「商品」だけでなく、「行政サービス」「デザイン」「建築」「社会システム」「法律」など、世の中で形になって現れるもの(表象)には、何かしら消費者ニーズが反映されている、と考えられる(表象によっては「消費者」という言葉が適切でない場合もあるが…)。
そのニーズが真っ先に、敏感に反映されるのが、映画・ドラマ・アニメ・小説などの「物語型コンテンツ」であり、そこで採り上げられたテーマはトレンドの最先端ともいえる。これらを分析していくと、文化の「これから」が予想されるし、他の分野、特に広告などの商業コンテンツや、商品開発の参考になるという考え方もできるだろう。いわゆる「カルチャースタディーズ」の、ビジネスへの応用ということである。
これは、ファッション誌の特集テーマを、商品開発やプロモーションに活用しようという考え方や、敏腕プロデューサーや著名クリエーターにインタビューして、今後のトレンドを予測しようという考え方とも通じる。通常のマーケッターは、どうしても競合他社の動向や、同じ業界のトップ企業の戦略だけを意識しがちだが、「文化」というもっと広い目で成功事例をつかまえよう、ということだ。
ただし、いたずらにベストセラーや高視聴率番組を追えば、文化的状況が見えてくるわけではない。かといって、普通のマーケッターにとって、先端的だがマイナーな作品をチェックするだけの余裕はないだろう。そこで一考だが、ヒット作品の「訴求テーマ」を洗い出し、共通するテーマレベルでの共通項を考察する、というトレンド分析手法は有効かも知れない。
記号論では、文化記号を「意味するもの=表象=シニフィアン」と「意味されるもの=深層=シニフィエ」とに分けて捉えるが、シニフィアンレベルでなく、シニフィエレベルでの共通項を探り当てよう、ということだ。これは当然といえば当然のような話だが、世の中、シニフィアンレベルの人がやたらに多いので、なかなか理解されなかったりする。特に「敏腕プロデューサー」「著名クリエーター」といった人たちである。「ファンタジーがいける」とか「探偵モノに取り組む」とかいう表層的な言い方をする。本人の頭の中では、それらの深層的な意味を踏まえての発言なのだろうが、聞く側にとっては参考にならないことも多い。
よってこうした方法は近道があるわけではなく、自らのアンテナで、自分なりに分析するほかない。