拡大家族の物語 | 不況になると口紅が売れる

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NTTドコモが「アンサーハウス」なる広告キャンペーンをスタートしている。

http://answer.nttdocomo.co.jp/top.html


山崎努が経営するアンサーハウスに、「答え」を捜し求める4人の人たちが集まり、ここで何か(自分にぴったりの携帯電話)を見出すといったストーリー、なのであろう。

この場合の「答え(アンサー)」とは、「私らしさ」という言葉に置き換えることも可能である。


アンサーハウスの全貌はまだはっきりとしていないが、どうやらドラマ「ラスト・フレンズ」などでも舞台となったシェアハウスの雰囲気が濃厚である。

ソフトバンクが、現代の「家族の物語」をしつこく追求するのに対して、ドコモはここにきて一気に「拡大家族」をテーマにしはじめたというわけだ。

物語の推移は見守らねばならないが、4人の成長のためには、登場人物間の相互作用が必要なはずである。

企業(ドコモ)のメタファーである山崎支配人から「人生」を教えられるだけであれば、本当につまらないCMに終わるだろう。


「自分探し」と「拡大家族」は、今日の社会学の一番ホットな話題でもある。

そして「自分探し」と「拡大家族」との関係を一番近くで支えるのは、実は携帯電話の存在なのである。

そこに(恐らく敏感に)気づいて、この広告キャンペーンを提案したクリエイティブディレクターの力量には感銘する。


この広告が、真の話題作となるように、ひとつ提案がある。

アンサーハウスを旅立つ4人は、シャバに出て「新しい自分らしさ」を発揮することになるんだろうが、その結果が「恋の成就」とか「ビジネスの成功」とかいう、単純で卑俗な問題解決ではない方向に持っていってもらいたい、ということだ。

つまり、以前悩んでいた「問題」そのものが違うんだ、という気づきが芽生えないと、本当の意味の「成長」にはならないのだ。

ドコモのいう「アンサー」が、かつてお経のように唱えられた、顧客ニーズ対応の「ソリューション」レベルではないことを、そのような形で示していただきたいのだよ。


それと、欲を言わせてもらえば「第五の部屋」を設けてもらいたかった。

つまり「ドコモ以外を選択する人の部屋」である。

そして、ドコモ以外の人もまた、同じような「答え」を見つけていく、というストーリーにする。

そこまでやれたら(企業体質としては全く無理だろうが)、すごい広告キャンペーンとなり、恐らく後世に語り継がれていったに違いない。