指先の嫉妬 ◇1 | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 お付き合いいただきありがとうございます、一葉です。

 こちらは84000キリ番GREEN23様からのリクエストで原作沿い両想い蓮キョです。

 

 お楽しみいただけたら嬉しいです。

 

 


■ 指先の嫉妬 ◇1 ■

 

 

 

 社さんというマネージャーさんが付いてくれたあとも、私はなるべく迷惑をかけないようにしなければ・・と、自分でできることは自分でするようにしていた。

 なぜなら社さんは業界一忙しいと言われている敦賀さんとの兼任であるのだ。

 

 従って今日も今日とて私は一人で行動をしていた。

 そんな私のもとに椹さんから一報が入ったのは当然と言えば当然で、そのことを椹さんにも伝えてあったからだった。

 

 

「 もしもし、最上です 」

 

『 最上さん、いま大丈夫か? 』

 

「 はい、大丈夫です。何かありましたか? 」

 

『 実は君に新たな出演依頼が来たんだが・・ 』

 

「 出演依頼ですか!? わかりました!お話を伺いに今からそちらに向かいます!! 」

 

『 あ、来られる?なら良かった。事務所で待っているから詳細はその時に 』

 

「 はい!よろしくお願いします 」

 

 

 椹さんが目の前にいるわけでもないのに携帯を左耳に押し付けたまま、往来で思い切り頭を下げる。

 通話を切った私は夢見心地で目を細めてから頬を染めた。

 

 

「 まぁ~・・・。京子さんに出演依頼ですって♡ 」

 

 

 出演依頼をもらえるなんて、なんて光栄なことだろう。

 今度はどんな役かしら。

 

 

 どんな役だったとしても、人から求められればやはり嬉しいもので、足取り軽くLMEビルに向かう道中で様々な想像を繰り広げた。

 

 

 そうだ!社さんに連絡しておかなくちゃ。

 

 運転中だと申し訳ないからいつでも確認できるメールにすべく、私は再び携帯に目を向けた。

 

 椹さんからの連絡内容をしたため、もし話が決まったらスケジュールの調整をお願いします、で締めくくったそれを送信。

 ルンルン気分でタレントセクションに向かった私を待ち受けていた話は、自分の予想を裏切るものだった。

 

 

 

 

「 ・・・・・すみません。もう一度言ってもらえます? 」

 

 

 私の口元が醜くゆがんだ。

 ついで胸の前で祈りのポーズをとっていた私の両手が、躓いた小鹿のごとくぱたりと倒れる。

 

 いただいた出演依頼はありがたくないものだった。

 

 

「 だから、TBMのゴールデンタイムに放送される音楽番組で、そこに出演するアーティストが会ってみたい芸能人に君の名を挙げたんだと。それで、君に出演依頼が来たんだけど出演OKで大丈夫か?という話なんだが 」

 

「 はい、そこまでは理解できました。で、そのアーティストというのが? 」

 

「 ビーグールのレイノらしい 」

 

「 がっでむっっっ!!!! 」

 

 

 やっぱり聞き間違いじゃなかったのね?!

 なんてこと、あの魔界人!!!

 よもや正攻法で私と顔を合わせようとするなんて、いったいどういう神経なのよ?!

 

 

「 椹さん 」

 

「 おう 」

 

「 お断りします 」

 

「 おう? 」

 

 

 じょおぉぉぉだんじゃないわよ!

 そんなの受けるわけがないじゃない。

 

 だいたい、音楽番組ならもしかしたらショータローだって出演するんじゃないの?あぁ、なるほど。魔界人の作戦はそれをアイツに見せつけてやろうってことね?

 お生憎様。そんな場面が容易に想像できるのに私が依頼を受けるはずナイじゃない。しかも魔界人からのリクエストと知った上でなんか。

 

 万が一にもそんなことをしようものならアイツに何言われるかわからないわ。うぅうん、それだけじゃない!!

 

 そんなことがもし、万が一にも敦賀さんに知られたとしたら・・・・。

 

 

 

『 ・・ふぅ。全く君は相変わらず、危機管理がなっていないどころか群れからはぐれたアリンコ以下か 』

 

 って!!!!

 あの整ったお顔で究極に冷めた目で見られることになるのよ!そんな恐ろしい場面が容易に想像出来て心の底から怖すぎるわ。

 

 そうじゃなくてもこんなの嫌!

 だってこんなことで敦賀さんからの信頼を裏切るなんてごめんだもの!!!

