてきます。
「ビックロ」のロゴマークなんかは、そのあたりに来ているような気がします。


ブランドを、企業理念とか環境保護とかコンプライアンスとか、
そういうマジメなことだけを語るための堅苦しい方法論にしてしまったのは、
90年代の(優等生的)マーケティングに責任があります。
しかしそんなブランドでは、息苦しくて仕方ないわけです。社員も消費者も…。

どうでしょう、お宅の会社は息苦しくないですか?


マーケティングコミュニケーションにおいても、顧客の目線を下げるブランディング
…ユーモア、意外性、自虐、卑俗化、虚実混淆などの要素が求められてきています。
「ゆるキャラ」も、ブランドの敷居を下げる存在として不可欠です。


「欠点がない立派な美しいブランド」ではなく、
「自分が世話しないとダメになってしまうほど、弱くてしょーもないブランド」こそがいい。
…そんな時代になるかも知れません。

⑦「らうたし」その2


マンチェスター・ユナイテッドに所属する香川真司選手は、
ボールコントロール、俊敏性、運動量などにおいて非常に優れたストライカーです。
しかし彼の一番の強みは、体重63kgという軽量さにあるとも言われています。
つまり、彼がゴール前に飛び込んだときに、相手チームが強い当たりのディフェンスをすると
香川はすぐに転倒し、ペナルティキックを奪われてしまうのです。
本来であればフィジカル面で弱いはずの側面が、逆に強さに転化している例ですね。
「これぞ、ニッポン」といえる生き方なのかも知れません。


「らうたし」は守ってあけだいほど可愛らしい、というだけでなく、
神秘的ともいえる「弱さの強さ」があるということを述べました。


1980年代以降の日本は「少女が世界を救う国」に転換しました。
「風の国のナウシカ」に始まり、
「トップをねらえ」のタカヤ・ノリコ、
「サクラ大戦」の帝国華撃団、
「美少女戦士セーラームーン」、
「戦姫絶唱シンフォギア」の立花 響、
「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイ、
「魔法少女まどか☆マギカ」
…などをみる限り、いまや強い相手に立ち向かっていけるのは、
少女たちの、可憐ではかなくも、神秘的な力だけです。


最近では美少女系アニメの「あの顔」がすっかり浸透し、
若い男たちも草食系となり、テレビには「おねえ」たちばかりが登場します。
女々しさが非難される時代ではなくなりつつあるのです。


強い経済大国ではない別の道を志向する気持ちが、
ソーシャルインサイトとして顕れているのかも知れません。


「らうたき」国、「らうたき」社会の中でのマーケティングのあり方とは、
果たしてどのようなものでしょうか?
「市場シェア」とか「ターゲット」とか「戦略」とか…
たぶんそういう発想ではないんでしょうね。

⑦「らうたし」その1


「らうたし」という古語があります。
辞書を引く限り、
「かわいらしい。いとおしい。いじらしい。かれんだ。何かと世話して、いたわってやりたい」
と出てきます。


「うつくし(美し)」が「欠点がない立派な可愛らしさ」なのに対し、
「らうたし」は「欠点だらけで放っておけない」雰囲気があるという意味です。


「をかしげなるちごの、かいつきて寝たる、いとらうたし」などのように、
源氏物語や枕草子にも「らうたし」は登場するので、
高校時代の古典で習った人もいるかもしれません。


つまりは、
「自分が世話しないとダメになってしまうほど、弱くてしょーもない存在」
を「らうたし」と呼んでいるわけです。
稚児やペットなどを対象に使われる表現であったはずです。


ただし日本にはどういうわけか、
護法童子、一寸法師、お地蔵さん、座敷ワラシ、ビリケンさんなど、
聖性を帯びた幼形の表徴が数多く存在しています。
「はなたれこぞうさま」という面白い昔話がありますが、これもまた山の神の使いでした。


むしろ、不完全な存在にこそ、不思議な力が宿っているという考え方が
日本人の精神の根底にあるような気がします。


これを「幼形成熟」(neoteny)という概念で説明する人もいます。
(鎌田東二氏が語る「翁童」というのもそれに通じます)
韓流アイドルユニットと「AKB48」との違いは、
前者が完全無欠(うつくし)を志向するのに対して、
AKBは幼児性・未熟性(らうたし)を残したままでいることにある、
という指摘もあります。


どちらが最終的に生き残るかと考えると、
…恐らくAKBのほうに軍配が上がるのではないか、という感じがします。


こうした弱さ、はかなさ、脆さ、傷つきやすさ…を、松岡正剛氏は「フラジャイル」と呼び、
「ときに深すぎるほど大胆で、とびきり過敏な超越をあらわす」
と述べています(「フラジャイル」筑摩書房)。
どういうことなのでしょうか?

⑥「見立て」その3


日本のアニメやマンガは大きな経済効果を秘めているといわれています。
しかしその経済効果の及ぶ範囲を、DVDやキャラクターグッズの販売にとどめているのでは、
いささか寂しい話と言わざるをえません。

虚構(物語)の力で、現実世界を豊かにする方法はいくつもあります。
そうした「見立て戦略」の起点としてコンテンツを捉えてみるべきです。


アニメの聖地巡礼(コンテンツツーリズム、とも言われます)が、地域活性化に一役買っています。
「らき☆すた」の舞台となった埼玉県鷲宮町では、
地元の商工会メンバーたちがアニメを核とした地域おこしを仕掛け、
その経済効果は、1億円を超したともいわれています。
むろん、その土地を訪れたところで、アニメの主人公たちに会えるわけではありません。
虚構と現実が交差する場所を楽しんでいるわけです。


2010年の暮れ、「伊達直人」を名乗る人物から

群馬県中央児童相談所へランドセル10個が送られてきました。
この話が新聞報道などを通じて広まると、
静岡県の「伊達直人の妹」「伊達直子」や、兵庫県では「矢吹丈」、和歌山県では「ルパン三世」、
愛知県では「星飛雄馬」を名乗る人物がランドセルや現金などを寄贈、
こうしてタイガーマスク運動は、あっという間に全国47すべての都道府県へと広がります。
しかし、仮に最初に寄付を行った人が「伊達直人」と記名しなかったら、
こうした広がりには至らなかったはずです。
「タイガーマスク」という虚構を共有する人の間で連鎖反応が生じたわけです。


商品開発にも、虚構の力は大きく働いています。

ホンダのアシモは「鉄腕アトムをつくろう」という掛け声からスタートしたといわれています。
大友克洋の「AKIRA」に登場する"金田バイク"を本当に製作してしまった手嶋真志さんという人もいます。
メディアアーティストの八谷和彦氏らは「風の谷のナウシカ」が操る

一人乗りの飛行機「メーヴェ」を具現化させるプロジェクトを進行中です。
昨年、グーグルが「ドラえもん」のひみつ道具の現実化状況をテーマとしたキャンペーンを実施しました。
GENコーポレーションの一人乗りヘリコプター(タケコプター)や、
玉川大学工学部の椎尾一郎助教授(当時)による「空中くれよん」などは、
ひみつ道具の現実化された例といわれていますね。
また、日立建機のブルドーザーASTACOも、

「機動戦士ガンダム」をモデルにしたという噂(開発者は否定)がありました。


存在しないものを存在することにして思考・行動する。
あるいは、存在しないものを存在させる方法を考える。
見立てとは、すなわち虚構と現実とを行き来する「インタースペース」のデザインなのです。