【書籍情報】
精密位置決め・送り系設計のための制御工学
松原厚
ISBN-13 : 978-4627919815
出版社 : 森北出版 (2008/9/3)

【概要・コメント】
工作機械を代表とする位置決め・送り系設計に関する書籍

とくに古典制御的な視点から解説をしており,古典制御を学んだ学生が,では古典制御は実際に何に役に立つのか,を実感するために読むと良いのではないだろうか。

またMATLAB/Simulinkを用いて,サンプルコードなども提供している点もすばらしい。

これらのコード提供によって,結局,古典制御の線形システムとして扱える部分と,非線形を取り扱わないといけない部分が明確になっており,基礎と応用のつながりを感じることができる。

一方,古典制御の教科書として,やや乱暴で,これ1冊で古典制御を学ぼうとするのは無理がある。

やはり,別の教科書で古典制御を(歯を食いしばって我慢して)勉強してから,この書籍を読むと良いであろう。

 

 

 

【書籍情報】
How to use graphic design to sell things, explain things, make things look better, make people laugh, make people cry, and (every once in a while) change the world
Michael Bierut
出版社: Thames & Hudson Ltd (2015/9/28)
ISBN-13: 978-0500518267

【概要・コメント】
世界的に有名なグラフィックデザイン会社Pentagramのパートナーであり,有名デザイナーであるMichael Bierut氏の書籍。

おそらくこの本は,デザイン雑誌AXISで紹介(お薦め)されていたものだと思う。
Pentagramがとても有名なグラフィックデザイン会社であるということを,この本を読んで初めて知ったのだが,,,

書籍名には,How toと書いてあるが,実際にはHow to本ではなく,氏の作品集のような書籍である。
写真やイラストがふんだんに用いらられているため,パラパラと本をめくるだけでも楽しい。

またプロジェクトの概要説明において,どのような苦難があったのかという物語が書かれていてとても勉強になる。
一方で,まだHow toまで昇華されているとは言えず,この本を読んだから良いグラフィックデザインが出来るようになるという種類の本ではない。

この本を読んで,いくつか思ったことを列挙する。

  1. 良いデザインは,(結局)おさまりが良い
    いろいろと良さを説明しないといけないデザインはまだ最適には程遠いのだ
     
  2. 白黒あるいは線画がグラフィックデザインの基本である
    色は情報を付加するのにとても役に立つが,結局汎用性が高いデザインは白黒の線がの時点で,とても美しい
     
  3. フォントの世界は奥が深い
    ちょっとしたフォントの違いが,与える印象を大きく変える
    同じ言葉でもフォントが違うだけど,意味が変わって見える
     
  4. 良いデザインはすべてを網羅している,神は細部に(も)宿る
    局所的に良いデザインというのは,なかなか無い
    結局人は,一連の流れで何かを感じ,評価するのだから
     
  5. 人工物は人工物らしい方が美しい
    自然の曲線は美しい,その裏には物理があるからである。
    一方で,人が作った曲線を自然のそれと同じくらい美しくするのは難しい。そこには物理ではなく,幾何数学があるからである。


最後に雑感として,この本の中に描かれているグラフィックはどれも美しい。

この美しさに触れるだけでも,この本の価値は高いと思う。

 

 

 

【書籍情報】
AX アックス
伊坂 幸太郎
出版社: KADOKAWA (2020/2/21)
ISBN-13: 978-4041084427

【概要・コメント】
主人公である腕利きの殺し屋が実は恐妻家という,なかなかコメディチックな設定である。

しかし,この小説を読み進めると恐妻家な理由が,主人公の生い立ちと深く関係している点が興味深い。

どのような家庭に生まれているか,そして,どのように育てられるか,そこに生まれ育つ子供の力ではどうにもならないことが存在する。

それを運命として受け入れ,その運命の中で自分が求める何かを明らかにすることが,この小説の重要なテーマだと思える。

一般人の感覚とは,大きくことなる最強の殺し屋である主人公の感覚は,僕らが当たり前であると思っていることを,当たり前でないと感じさせてくれるし,その当たり前が実は多くの部分,親からの教育のよって与えられた後天的なものであると気付く。

親から与えられるのが当たり前な人と,親から与えられないのが当たり前の人が,1つの家庭の中で暮らすのは簡単なことではない。

しかし,その大きな違いを乗り越えようとする主人公に,人間の悲しさをわずかに感じ,それよりも遙かに多くの人間の愛おしさを感じる。

ハードボイル度小説として,またはミステリー小説として,すごく面白いというものかは,なかなか難しいところであるが,通常の小説では描かれない,部分を描き出しているという意味で,興味深い物語である。