指先の嫉妬 ◇3 | 有限実践組-skipbeat-

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 ども、一葉です。

 84000キリ番GREEN23様からのリクエスト続きです。もちろん蓮くんです。

 

 前話<指先の嫉妬1

 


■ 指先の嫉妬 ◇3 ■

 

 

 

「つまり?TBMの音楽番組から最上さんに出演依頼が来た、と。そういうことでいいですか?」

 

「うぃ」

 

「それに社さんは出演しないと予想していたのに、最上さんが出演承諾の返事をした、ということでいいですか?」

 

「相違なき」

 

「・・・・へー。そうなんですか」

 

 

 話を聞いて俺の頭に浮かんだのは不破の顔。

 音楽番組イコール不破、の図式が浮かんだのは自然な流れだったと思う。

 後から考えたら詰めが甘い、と言わざるを得ないのだが、この時点で俺はそれが正解だと思い込んでいた。

 

 

 最上さんが出演承諾したのは、もしかしたらアイツから何か事前に働きかけがあったから、とかだろうか?

 恐らくアイツがあの子の性格をうまく利用し、回避させる手を与えなかった、と考えるのが妥当なところか。

 

 

 目を細めた俺の頭にストーカーくんの顔が思い浮かぶはずもなく、加えて自分の中で答えが出ていたことでそれ以上の情報を社さんから引き出そうともせず。

 結果として俺はこのとき、社長が一枚噛んできていたことにも全く気づけないでいた。

 

 

 不破。しばらくおとなしくしていたのに。そもそもなぜ今になって?

 考えてみれば妙だった。

 

 いや、まて。もしかしたらアイツ、俺と最上さんの関係変化に気付いたのでは?

 それで、俺を出し抜こうと?

 

 

 瞬間、俺の腹で猛火が滾った。ふざけるなと憤る。

 

 冗談じゃない!!万が一にも言ったもの勝ちなんて誰がさせるか、そんなこと!

 

 

 本当ならあの子の出演を抑塞出来るのが一番良い。けれど最上さんはもう椹さんに出演すると答えてしまっているという。

 

 

 テレビ番組には時間という枠があり、それに収まるようにタイムテーブルを用意し、順次蓄積構築してゆくシステムだ。

 それはどんな番組でも変わりがなく、従って一度出演依頼を諾した以上、もう組み込まれてしまったと考えるのが妥当だろう。

 

 だとしたら一度OKしたのを取り消させるのは得策じゃない。そんなことをしたら局に対する京子の印象が悪くなる。

 

 それを踏まえた上で俺が打てる手は当然限られていた。

 

 

「ちなみに社さん、その撮り日って・・・」

 

「大丈夫だ。速攻スケジュールを調整して時間を確保してやる。その代わり、この件に関するコトの詳細はキョーコちゃんから訊いてくれ!!」

 

「ん?」

 

 

 そもそも最初からそのつもりだったのだが?

 社さんがこう言ってくるってことは、何か他に事情があるってことなのか?

 

 問い詰めてみたいとこだけど先に聞くなと釘を刺されてしまったか。

 まぁ、いい。

 あとであの子から聞き出せば済むことだ。

 

 

「ええ、わかりました。ありがとうございます」

 

 

 この時から、俺の中ではすさまじい嵐が吹き荒れていた。

 

 

 

 ところがTBM局での収録日当日。

 俺の予想に反して、現在海外で活動しているという理由から、出演者一覧に不破の名前がどこにもなく。俺はすっかり毒気を抜かれていた。

 

 

 ・・・・なんだ、心配することなかったのか?

 いや、ではなぜ社さんは最上さんに訊いてくれ、なんてことを言ったんだ?

 

 

 一抹の不可解さは拭えなかったが、不破がいないという事実が俺の緊張感をも和らげていた。

 出来ることならリハにも顔を出したかったけれどスケジュールの都合上どうしてもその場にいることが出来なくて、致し方なく一般観客席を設けてもらった俺は、敦賀蓮のオーラを抑えてだいぶ気乗りしなさそうな社さんと一緒に一般人として席に着いた。※社さんは念のためのマネージャー・ガーディアン

 

 

 京子に、というよりダークムーンの美緒に会いたいとリクエストしてきたというのは誰なんだろう・・・。

 このとき俺の脳裏にあったのは純粋な興味だけ。

 

 だからこそ息をつめてしまった。

 オーラを抑えるのをやめてしまった。

 ソレが例のストーカーくんだったことに気付いた瞬間、毒の嵐が吹き荒れた。

 

 

「それでは歌の準備をお願いします」

 

「今日披露してくださるのはビーグールの新楽曲なんですよね」

 

「なんでも、ダークムーンの美緒を見てインスピレーションを得たレイノさんが、長い時間と情熱をかけて書き上げた歌詞だということで、今日は特別に美緒役をなさっていた京子さんにも入っていただくことになりました」

 

 

 司会者の二人がスタンバイタイムをつないでいる間、比較的舞台から近い位置に座っていた俺と、舞台に移動していった最上さんの目が合った。

 

 

 ショートカット姿の美緒。

 顔に特殊メイクこそされていなかったものの、最上さんは軽井沢で着用していた美緒の黒いドレスを身に着けていた。

 

 彼女が俺に気付いて固まったのがコンマ5秒。

 社さんの存在に気付いたのはその次か。

 

 あの子への目線は外さず、俺は周囲に声が届かないよう、社さんの耳に自分の口を近づけた。

 

 

「社さん、確認なんですけど」

 

「なんだ」

 

「俺、このあと仕事なんてありませんでしたよね?」

 

「ない。そういうスケジュールにしたから」

 

「最上さんの方はどうなんですか?」

 

「キョーコちゃんも同じく(間を開けない方が世界平和のためだと考えて)そういうスケジュールになっている」

 

「ありがとうございます、上出来です」

 

 

 こちらの声が聞こえているはずもなかった。が、俺から視線を外すことが出来ないのだろう、最上さんの頬が微妙にひきつった気がした。

 しかしもともと美緒は無表情なほうなので、それに気付いたのは俺ぐらいだったと思うけど。

 

 司会者たちの会話は変わらずマイクを通してスタジオ内に響いていたが、俺の耳にはほぼ入ってきていなかった。

 

 

「ええ、ぜいたくなひと時を皆様にご堪能いただきたいと思います」

 

「そうですね。そして歌詞にも是非注目していただきたいと思います」

 

「それでは、準備が整ったようです。ビーグールのみなさん、どうぞ」

 

 

 歌が始まって少しして、俺に気付いているのかいないのか。ボーカル役のストーカーくんが美緒に熱い視線を送り始めた。

 当然のようにあの子に汚い手を伸ばし、徐々にあの子に近づきつつ美緒の首元を攫ってゆく。

 

 あの男がゆっくりゆっくりあの子を抱きしめてゆく様を、俺は満面の笑みで見つめていた。

 

 深く、昏い怒りを灯して・・・・・・。

 

 

 

 

 

 ⇒指先の嫉妬◇4


このとき、きっとキョーコちゃんもまた自分を見つめ続ける蓮くんから目を離せず、ただたひたすら背筋を震わせていたに違いない(笑)

 

 

⇒指先の嫉妬◇3・拍手

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