遠いデザイン12-3
2001年 春
底のペンキが所々剥げかかっているこんなぼろプールでも、定期的に通いさえすれば肉体の衰えに歯止めがかけられるかもしれない。いやそれどころか、再びこのからだに筋肉の筋を浮かび上がらせることもできなくはない。そう思ったとたんに七瀬は亮子に向かって泳いでいるような気分になってきた。
しかし、彼女がどこに立っているのか、その距離感が全くつかめない。そのうちにその距離が空間的なものでなくて、時間的な隔たりなんだと思えてきた。
たとえ、今、同じ空間にいたとしても、若い亮子を取り巻いている時間は自分の回りに流れている時間とは明らかに異質なものだろうろう。人が身を任せられるのは生まれ落ちた時に目の前にあった時間だけなんだ。そう思ったとたんにむせ返った息が、ひと塊の気泡となって水上に弾けた。
一時間ほどして水から上がった。全身に疲労感を引きずりつつも、普段、強制労働を強いられている頭の方はすっきりと癒されて、心体の妙なアンバランスさが快感になった。温水シャワーを浴びてから、腰にバスタオルを巻き付けてロッカーのカギを回していると、中からケイタイの呼び出し音がか細く聞こえてきた。
遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。
13年前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。