時は幕末。
将軍継嗣問題を巡って南紀派と一橋派が対立し、安政の大獄やら桜田門外の変やらといった血生臭い事件に進展していった経緯はよく知られている。
最終的には、水戸藩出身の一橋慶喜が15代将軍の座に就くことになる。
実はその際、慶喜の父・水戸斉昭が画策し、水戸の徳川家は「天下の副将軍」であることを世の中に知らしめようと採った策が、「水戸黄門漫遊記」の創作と普及であった、という説がある。
いわば、水戸家のプロモーションの一環として「水戸藩主・徳川光圀が全国を旅して悪者をやっつける」という講談話をでっち上げたというわけだ。
今でいうなら、プロダクト・プレースメント・タイアップの映画製作に乗り出した、といったところだろうか。
ただし、国史を編纂した2代藩主・水戸光圀公が「名君」であることは庶民にも知れ渡っていたいたわけで、そのベーシックな評価が荒唐無稽なフィクションを受容する下地をなしたようだ。
北条時頼伝説や、李氏朝鮮の暗行御史などが元ネタであったが、「水戸藩は代々名君を生み出す家柄であり、いざとなれば江戸の将軍家に代わって天下を治めることができる」という世の風評は、15代将軍・慶喜を生み出すドライバーとなった。
アメリカのバラク・オバマ大統領が当選した背景にも、やはりフィクションの存在があった、という指摘もある。
実はオバマが当選する以前に、映画『ディープ・インパクト』でのモーガン・フリーマンや、テレビドラマ『24』でのデニス・ヘイスバートらが、テロや危機に立ち向かう黒人大統領を演じて人気を博している。
これらの映画やドラマで登場した「知的で奥行きがあり、強いリーダーシップを持つ黒人大統領」のイメージが、そのままオバマ氏に投影されたとみられている。
アメリカ人の無意識が生み出した新しいヒーローの表象が「黒人大統領」であり、それを現実の世界で実現させたのがオバマ氏だったというわけだ。
「こういう人がいたらいいな」というソーシャルインサイトがある。
13代将軍・家定は、病弱で統治能力に乏しかった。諸外国からの圧力と国内の混乱を収めてくれる名君が待望されていた。
一方の米国も、テロやサブプライムローン問題が表面化した金融危機、財政問題で、国内は不安に苛まれていた。
そういう中で、強い指導者が庶民に望まれたという背景はあると思う。
しかしその気持ちを先取りするのが、映画やドラマなどのコンテンツである。
それで思い出した。
「そうだそうだ、ハリウッド映画とかの真似すれば人気上がるんじゃね?」
…と画策した国家リーダーがひとりいたっけ。
ロシアのプーチン氏である。
虎や巨大魚と格闘し、深海に潜り、ピアノを弾きこなし、F1カーを乗り回す。
「今さら」感もないこともないが、次は何をやらかすのか、全世界が注目しているぜっ!
かつての「サーヴァント・チキン」(バーガーキングのWebサイト)のような「プーチンに、これをやらそう」アプリを、どなたかつくってくれないかな?
「ミルコ・クロコップと戦う」
「笑点の大切りに出て座布団10枚獲得」
「地球に迫ってくる巨大彗星を破壊に行く」 …なんてね。
肖像権問題もあるけど、意外とプーチンは乗り気かも知れないって(笑)。
仕事の基本は「人気取り」という意味では、日本の政治家も似たりよったりか。
