【書籍情報】
実用メカニズム事典 機構101選
岩本 太郎
出版社: 森北出版 (2020/2/14)
ISBN-13:  978-4627614710

【概要・コメント】
まずこのような貴重な書籍を執筆した著者に敬意を表したい。
様々な機構を,丁寧な図及び設計計算を添えて解説されている大変貴重な書籍である。
機構設計をこれから始めようとする人は,ぜひ一度目を通すと良いと思う。

この書籍が,たった4,000円で購入できると考えると,その執筆作業の苦労は全く報われないのではないかと心配してしまう。

様々な機構が掲載されていて大変勉強になると思う一方で,このような機構の事典は静的な書籍ではなく,Webサイトとしてまとめるべきではないかとも感じる。
機構の動きを初見で理解するには,動画を見るのが一番効率が良い。
設計パラメータによる動きの違いを見るためにはWebアプリでパラメータを入力してアニメーションが変化するようなコンテンツが望ましい。

この書籍が高い価値を有するのは間違いないが,その効果を最大化するためには,現状の書籍という形は最適ではない気がする。

このようなメカニズムを実際に作るためには,購入できる機械要素としてどのようなモノがあるのかも知識として保有する必要がある。
その意味では,ミスミが無償提供しているFA用メカニカル標準部品の"紙"カタログに最初から最後まで目を通すのは大変有効である。

オンラインカタログでも,キーワードを知っていればすべての機械要素の情報にアクセスできるのだが,初学者はそもそもキーワードを知らないので,まずは比較的容易に入手できる機械要素として,どのようなモノがあるのかを,紙カタログをペラペラとめくりながら,目を通すのがよかろう。

 

<以下余談>
昔はこのような機構の書籍をワクワクしながら読んでいたのだが,最近あまり感動が無くなってしまった。
様々な機構を設計した経験を積んでくると,自分の中にもある意味での成功体験が重なり,冒険をしなくなる。
無知は挑戦の活力であることを思い知らされる。

 

 

 

【書籍情報】
なぜAppleは強いのか
製品分解からわかる真の技術力-清水洋治
出版社: 技術評論社 (2023/9/27)
ISBN-13: 978-4297137434

【概要・コメント】
iPhone,iPad,Apple watch,mac bookなどApple製品を分解してその中身を紹介している書籍である。

その意味では,多くのレビューが記述しているように,この書籍タイトルには誇張や語弊がある。

本書の特徴は,Apple製品に使われている電子部品に特に注目し,そのメーカや型番,実装形態について丁寧に解説されている。
特に,Apple製のCPUやGPUについては,チップ内の構造も電子顕微鏡画像を用いて丁寧に説明されている。

以前,Air Podsを分解したときに非常に苦労したので,このような多様なApple製品を分解して,その特徴を紹介してくれる書籍は大変ありがたい。
その意味では,その意義をもっと力強くアピールした書籍タイトルにして欲しいものである。

一方で,書籍としてみると正直少し物足りない。

 

まず全体として読み応えがない。写真のすばらしさと比較して,解説記事が単調であり,あまりワクワク感がない。
また,Apple製品のすごさは電子部品そのものだけでなく,その実装方法にもあるはずなのだが,メカニカルな部分の工夫・巧みさについてはほとんど触れられないので,デバイスとしての完成度の高さが伝わってこない。

分解写真が大変美しいだけに,正直もったいないという感じが強い。

本書の中でいくつか感銘を受けた文章を参照しておく。

  • P.98 基本的に一番効率的なのは技術をコピー&ペーストしていくことです。
    →まさに半導体やコンピュータ科学的らしい考え方であると思う。なかなかメカ設計でコピペはうまくいかない。
  • P.243 & 244 半導体売上のランキング順位は、現在1位がSAMSUNG、2位はIntelです<中略>Appleのすごさは業界1位と2位抜きで製品化を実現していることにあります。
    →真に独自性の高いことをやろうと思うと単に大きな潮流に乗って,手に入りやすい部品を使うだけではなく,長いものに巻かれず,理想を追い求める姿が必要だということであろう。

 

 

 

【書籍情報】
店長がバカすぎて
早見和真
角川春樹事務所 (2019/7/13)
ISBN-13: 978-4758413398

【概要・コメント】
久しぶりに小説をジャケット買い&買いだめした。

最近、技術書ばかり読んでいたので嫌気が指していたので、並べく軽そうなタイトルの本を選んでみた。

小説のタイトルとしては、読者の心をしっかりとキャッチする優れたタイトルだと思う。
そして、その中身もタイトルに恥じない良いできだと思う。

但し、最近複数の伏線回収が当たり前になってきている小説において、ある意味1つの伏線のみで最後まで押し通した本書は、やや物足りないとの印象である。

ちゃんと起承転結があるので、物語としては優れているとは思うのだが、伏線が一本しかないので、そこに読者の注意が完全に向いてしまっているので、思わぬ形で伏線が回収されるという驚きはない。

書店員の日常を描くという意味での描画力も、主人公の愚痴が多く、疲れているときに読むには少し心がすさんでしまう。
同じような悩みを抱えている読者ならば、共感が生まれるのかもしれないが、自分にとっては「ちょっと愚痴が多すぎて、ツライな」という感想であった。

良い本ではあるとは思うが、名著かと言われると・・・
というのが最終的な感想となろう。