遠いデザイン17-6
2001年 夏
揃いのハッピを着てコーナーごとに立つJAの職員は、いずれも来場者の対応に追われていたが、そこに亮子の姿はなかった。
ほっとする一方で、嫉妬心が芽生えてくる。今日の休日、デートしているかもしれない亮子の姿、その隣で細い肩に手をまわす男の姿が浮かんでくるが、その顔は相変わらず不鮮明なままだ。
いきなり背中を突つかれて、七瀬は飛び上がりそうになる。振り返れば、課長が出入口の方に指を曲げて、これじゃあ、外の暑さと大差ないだろう、と部下にこぼしている。昼近くになって団体客が増えはじめた館内は、天井が高いためか冷房の効きが悪く汗ばむくらいだった。七瀬も急に息苦しさを覚え、二人の後について出入口へ向かう。途中、三谷に背中を押された部下が入場者の一人とぶつかってさかんに頭を下げ始める。
三人は中央広場に出て木陰のベンチに腰を落ち着けた。地場産品とどうひっかけたつもりなのか、先に見える仮設ステージ上ではカウボーイ姿の男たちがカントリー&ウエスタンを熱唱していた。広場の両サイドには、ファンシーな店構えのポップコーン売り場、ホットドックの大型模型を掲げたスナック店、赤い可愛い消防車風のクレープショップなどが並び、どこかのテーマパークの一角を思わせる。店の周囲ではハトたちが人の足元を縫って、食べ物カスをついばみながら歩き回っていた。
そのうちに、遠方に浮かぶ缶ビール型の気球が目に入って、三人の足は自ずとそこに引き寄せられる。陽光の下、燃え盛る緑の枝葉がアスファルトに複雑な影を落としているその一画は、施設案内のパンフレットには「グリーンスクエア」と書かれていたが、今はビールメーカーの六角形の大型テントに敷地をそっくり奪われた格好だ。
前庭にもテント内と同じ白い塩ビ製の椅子と円卓が並べられていて、ローラースケートを履いた女の子たちが、陽光に銀色のコスチュームとトレイを光らせながらテーブルの間を滑り抜けている。
三人がテーブルに着くと、すぐにオーダーシートを手にしたウエイトレスが走ってきて、ローラーの乾いた回転音を止める。間近で見ると、宇宙服を思わせるウエイトレスの胸元には文庫本を二つ並べたくらいの大きさの薄型の液晶板が組み込まれていて、このビールメーカーの最新TVCMが音声付きでリピートされている。七瀬も広告雑誌で目にしたことがあるウェアラブルビジョンだった。
遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。
14年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。