遠いデザイン13-3
2001年 春
ここ一週間は仕事が薄く、今抱えているのは港湾物流会社の会社案内だけだった。マンションの仕事部屋に入ると、ここ数日、デスクのスタンドホルダーに挟んだままのその面付け紙に目が行く。取材テープを書き起こしたきり、本文にはまだ何も手をつけていない。今月の少ない売上が頭をかすめ、七瀬は脱ぎかけたジャケットにまた袖を通した。
駅前の大型書店は開店直後ということもあって、店内では棚の補充をする店員ばかりが目についた。七瀬はビジネス書のフロアに行き、棚入れする本が積まれた台車を避けながら、業務案内の原稿づくりに役立ちそうな書籍を探して歩く。
国際貿易、外国為替、通関業務、ロジスティックと、目を引いたタイトルを数冊棚から引き抜いてレジへ向かう。事務所に戻り走り読みをはじめたが、最後の一冊を閉じた時にはすでに日が傾いていた。
コピーを書くために必要な知識や情報は、彼にインスピレーションを与える記号の集まりに過ぎなかった。一つの仕事のために集めた知識や情報は次ぎの仕事にかかり出すと、脳はその負担を軽減する防御装置が働くのかそれらをすべて消し去ってしまう。
それでも今、コンピュータの前でじっと腕組みをしたまま意識を遊ばせていると、さっきまで飛ばし見ていた文字や写真がちらつき始めて、一つのストーリーらしきものがぼんやりとでき上がってくる。消えてしまったことすらわからないその曖昧な端っこを捕まえようと、七瀬は椅子から身を起こしキーボードを引き寄せた。
まずは、企業ビジョンからだ。
電磁波の乱れのためか、微弱に震えだしたディスプレイに生のテキストが次々と生まれ出てコンピュータが二度フリーズした。
遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。
13年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。