小説の続き書きました。遠いデザイン19-1 | 産廃診断書専門の中小企業診断士

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ふじのくにコンサルティング® 杉本剛敏 中小企業診断士事務所の杉本です。私はコピーライターとしてネーミングやコピーを作る一方で、中小企業診断士として企業のマーケティングを支援。2021年、2016年に静岡新聞広告賞受賞。これまでに提案した企画書は500を超えます。

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遠いデザイン 19-1

 

2001年 夏

 

 壇上に上がったモデルの顔にステンドグラスの光彩が落ちている。先にカット撮りを済ませた黒人女が列席者側の長椅子に肉付きのいい尻を広げた。女はこの施設専属のゴスペルシンガーで、好奇心に見開かれた目をモデルや撮影スタッフたちへと走らせている。

 黒い木の梁を巡らせた天井のシャンデリアが次々とオレンジ色に発光すると、ファインダーを覗く小田島には、壇上のモデルが古い蝋人形のように思えて、この建物の原型となった十七世紀の英国教会にいるような錯覚におちいる。

七瀬があのアパートのあった高台で雨上がりの空を仰ぎ見ていた頃、郊外に完成したばかりのゲストハウスで、小田嶋たちが結婚情報誌の撮影にかかっていた。モデルは今年の冬、東部温泉ホテルの撮影で使った短大生だったが、小田嶋は女の印象があの時と全く違うように見えた。

 肩まであった髪が短く切られていることに驚きながらも、小田嶋は女とレストランで交わした奇妙な会話を思い返す。

こいつには…たしか、双子の姉がいて、その片割れを幼い頃に亡くしたようなことを、言っていたっけ……。 

スタイリストがモデルの足元にひざまずいて、ウエディングドレスのトレーンをバージンロードの後方へと流す。モデルだけを残してスタッフたちが小田嶋の後ろに下がる。撮影がはじまった。十七世紀の製造印が焼き付けられたアンティークなパイプオルガン、欧州の古書店で見つけてきたような台上の黄ばんだ聖書、十字架に磔られた真鍮のキリスト像・・・・・・。ポーズを変えてシャッターを切るたびに、モデルの女は、この疑似チャペル空間に溶け込んでいくようにも、この空間をつくり変えていくようにも小田嶋には見えた。

 あの時もそうだった、と指先が震える。施設の雰囲気こそ違うが、あの温泉ホテルの撮影の時にも、こいつはまったく自然に目の前のシーンと重なりあった。それがオレに夢中でシャッターを切らせたんだ。

 モデルの顔が一瞬、途方もなく幼いものに写って、小田島は目を擦る。女の微笑みが見る見るうちに幼女の呻きに歪んでいく。

 ゴスペルシンガーはフッと声をあげた。この場面に何かが浮かび出ようとする気配を感じたからだ。彼女は目を閉じた。魂が震え始めてそれが霊歌となって口からこぼれた。歌声は徐々に音量を増していき、やがてこの空間全体に響き渡っていった。

 

 

遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

 

14年前の2001年が舞台。

中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。

この歳になると。そんなことしか書けませんので…。

地域の産業支援を本格的にやりだしてから、

コピーを前みたいに書けなくなったので、

その手慰みのつもりで書いています。