 

 

 

「 え?え?どういうこと、最上さん? 」

 

「 ですから、出演する気はありません 」

 

 

 淀みなく言い切った私のそれが予想外の返答だったのか、立ち上がった椹さんは目を二重に見開いた。

 

 私が真顔だったことで私の本気が伝わったに違いない。

 椹さんはまるで拗ねた子供をあやすように窺い顔で口を開いた。

 

 

「 断る?なんでだ、勿体ない。顔を売れるチャンスだと言うのに!しかもゲスト出演とはいえちゃんと出演料だって出るし、収録の間中ずっとその番組内に居る必要もない気軽なものだぞ?さらに普段では接することなどないだろう芸能人と出会えるチャンスだというのに 」

 

 

 確かに、畑違いの業界人と出会えることで別パイプの人脈が築けるなら決してマイナスではないと思うけど。

 

 

「 でも、この出演依頼要綱を拝見する限り、ビーグールが歌っている間じゅう私もそこに立っていなきゃいけないんですよね?しかも京子じゃなく美緒として 」

 

 

 フ。そんなの、鼻で笑ってあげるわ。

 そもそもなんで今さら美緒なのよ。

 

 少なくとも京子としての出演じゃないんじゃ、視聴者に「私」として認識してもらえない可能性の方が高いじゃない。

 

 尤も?たとえどんな美味しい条件が入っていたとしても魔界人からのリクエストなんて死んでも叶えてあげる気なんてないですけどね。

 

 

「 そうそれ!すごく楽でいいじゃないか。ただ美緒として佇んでいればいいだけだぞ?せっかく京子の認知度が上がってきているんだ、出演できるならたとえ短い時間でも受けた方が絶対得だと思うんだが? 」

 

「 確かにそうかもですね。でもお断りしてください 」

 

「 ・・・・・・ 」

 

 

 断固として拒む私に椹さんが深いため息を吐き出した。

 右手で後頭部をコリコリ掻いて、諦めたように瞼を伏せる。

 

 

「 わかった。断っておくよ 」

 

「 お手数おかけしてすみません。どうぞよろしくお願いします 」

 

 

 もう一度深い溜息を吐いた椹さんに、私は丁寧に頭を下げた。

 失礼しますと断りを入れ、くるりと踵を返す。と、いつの間に後ろに居たのか、暑苦しい濃赤なマントが私の行く手を遮った。

 

 そろりと顔を上げると案の定、それは社長さんのマントだった。

 

 

「 出演依頼は諾にしろ、椹くん 」

 

「 は? 」

 

「 え? 」

 

「 なんとも喜ばしい依頼じゃないか、最上くん。ラブミー部員一号の君が、ビジュアル系バンドのボーカル男性から会いたいと言われたんだろう?ならば会うべきだ。望まれたらそれに応じる。それこそが芸能人のあるべき姿!なぜなら芸能人は人に愛されてこそ成長し続けることができるのだからな! 」

 

 

 うわ、めんどくさ。

 

 

「 まぁ、社長さんならそう考えるでしょうけれども 」

 

 

 愉快なのは衣装だけにしてくださいよ。

 少なくとも私はあの魔界人に愛されたいと思っていないですし。

 

 

「 なぁんだ?その不満顔は 」

 

「 いっ、いえ、不満顔なんてしていませんよ!これっぽっちも、全然、全然!!! 」

 

「 本当か? 」

 

「 はい、もちろんです! 」

 

「 うむ。プロとして業界で大成したいなら万人に愛されたいと思う心を忘れるべからず! このことを君はわかっているんだよな?最上くん 」

 

「 はい、もちろんでございます! 」

 

「 よろしい。ならば出演する、で支障なかろうな? 」

 

「 う・・・・ 」

 

 

 にっこり笑って同意を求めてきた社長さんからの圧に、私のようなペーペーが逆らえるはずもなく・・・。

 

 

「 ・・・はい。出演してきます 」

 

「 うむ。よろしい 」

 

 

 魔界人からの要望を受け入れる流れになってしまって、私は思いっきりがっくりと肩を落とした。

 

 

 

 

 ⇒指先の嫉妬2


原作の蓮キョ二人のやり取りがちょ~恋しくなってしまった私。そんな二人を目指してお届けします。蓮くん、まだ登場していませんけど(笑)

こちらは全4話で完結する予定です。

 

 

⇒指先の嫉妬◇1・拍手

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