小説の続き書きました。遠いデザイン3-2 | 産廃診断書専門の中小企業診断士

産廃診断書専門の中小企業診断士

ふじのくにコンサルティング® 杉本剛敏 中小企業診断士事務所の杉本です。私はコピーライターとしてネーミングやコピーを作る一方で、中小企業診断士として企業のマーケティングを支援。2021年、2016年に静岡新聞広告賞受賞。これまでに提案した企画書は500を超えます。

2001年 冬

 

 マンションの一室をタバコの煙で満たし、明け方まで煌々と光を発している薄汚れた窓。東京帰りといっても、彼が勤めていたのは東京には蟻の数ほどもある広告プロダクションの細片にすぎなかった。うちもやっとライターを雇うまでになったか。社長からそう告げられた初出勤の日から、大学卒業後、ライターの養成講座に通いはしたものの実務経験ゼロの彼の机に、それまで外注に出していたコピーの仕事が全部回ってきた。

 仕事が重なると、集中力にすがろうと、カッターナイフやスプレー糊やコピー機の音の絶えないデザイナーのいる仕事部屋から抜け出して、使われていないウオークインクローゼットの中で身を縮めながら、棚板を机代わりにコピーを書いたこともあった。

 社員は家族みたいなもの、みんなが個性あるプレイヤーになって欲しいから「アドセッション」という社名を付けたんだと、定食屋で昼からビールを飲んでいた社長の赤ら顔が突然よみがえってきて、七瀬はため息をつく。

 意識を正すように前を見ると、廊下の片側の壁にフレーム枠の写真が架かっているのに気づいた。それはこのホテルで挙式したカップルたちのウエディングフォトで、かなりの額が廊下の奥へと続いていた。新チャペルが完成する前はこの館内にある式場が使われていたこともあって、そこへのアプローチとなっていた廊下をホテル側がフォトギャラリーにでも仕立てていたのだろう。

 人前結婚式での指輪の交換、青空に舞うフラワーシャワー、披露宴でのケーキカット・・・・・・。写真に映るカップルたちの顏は、これまでに起こった様々な出来事を封印して、どの笑顔も一点の曇りも見られない。

 自分の時はどうだったんだろう・・・・・・。そう思ったとき、ふいに後ろから女の声がした。

 

遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

15年前の2001年が舞台の古いお話です。