いまさら書くまでもないのだけれども、手塚治虫はその後のさまざまなマンガ作品に影響を与えてきた。
コマ割りなどの表現方法やキャラクターはもちろんのこと、ストーリーそのものを参考にしているとおぼしき作品も多い。
実際、「鉄腕アトム」「ブラックジャック」については、他の漫画家がリスペクトまたはパスティーシュ作を描いているのはご承知の通りである。
マイナー作である「魔人ガロン」にしても、永井豪が続編ともいえる作品を描いている。
以下のストーリー、いずれもどこかで聞いたことのある漫画かと思うのだが、すべて手塚のオリジナルである。
●いじめられっ子が、スイッチが入ると悪魔的な力を発揮する
→「三つ目がとおる」
●身体の一部を失った主人公が、元の体に戻るために戦いの旅に出る
→「どろろ」
●江戸末期の医師が、自分の意志に反して幕末の動乱に巻き込まれながらも活躍する
→「陽だまりの樹」
●古代ローマ人が何と日本にやってきていた!
→「鬼丸大将」
●主人公が世界を征服するために、悪魔と契約して強大な力を持つ
→「ネオ・ファウスト」
●拾ってきたロボットが何でもつくってくれて主人公の願いをかなえてくれる
→「ロップくん」
●一人のスーパーヒーローではなく、チームで悪に立ち向かう
→「ナンバー7」
ついでにいうと、
●父を失った子ライオンがジャングルの王になるために成長していく
→「ジャングル大帝」
もちろん手塚自身が、ゲーテやディズニー作品の換骨奪胎でストーリーを生み出したことを言明しているわけだし、これらをして「手塚が偉くて、他の追従者はモノマネにすぎない」などと野暮な話をするつもりはない。
大事なのは「これ、何かあるぞ」と感じた作品にインスパイアされて、そこから自分のオリジナリティに持っていく能力なのだろう。
というわけで、今年の冬休みの課題図書、読み終わりました。