遠いデザイン17-4
2001年 夏
七瀬は駅前のロータリーに立ち、途切れることなく進入してくる送迎車の流れをぼんやりと眺めていた。今日の日曜から三日間、市内のイベント会場で開催される地場産品フェア。JAの上役が顔を揃える初日だけは顔を見せようぜと、休日返上で三谷に駆り出されたのだ。同じく頭数に加えられた部下の車が三谷宅を回ってから、このロータリーで七瀬を拾うことになっていた。
このフェアに参加しているかもしれない亮子のことを思うと、七瀬の心は晴れなかった。結局、新しい仕事が発生してから、彼女と会ったのは二回きりだったが、最後に目にした時の印象がいまだに頭から離れない。笑い声が響く打ち合わせブースの中で一人黙ってうつむいていたあの姿が……。
しつこいクラクションに反射的に顔が向く。なかなか進まない車列の隙間に通信社の車が強引に割り込もうとしていた。落としたサイドガラスの助手席から三谷が手招きしているのが見えて、七瀬は慌てて走り出す。後部座席のドアノブに手をかけた時、フェアの広告を車体にまとったバスが背後を通過し、その先の特設乗り場へ車体を横付けた。
「あのド派手なバス、会場直通のシャトル便だよ。ほら、フェアの目的は、首都圏のバイヤーたちとの商談だろ。スーパーや外食チェーン、フランチャイズの本部の連中なんかとの。そいつらを一人でも多くつかまえたいってわけさ」
三谷はそう言うと、眠気を払うように両頬を叩いて、陽気な営業マンの顔支度にかかる。
三谷の話では、春先から販売を開始したブランド産品は好調な滑り出しをみせているらしい。
初回、県内にまいた五万部のチラシ、顧客リストをもとに発送したDMからの注文、それにネットショップを加えた売り上げは早くも一千万円を突破したとのことだ。次ぎに狙うのは、当然、首都圏マーケットということになるが、そのための試金石となるのがこのフェアだった。
自走式のタワー駐車場は道路からすでに車列ができていて、三人がイベント会場の正面ゲートをくぐった時には、中央広場ではオープニングセレモニーが始まっていた。恒例の県知事や市長、主催団体代表者らの挨拶に続いて、何発かの花火が打ち上げられた。舞い上がった色とりどりの風船が青空に吸い込まれていくのを七瀬は足を止めて目で追った。
遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。
14年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。