小説の続き書きました。遠いデザイン 5-3 | 産廃診断書専門の中小企業診断士

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ふじのくにコンサルティング® 杉本剛敏 中小企業診断士事務所の杉本です。私はコピーライターとしてネーミングやコピーを作る一方で、中小企業診断士として企業のマーケティングを支援。2021年、2016年に静岡新聞広告賞受賞。これまでに提案した企画書は500を超えます。


前回(5-2)の続き
 

 

 一人の男の声が投石となって、澄み切っていた七瀬の心に波紋が広がった。彼は亮子から目をそらした。

「問題は婦人部の連中の理解だよ。こう兼業が多いと、奥さん方の意見が強いからね。つまり、商品認定からもれた農家をどうするかってことだよ」

「もともと、ブランド化の話は、柑橘部さんの青年部の方から上がってきたんだろう」

 プロジェクトは終盤にきているというのに、また初期の問題が蒸し返される。青年連という言葉を耳にして、七瀬は以前、この仕事で取材した柑橘部の青年のことを思い出した。広い庭を望む縁側に並んで腰掛けながら、彼は栽培している品種の特長やら、無農薬の栽培法やら、食味期限やら、七瀬の質問にたどたどしく答えてくれたものだ。

 畑の一画に張られたビニールハウスにはサクランボの実が色づきはじめていて、農機具がしまわれた大きな納屋の周りを、まだ生まれて間もない仔犬が跳ね回っていた。陽光の下、容器の中の土の黒さとは対照的な白いプランターが眩しかった。

「よかったこと、悪かったこと、一年間育ててみて、初めていろんなことがわかるんです。からだ、動かせば、動かした分、次の年の肥やしになる。野菜も果物もみんな正直なものですよ」

 男はそういいながら、仔犬を膝の上に抱き上げてその背中を撫でた。鼻先に止まったテントウ虫に驚いて、仔犬は丸い目を細めて首を振った。日盛りの庭には温められた肥料の臭いが漂っていた。男は七瀬が帰る時、車のトランクを開けさせ、土が付いた野菜がいっぱい詰まった段ボール箱を入れてくれた。

 納屋の左手には露地栽培の白菜畑が広がっていて、霜降りの大きな蕾みのような葉の固まりが緑の色を深めながら彼方へと伸びていた。七瀬はハンドルに手を置いたまま、そんな午後の田園風景をしばらくぼんやりと眺めていた。

 


遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

 

10年ほど前の2001年が舞台。
中年男が若い女性に憧れる、よくあるテーマの小説。
この歳になると。そんなことしか書けませんので…。
地域の産業支援を本格的にやりだしてから、
コピーを前みたいに書けなくなったので、
その手慰みのつもりで書いています。