遠いデザイン15-4
2001年 春
ここまで言って、もし妻子がいてもかまわない、つきあってもいいと、言われでもしたらどうしよう。
『でも、キミは若いし、その若さに見合う相手とつき合った方がいい。その方が絶対幸せになれるはずだ。オレはもう充分なんだ。キミを好きになったこと。そして、その気持ちを、今夜、伝えられたことだけで・・・』
どんなに強い愛情で結ばれた二人でも、ひとたび夫婦となってしまえば、その先にあるのは衝突とその憎しみを忘れる時間の連続でしかない。純粋な分だけ、亮子は自分の気持ちをストレートに相手にぶつけてきそうな女だ。本来は若い男よりも、まあ、人生経験のあるオレみたいな中年の方が、それを受け止めるクッションの柔軟性は勝るといえるが、もう、そんなことはどうでもいい。何があっても、彼女との結婚だけは避けなければならない。夢と現実、その両方を失わないためにも。
そして、最後につけくわえる言葉。
『でも、もし、これから五年後、十年後、いや二十年後でもかまわない。何か困ったことがあったら、迷わず電話をください。その時は力になります。自分ができる全てをもって』
技巧や洗練とはほど遠い、ただ単純なだけのstoryだったが、不器用で遊びというものを知らない七瀬にはこれがせいいっぱいだった。そして、自分がこれから打ち建てようとする亮子との恋愛の記念碑に、電話を待つ楽しみ、という将来にわたるオマケが付いたことに満足した。
まてよ、もしかしたら彼女はまだ処女で、オレとつきあう気はないものの、それを捨てる相手としてシグナルを送ってよこしてきた、という可能性もゼロではない。つまり生理的な衝動としてだ。
もし、そうだとしたら……それは、さらに付加価値が高くなる。まさにオレと亮子との記念碑に、希少な刻印をつけ加えることができる。そう考えると七瀬は戦慄した。
遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。
14年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。