小説の続き書きました。遠いデザイン17-5 | 産廃診断書専門の中小企業診断士

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ふじのくにコンサルティング® 杉本剛敏 中小企業診断士事務所の杉本です。私はコピーライターとしてネーミングやコピーを作る一方で、中小企業診断士として企業のマーケティングを支援。2021年、2016年に静岡新聞広告賞受賞。これまでに提案した企画書は500を超えます。

遠いデザイン17-5

 

2001年 夏

 

 中央広場を挟んで同型の展示館が並んでいてることから名づけられたツインサイト。今回のフェアでは南館は農畜産ゾーンに、北館は水産ゾーンに当てられ、地場産品でもないのに大手食品メーカーも協賛という名目で何社か出展していた。

 しだいに膨らみはじめた入場者の波に押されるように、三人はJAブースがある南館へと足を踏み入れた。館内は柱のないフラットな空間に迷路のような複雑さでブースが組まれていて、三人は西部エリアの表示を中空プレートの中にさがしながら奥へと進んだ。

「高濃度水気耕栽培」「有機無農薬スローフード」「ビタミン強化ベジタブル」・・・・・・。そのままトレンド雑誌の食品特集に使えそうなテーマを掲げたブースの前では、コンパニオンたちのすらりと伸びた足が林立していて、入場者に秋波を送っている。

「亮子ちゃんの方が、ずっとカワイイのにね」

 背中から聞こえた三谷のにやけ声を振り払うように七瀬は足を早める。入場者のあいだを縫うように進んでいくうちに、遠方から見慣れたシンボルマークが目に飛びこんできた。

 筆を横に払って描いた緑と茶の二本線、その上に浮かぶオレンジの円。制作した東京のデザイナーから大地と農作物と太陽の象徴だと聞かされていたブランド産品のシンボルマークが、大きな看板となってJAブースの正面を飾っていた。

 ブース内は、中央がブランド産品の展示コーナーとなっていて、霧吹きで水分補給した果実や野菜が説明パネルを背に並んでいる。トラベルチケットの抽選が行われている入口横にはすでに人の列ができていて、手回しの抽選器がカラカラと小さな玉を吐き出していた。奥にはオンラインショッピングの体験コーナーが設けられ、会場で集めた景品を床に放り出して、子供たちがコンピュータのマウスを動かしていた。

 三谷は、少し先のコーヒーラウンジで談笑しているJAの役員たちを目ざとく見つけだし、愛想笑いを浮かべつつそちらに走る。七瀬と部下の男も慌てて後について義理の顔見せを果たす。本日の目的を前に、ローからセカンドへギアが切り替わったように勢いづく三谷の声が耳障りで、七瀬は挨拶を済ませると早々にその場を離れた。

 

 

 

遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

 

14年前の2001年が舞台。

中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。

この歳になると。そんなことしか書けませんので…。

地域の産業支援を本格的にやりだしてから、

コピーを前みたいに書けなくなったので、

その手慰みのつもりで書いています。